5 ハルニレは俺の×××にキスをした
カンナがしなやかな花ならハルニレは肉感的な爆弾であった。バッチリと裸を見てしまった俺は無意識に二人を見比べて、それぞれの良さを再認識した。
「俺は何を考えているんだ?」
ハルニレより先に魔獣のミミが俺に気づいた。ミミはクルクルに近づき嘴の匂いを嗅いだ。クルクルは一回転して鳴いた。「クルクル」
「ミミ? どうかした?」ハルニレは顔にかかる水流から外れて身震いして水を弾き飛ばして言った。
「すまん。ばっちり見てしまった!」俺はまたしても馬鹿正直に答えた。
「生きていたんだ!」とハルニレは一瞬驚いて、次の瞬間には涙を滲ませながら笑顔を浮かべた。そして地下水の流れから駆け出し裸で俺を抱きしめた。
「良かった‥‥もう会えないかと思った」
ちなみにハルニレは俺より頭ひとつ分背が高い。なので必然的に俺はたわわな胸で窒息しそうになっていた。
ああ、嬉しい。だがこのままでは死ぬ。
異変に気づいたのはハルニレの方だった。
「何か足に当たるんだけど」
ハルニレは俺を解放した。
「すまん! その‥‥、体は思春期だから!」
俺の言い訳にもならない、ただの事実列挙にハルニレは笑顔で言った。
「子供なんだから別にいいよ」
いや俺、中身はオッサンなんだが。そしてこれで脱皮したとは告白出来なくなってしまった。
カンナにも命を狙われている。どうしてこうなった?
「一緒に水浴びする?」
ハルニレに誘われるまま俺は地下水の流れる場所に移動した。
ハルニレは俺の上衣を脱がし、体を手で擦って洗ってくれた。
「よくお姉ちゃんにこうして洗ってもらったなあ」
もちろん俺の思春期はとんでもない事になっていた。
「さっきはあんなに怒っていたのに」と俺は思わず先ほどの無自覚露出プレイを思い出して呟いた。勿論悪いのは俺だ。だからこれはただの照れ隠しになる。
「女の子はね、悪意に敏感なの。あの時ユカラに悪意はなかったけれどね」
「ごめん。まぎらわしい事をして」と俺は素直に謝った。
「はい、良い子」と言ってハルニレは俺の頭を撫でた。
なんだろう。俺はダンジョンの奥地で今まで感じた事のない幸せを満喫している。オッサンだった頃でも味わった事のない感覚だ。
「なんで泣いているの?」ハルニレは優しく言った。
「俺、今までこんなに優しくされた事なかったから」
「それはユカラが私の命を救ってくれたからだよ」
「今まで何度も人の命は救ってきた。けれど誰もありがとうの一つも言ってくれなかった」
俺はパーティーで人知れず皆の命を守ってきた。戦闘で負けそうなメンバーを支援するのは茶飯事で、まだ息のあるラスボスが油断したカーカ達を襲い掛かろうとした所を倒した事もある。
「ありがとう。何度でも言うよ。私がこうして今も生きているのはユカラのおかげ」そう言ってハルニレは再び俺を胸で窒息させにかかった。「あの能力、凄いね。なんて能力名なの?」
ハルニレの胸の圧力を脱してから俺は考えこむ。能力名か。
「ポルターガイスト(幻想手長)かな」
我ながら安直な命名だった。
「元は別の能力だったんだが」
「別?」ハルニレは不思議そうに言った。
「うん」そう言って俺は壁の岩肌にある尖ったところで腕を傷つけた。血が噴き出た。
「何を!」ハルニレは慌てて俺の腕を取る。
「本来なら命に関わる怪我を何度もして回復スキルを鍛えた」
「傷がない」ハルニレは傷のあった場所をさすって言った。「そういえば能力は全回復って言っていたね」
「ずっとダンジョンに潜っている為に鍛えたスキルだ」良かった。前の能力も消えていない。
「何のために?」
「ダンジョンの奥に消えた幼馴染を探すためだよ。死なない限りは幼馴染を探すことができる」
「‥‥もしその人が、‥‥その、亡くなっていたら?」
「生きている」
そう言って俺は左の手にひらに描かれた入れ墨を見せた。
「これは幼馴染が付けてくれた『生存の印』だ。お互いの手のひらに傷を付けて手のひらを合わせる。血を混ぜ合わせると模様が浮かぶ。これで相手の生存が分かる。死んだら消えるんだ」
「え!」ハルニレは何故か驚いている。「そうなんだ‥‥私も姉を探しているの」
そう言えば体を洗ってもらっている時にハルニレは姉の事を口走っていた。
「だから私もダンジョンに潜っているの。‥‥その入れ墨、私も知っていたらなあ」ハルニレは遠い目をして言った。「ところでその幼馴染はどんな見た目をしているの?」
子供の頃の話だからなあ、と思いつつ俺は探しているわりに徐々に顔を忘れかけてることに気づいた。
「そういえばハルニレに似ているな」
ハルニレが子供になったらおそらく瓜二つだ。
「女の子なの‥‥?」急にハルニレの雰囲気が変わった。声も低くなったような。
「言ってなかった?」
「聞いてない!」激昂したようにハルニレは言った。
今初めて話すから聞いていないのは当たり前なのだが俺は一応謝った。
「ごめん」
それに俺が子供の頃の幼馴染だから今頃はすっかりオバサンになっているはず。
ハルニレは、恐らく気遣いから見てみぬふりをしてくれていたであろう俺の思春期を強く握った。
「痛たたたたたたたたたた!」
「あ、ごめん。回復するか気になって」
回復以前の問題だろうに。ハルニレの真顔が怖い。
「お姉さんを探す為に男装していたのか?」
俺は俺の思春期を押さえながら訊いた。話を逸らせるためでもある。
「パーティーに女性が参加するのは危険が伴うからね。でもモンスターの攻撃がかすってミミが気絶してしまったの。そうしたら」
「幻覚が解けて女性とバレた、と」
「だから逃げて来ちゃった」
「案外、女性でも紳士的対応をしてくれる連中もいるかもしれないぞ」
「ちょっと他にも理由があってね」ハルニレは俺の思春期を両手で包んで言った。「さっきはごめんね。痛かった?」
もちろん痛かったが俺は言った。
「平気だよ」
「良かった」そう言ってハルニレはしゃがみ込み俺の思春期にキスをした。
いや、それは流石に!
と動揺していると空間の奥から足音がした。
俺とハルニレは服を着て空間の奥を凝視した。
「いた」と誰かの声がした。そして電撃が周囲を駆け巡った。
「許さない」
カンナがいた。
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