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54.武器屋


 フード状の帽子を被り顔の下半分はマスクで隠されている外国の女と仮面を付けた男に武器屋は訝しんだように見えた。


「軽めの剣が欲しい」と仮面を付けた勇者・カーカは言った。


「軽めなあ」武器屋は面倒くさそうに頭を掻きながら店の奥へと引っ込んだ。


 ほらよ、と武器屋がカウンターに置いた剣は明らかに安っぽい偽物の剣だった。おそらくモンスターに切りつけても傷ひとつ付かない。


「馬鹿にしているのか?」勇者・カーカは苛立って言った。


「うちで一番軽い、子供が練習用に使う剣だ。多分ゴブリンですら倒せない」武器屋は悪びれもせずに言った。「軽めって言ったからよお」


「早くしろ」ニドは苛立ちを隠さずに言った。「いっそ」


「おい! 店主! 死にたくねえだろ? さっさと注文の品を出せ! でないとヤベェんだよ」


 後半は嘆きに近い言葉で勇者・カーカは言った。ニドの苛立ちを間近で感じたからだ。


 店主も身の危険を感じとったのか急いで奥に引っ込んで一目で逸品と分かる剣を出した。


「うちの店で出せる最高級品だ。勿論値段が高いだけじゃない。千年砥がずに使えるという曰く付きだ」


 店主は怯える目でニドを見た。


「ところで」とニドは突然話し出す。「町の中が物々しいが何かあるのか?」


 店に来る途中、ギルドの冒険者や憲兵、果ては賞金稼ぎまでが城の前に集まっていた。


「謎の病が流行っているってよ。その原因がダンジョンからの呪いだって噂で」


 店主はハンカチで汗を拭いながら言った。


「ダンジョンからの呪い?」


 ニドは興味を惹かれたかのように前のめりになった。


「女子供が眠ったまま目を覚さないって事が国中で起きている。あるいは目が見えない、耳が聞こえない、言葉が出ない、足が動かないなどなどとにかく謎の症状だ。調べるとダンジョン近くの町で起きている。だから国をあげてダンジョン攻略をせよっておふれが出た」


「それでダンジョンの呪いか。それにしてはこの町で謎の病の噂は聞かないな?」


 ニドは注意深く店主に訊いた。


「この町から一番近くのダンジョンは攻略されたからな。ユカラとかいう奴のパーティーが攻略したらしい」


「ユカラだと!」


 勇者・カーカは店主の差し出した剣を愛でるのをやめて叫んだ。


「あんなオッサンにダンジョンが攻略出来るわけが無い!」


「いや、ダンジョンを攻略したのは女の子達だけのパーティーだと聞いたが」


 店主の言葉に一瞬フリーズしたあと勇者・カーカは叫んだ。


「あいつらか!」


「お知り合いで?」


 店主は明らかに喜色を浮かべて訊いた。


「この町の英雄だともっぱらの噂ですよ。他にいくつもダンジョンを攻略しているとか。いや、おおやけにはなっていないんですがね。偽名でギルドに登録しているらしいので。ただ最初に攻略した時にギルドにいた連中が吹聴しているんでさ!」


 歯軋りして妬みを我慢する勇者・カーカとは裏腹にニドは小声で何かを呟いた。


「‥‥ユカラだと?」



 逸品の刀をかなりの値引きで手に入れた。


「英雄のお知り合いなら特別価格にさせてもらいますぜ!」


 そんな店主の言葉に勇者・カーカは再びはらわたが煮えくり返った。


「結果的に安く手に入れた。良しとしろ」


 ニドは心ここに在らずという様子で勇者・カーカに言った。


「しかし」 


 町は未だ国からのおふれで喧騒が続いている。

 ダンジョンに入るには一応ギルドへの登録が必要になるので自然に人々の流れはギルドへと向かっていた。


「これでは探せないな」


「タイミングが悪かったな」


 勇者・カーカはなんとはなしに暗殺が延期されそうになったのを心の中で安心して言った。


「憲兵までギルド登録することは無いだろうな。流石にシステムが許さない。あるとしたら冒険者の護衛という形でダンジョンに一緒に入るくらいか」ニドは考えこみながら言った。「少し動きづらくなるな」


 王女・ハルニレは冒険者としてダンジョンに出向いている。そこを暗殺するつもりなら目撃者は少ないに越したことはない。勇者・カーカはニドの考えをトレースした。


「居場所は分かってもまずはハルニレの顔を確認しないとダメじゃないか? ちなみに俺は知らない」なのでこのようにニドに助言した。「だったらむしろギルドで張っていた方が」


「お前、自分の立場を忘れたのか?」ニドは呆れたように言った。「今回からギルドに憲兵もいることになる」


「あ」  

 勇者・カーカは自分が無罪放免になったわけではないと知った。


「今回の任務はあくまでも一部の者しか知らない。一般の憲兵からすればお前は罪人の一人だ」ニドは情け容赦なく言い放つ。「だが見所は悪くない。ちなみにハルニレはおそらく顔を変えている。そういう魔法が使える魔獣もいるからな。つまり」


「魔獣を従えている女はハルニレの可能性がある」

 勇者・カーカはニドの言いたい事をようやく理解して言った。


「そしてギルドに入らずともダンジョン近くで張っていればそのうち出くわす可能性は高い」ニドは人の流れに乗って歩き出した。


「魔獣‥‥あ!」勇者・カーカは突然叫んだ。「女の方のユカラのパーティーでは魔獣を従えていた。しかも二匹も」


「ほう。ならばハルニレがそのパーティーに参加している可能性は高いな」ニドは足を止めて勇者・カーカに向き合って言った。「お前にしては珍しく役に立つ情報だ」


「そのパーティーは俺が捕まった原因の女も所属している」


「だったらこの町のギルドでほぼ間違いない」 

 行くぞ、と言ってニドは再び歩き出した。


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