61.メンバーが増えた
リエフはいきなり切りつけてきた。
目の前を長刀の切っ先が横切った。
速い。だがーー。
俺は近衛兵から借りたサーベルを抜いて二撃目に備えた。
二撃目は斜め下から切り上げてきた。
バックステップしても良かったが調子付かせるとスピードが乗ると予想した。
サーベルで長刀の刃を受けて軌道を逸らせた。
そして相手の股下に潜り込んで水平蹴りを足首に入れた。
だが体格差があるのでびくともしない。
それでも三撃目を遅らせることはできた。
少し遅れた長刀が真上から振り下ろされる。サーベルを頭の上に掲げて防いだ。
そして軌道をずらして俺は相手の懐に入る。
肋骨の一番下に向けて肘打ちを叩き込んだ。
「ぐっ」
リエフから声が漏れ出た。
即座に再び水平蹴りで足首を刈った。今度はやっと倒れた。
倒れた時に長刀をサーベルで弾き飛ばした。
「詰みだな」
俺はサーベルの切っ先を相手の鼻先に向けて言った。
「そこまで!」
王の掛け声で試合は終わった。
リエフは脇腹を抑えてうずくまったままだ。
俺は近衛兵にサーベルを返して言った。
「いい剣だ。手入れが行き届いている」
「ありがとう」と答えた近衛兵の手は震えていた。
「これで分かったでしょ? ユカラは強いんだから!」
ハルニレは鼻高々で言った。
「しかしな」
王は困惑しつつもハルニレに冒険者をやめさせる理由を探しているように見えた。
「陛下にご提案があります」
俺は再び跪いて言った。
「御息女がダンジョンに挑む際はお目付役を一人お貸しいただけたら陛下も安心していただけるかと」
「えええ、嫌だよ!」
ハルニレは露骨に嫌がった。
「いや、落とし所というのがあってだな」
俺は小声でハルニレを説き伏せた。
「なるほど。それなら」
王は威厳を取り戻せる機会に飛びついた。
「じゃあせめて人選は私にやらせて!」
ハルニレは近衛兵の一人を指差した。
「ヴォルク! 一緒にダンジョン攻略しましょ!」
女性の近衛兵は跪いてハルニレに言った。
「ありがたき幸せ。その際はご相伴に預かりたく存じます」
「なんかメンバーが増えた」
やや不満気にカンナは言った。カンナは大人数が苦手だ。今までの経緯を考えると無理もない。
「ヴォルクならカンナも大丈夫だよ。今はこんなだけれど‥‥」
ハルニレは気安く言った。
「お嬢! 今は公の場にございます」
ヴォルクは幾分取り乱して言った。
「あ、そうだった。という事でパパ!」
ハルニレに呼ばれた王はビクッと肩を震わせてから言った。
「ハルニレのダンジョン攻略を許可しよう。ヴォルク」
王に呼ばれてヴォルクは答えた。
「はい」
「ハルニレを頼む」
「承知しました」
「さ、帰ろうか!」
ハルニレが号令をかけるとサヴァーが涙目で言った。
「‥‥ご飯は?」
「ええ⁉︎ ユカラの料理の方が美味しいよ!」
ハルニレはそう言ってくれたのは嬉しいが正直俺も宮廷料理に興味はある。レシピの参考になるかもしれん。
「ご飯食べていく」
ハルニレが言うと王は別室に用意させると確約した。
「私、何もしていないけれど良いのかな?」
カンナは不安気に言った。
「仲間なのに何言ってんの!」
そう言ってハルニレはカンナの背中をバンバン叩いた。
「待て」
俺たちの和気あいあいとした雰囲気をぶち壊す声が響いた。リエフだ。
「まだ我は降参しておらん」
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