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71.インドラの矢


 八つの首を持つヘビはうねりながら空を飛び、時々気まぐれに火を吐いた。


 吐いた火は眼下の町を一瞬にして消し炭にした。


「ひどい」俺は呟いた。


「あれは通称『インドラの矢』と呼ばれる攻撃だ」とニドは説明した。


 キキリは全力で飛んでいるが引き離されないようにするので手一杯だった。


 消し炭になった町にも生存者はいるかもしれない。

 だが俺達はこれから先の被害を食い止める役割だと感じた。

 そしてあの蛇の中にはハルニレがいる。


「このままでは王都にたどり着かれてしまう。王都を落とされたらこの国は終わる」


 俺は言い知れぬ焦りを感じつつ言った。王都が落ちた瞬間にハルニレが戻らないような気がしたからだ。


「仕方ない。やってみるか」ニドは俺の前に移動して言った。「ユカラ、ニドの体を支えてくれ。多分ニドは失神するから」


「え?」


 驚きつつも俺は言われるままに立ち上がったニドの胴体に腕を回した。


「ソーカル、ニドの願いを聞き入れたまえ」ニドは矢をつがえるような格好をしてから言った。「アゴーニ!」


 ニドの顔の横から光の矢が現れ、凄いスピードで飛んで蛇の尻尾に命中した。


 そしてニドは失神した。

 俺は必死でニドの体を支えた。


 すると突然蛇は落下しはじめた。

 粉塵を撒き散らして蛇は大地に叩きつけられた。

 幸い人家の無い荒野に落ちたので巨大なクレーターが出来ただけで済んだ。


「キキリ、降りてくれ!」


 俺の指示に従いキキリは着地した。

 粉塵の晴れない最中ではあったが俺は鞄から長年使い続けた武器を取り出した。

 折りたたみ式の巨大な鎌だ。


「久しぶりの使うな」そう独り言を呟きつつキキリに言った。「ニドを頼む」


 キキリが首肯すると同時にカンナとヴォルクが各々の武器を携えて俺の指示を待った。


「命令する!」こんな指示の出し方は初めてだった。「絶対に死ぬな!」


「ハイ!」と二人は力強く答えた。


 落下した蛇に向かって走りながらポルターガイストが出せるか試した。今回の脱皮は今までとは違う。あるいはもうポルターガイストは使えないかもしれないとすら思った。


 左手には鎌を持ちつつ右手を伸ばす。


 すると俺の身長を数倍にしたほどの大きさの手が出現した。


「何ですか! これ!」ヴォルクが叫んだ。

 カンナも絶句している。


 他人にも見えるのか。そしてこの大きさなら!


「カンナ! ヴォルクさん! 俺に捕まって!」


 二人は立ち止まった俺にしがみついた。二人を少し小さめにしたポルターガイストで掴んだ。


 思い通りの大きさにも出来ると分かり俺はもう片方のポルターガイストを蛇に目がけて目一杯伸ばした。

 

 ポルターガイストが蛇の胴体を掴み、俺達の体ごと蛇の側まで近づけた。

 そしてそこでカンナとヴォルクを解放した。


「スヴィニヤー(西洋松露)!」ヴォルクが手を向けると網の目が蛇の全身を駆け巡る。「胴体の中心にお嬢の反応があります!」


「てことは頭を全部落とせば良いわけね!」カンナは物騒なことを言ってから叫んだ。「ヴァジュラ(雷神雷刀)最大出力!」


 巨大な雷撃が蛇の頭の一つを焼き尽くした。


「まずは一つ!」


 だがその衝撃で他の全ての首が目を覚ました。


 その様子を見てカンナは明らかに動揺した。


「大丈夫!」そう叫びつつ俺は折り畳まれた鎌を広げて戦闘モードに切り替えた。


 そしてポルターガイストで蛇の首の一本を掴み、それをゴムのように縮めて接近した。


「ターヘル・アナトミア!」至近距離に至ったと同時に鎌を縦横無尽に旋回させながら蛇の首を切り刻んだ。


 切り刻まれた蛇の頭が大地に散らばった。


「ターヘル・アナトミア」は武器の名前でもあり相手の体をバラバラにする必殺技の名前でもある。


「凄い」ヴォルクは呆然と俺の鎌捌きを見ていた。


 何故だろう。少年や少女だった頃よりも早く動ける。体も軽い。力も強い。まるで完成形にでもなったような気がした。見た目はオッサンなのに。


「スヴィニヤー(西洋松露)! 頭の致命部位を示せ!」そう叫んでからヴォルクは蛇目がけて槍を投げた。


 槍は動き続ける蛇の喉元から刺さり額へと抜けた。そしてその頭は力なく大地に落ちた。おそらくスキルによって命中させたのだろう。


 ヴォルクは力なく大地に横たわった蛇の頭から槍を抜きつつ叫んだ。「あと五本です!」


 順調に見えた。このままなら程なくしてこの巨大な蛇を倒しハルニレを救出できる。


 そう思ったと同時にそれは起きた。


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