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51.幼馴染6


 奇妙なダンジョンだった。モンスターが一匹もいない。


「おそらく全てあのモンスターに狩られたな」巧妙に消された戦闘の跡を見て俺は言った。


「もうバグズ・ビューアー(偽装複眼)を使った方がいいかも」とオキクルミは頭を押さえて言った。「近い」


 ひとまず俺がバグズ・ビューアーを使った。

 ダンジョン内部の広い空間に出た俺たちはそこから急いで先に進んだ。「ここは奴のテリトリーだ。ひろい空間の方がスピードを活かせる」


 立ちくらみが起きる前にスキルを解除して今度はオキクルミがスキルを使った。「後ろから何かが来ている」


 ちょうど洞窟状に続く場所を抜ける所だった。

「おそらく次の空間で攻めてくる」俺はオキクルミと目線をかわした。そして仕込みを開始した。


 洞窟を抜けると古代遺跡の神殿がある場所に出た。

 同時に俺たちは交差するように駆け出した。そしてオキクルミは特殊スキルを発動した。


 ハイスピードで駆け抜ける影が俺の背後から来たのが分かる。

「来た!」


 俺の首が飛んで地面に横たわる。

 それをもう一人の俺は入口の影から見つめていた。首が飛んだのはオキクルミの特殊スキル「ドッペルゲンガー『分け御霊』」で作った俺の分身だ。不思議な事にもう一人の俺の視線や感覚も共有できた。


 死んだはずの俺を見て狼狽えるように人型モンスターは神殿の壁に張り付いた。すかさずそこにオキクルミが放った槍が飛んできた。

 

 どんなに速くても方向を変える時には隙ができる。そこを狙うオキクルミの作戦だ。


 人型モンスターは間一髪で槍を避けたがオキクルミは槍に付与魔法をかけていた。

「スプリット・マジック(打ち上げ花火)!」


 オキクルミの声と共に槍から爆撃魔法が飛び散った。

 その一つの直撃を受けた人型モンスターは床に転がった。


 すかさず駆け寄って俺は人型モンスターの足を切り落とした。


 そして念のため離れた。


 すると人型モンスターの中から何かが飛び出した。犬くらいの大きさだった。


 オキクルミはその犬くらい大きさになったモンスターが壁で方向を変える場所に再び槍を投げた。

 今度は槍がモンスターに直撃した。

「スプリット・マジック(打ち上げ花火)!」


 オキクルミの駄目押しの爆撃魔法でモンスターは完全に爆散した。


「やった!」俺達は駆け寄って抱き合った。


「狙いが当たったな!」俺はオキクルミの作戦を賞賛した。


「こっちに来る場合もあったからね」もう一人のオキクルミが近づいてきて言った。


「二人いると混乱するな」と俺は正直に言った。


「それもそうね」と言ってオキクルミはもう一人のオキクルミと額を合わせた。「戻って」


 するともう一人のオキクルミは消えた。


「ドッペルゲンガーのおかげで死の感覚を初めて味わった」と俺はオキクルミのスキルを称賛するつもりで言った。


「いつか私ともう一人の私でユカラとデートしたいな」とオキクルミは妙な提案をした。


「いやだから混乱するって」


 オキクルミは笑ってから少し真面目な表情を浮かべて言った。

「でも分身した私は別のスキルを持っている。やり様によっては作戦が無限に増えるよ!」


 ちなみにオキクルミが狙われた場合は俺が弓矢で射る計画だ。


「ん。‥‥おー、増えた増えた」とオキクルミはステイタス画面を見てご満悦である。


「俺も増えた」ステイタス画面を見て言ってみたものの違和感がある。「素材が少ないな」


「そう? こんなもんじゃない?    希少な素材もあるし多分そういうモンスターなんだよ!」


「一応偵察だけということになっているから帰ろうか」俺はギルドで待つサヴァーの呆れ顔を想像して言った。


「他の女を想像した顔だ」とオキクルミは目を見開いて言った。


 超能力者か! と思ったものの俺はそんな事はおくびにも出さずに言った。「いや、腹が減ったなあって思っただけだよ」


「それもそうだね!」オキクルミは即座に機嫌を直した。「お腹すいた!」


 オキクルミの表情に安心して俺は古代遺跡のある空間に背を向けた。


 一歩足を踏み出して何かを感じた。後ろを振り返ると壁が出来ていた。「オキクルミ?」


 古代遺跡のある空間もそしてオキクルミも消えた。


「オキクルミ‼︎」俺は叫んだ。

 一頻り探し回り暴れて叫び終えた頃、ダンジョンの奥から声が聞こえた。


「ああ、これはやられたね」と声は言った。

 奇妙な面を被った人物が闇の中から現れた。

「君、強いねえ」


「何だ、『やられた』って何の事だ? オキクルミが消えた事か?」俺は興奮して早口で捲し立てた。


「移動ダンジョンだよ。君の友達は移動ダンジョンに囚われた」


 奇妙な面を被った人物は肩を落として付け加えた。


「こういう勝手な事をされると困るんだよね」


 なんだ? コイツは何を言っているんだ?


「アートは交換をつかさどる。君、名前は?」


「俺は、ユカラ」


 訳もわからず俺は答えてしまった。アートとはこの奇妙な面を着けた人物の名前であり一人称であるとあたりを付けた。


「ユカラはオキクルミを取り戻したいか?」


「もちろん」


「その為に長い不遇な時を経ても取り戻したいか?」


「それでオキクルミが戻るなら」


 俺はオキクルミと過ごしたかけがえの無い日々を思い起こした。その為なら何を犠牲にしても良い。


「じゃあユカラの、そうだな‥‥四十年分の幸運とオキクルミを交換しよう」


「四十年?」


「構わないか?」


「それでオキクルミが戻るなら!」


「手を見て」アートは言った。「オキクルミは死んでいないだろう」


 俺はオキクルミに付けられた「生存の印」がまだ残っているのを確認した。体中の血液が沸騰したような気がした。

 オキクルミは生きている!


「何故これを知っている?」


「そこは問題じゃない。アイツからオキクルミを掠め取ったアートを誉めて欲しいね」


 そう言ってからアートは考え込んでから言った。


「アートはオキクルミを掠め取ったがその場所には行けない。行くのはユカラだ」


「具体的にはどうすればオキクルミのいる場所へ行けるんだ?」


「ダンジョンを攻略するんだ。そうすればいずれ」


 アートは闇の中に消えた。

 と思ったら声だけが最後に聴こえた。


「いずれユカラはアートの化身に出会うだろう」


 その時はよろしく、と言ってアートは沈黙した。



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