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39.奴隷使い


「で、誰が出るの? その決闘」とダンジョンを抜けてから街道を歩きつつハルニレは訊いた。


「もちろん俺が出る」と俺は言った。


「私も出たいな」のハルニレはまるで巡業の舞台にでも立つかのように言った。 


「いや、流石に危険だ」と俺は言った。「モンスターと違って人間は何をするか分からない。決闘では結構な確率で八百長が行われるしな」


「八百長?」カンナは不思議そうに訊いた。「八百長でなぜ危険な目に遭うの?」


「正確には『強制方八百長』と呼ばれる方法だ。要するに相手を負けさせる為に汚い手を使うんだ。場外付近に対戦相手が来た時に客のふりをした奴が吹き矢で毒針を打ち込んだりする」


「なにそれ、ずるい!」カンナは激昂した。


「特にバーテックスルールの時は武器も使用可能だから誤魔化しが効く。八百長が横行している。だから決闘を組織戦と呼ぶ連中すらいる」


「全然決闘じゃないんだね」と何故かガッカリしたようにハルニレは言った。


「だからその手の小細工が通用しないように二人には協力してもらいたい。普通にやれば徒手空拳でも勝てるけれど」俺は冷静に言った。


「徒手空拳って武器も無しにカマールに勝てるの? あの大男に?」カンナは目を丸くして言った。


「若い頃‥‥昔、水み国に行ってそこの無刀体術という徒手空拳の技は習った。打撃、投げ技、関節技と一通りは出来る。体重差があっても問題ない」俺はその頃を思い出して少し懐かしい気持ちになった。師匠に会いたいな。


「この国ーー、ゲヘナでは魔法が盛んだから体術を身につける習慣がないものね」とハルニレは感心したように言った。「ねえ、ユカラ」


「ん?」


「その無刀体術って教えてくれる?」ハルニレは目をキラキラさせて俺の顔を覗き込んで言った。


「一応師範代まで行ったから教えられるれけど‥‥」俺は嫌な予感がしてカンナを見た。


「無刀体術って確か結構体を密着させる技が多いよね。昔、一度だけ試合を見たことがある」カンナは静かに言った。


「えー、‥‥まあ。そうかな」俺はしどろもどろで答える。


「私にも教えて」カンナは覚悟を決めたように言った。「少しぐらいなら触られるのも我慢する」


「いや、待て! まるで俺が変態化のようになっているが違うぞ!」


「幸い今ならユカラは女子の体だから少しは我慢できる」カンナはグッと握り拳を作って宙を殴る。「強くなりたい‥‥、から!」


「私はユカラなら触られても平気だよ!」とハルニレは俺に抱きついて言った。

「私も!」という様子でキキリも俺に抱きついてきた。


「いや、だから触る前提で話さないでくれ!」体のあちらこちらに柔らかい何かが当たって俺はどうにかなりそうだった。


 その時だった。

 談笑する俺達の前に半裸の女の子が草むらから飛び出してきた。

「あ‥‥。た、助けてください」


「となると」俺は女の子が出てきた草むらにポルターガイストを配置した。


「待て! このアマ!」分かりやすい侮蔑の言葉を吐き出して現れた男の手には山刀が握られていた。


 俺は男から山刀を奪い、その体を拘束した。「何だこらっ、動かねえ!」


 背後では既にハルニレが来ていた服を女の子の肩にかけ、カンナが事情を訊いていた。


「そいつ奴隷使い。殺していいよ」とカンナは不穏な事を無感情に言った。


「いや、それよりも」と俺は拘束した男を締め上げる。


「ぐああああああああああ!」と男は叫んだ。


「奴隷使いなんだろ? キャラバンの位置を教えてもらおうか」俺は男の前に立って言った。

 奴隷使いはたいがい荷馬車を引き連れ移動しながら商売をしている。


「それを言ったら俺は殺される」と男は頑なに口を閉じた。


「まあ一対一で追いかけているから近くにはいるだろう」俺はキキリに目配せする。


 キキリは敬礼して宙返りした。妖狐になったキキリの背中に乗って上空に飛ぶと丘の向こうにキャラバンを発見した。


 俺はポルターガイストで捉えていた男を遠くに放り投げた。運が良ければ生きているだろう。


「少し先にキャラバンがいた。殲滅してくる」と俺はハルニレとカンナに言った。「その子を頼む!」


「殲滅⁉︎」とカンナは目を丸くして叫んだ。「一人じゃ危険だ!」


 ここで置いて行くと後が怖そうだ。ただでさえカンナには奴隷使いに対して恨みがある。

 俺はポルターガイストで皆を拾い上げた。半裸の女の子も一緒に。


「私も行って良いの? 足手まといじゃない?」とハルニレがいつになく控えめに言った。


「以前、このパターンで置いていった仲間が襲われた事がある。行くなら戦力分散か、総力戦の二択だ」


 俺とキキリ、ハルニレとカンナなら戦力分散になるがハルニレ一人では危機に対処できない。


「しゃあ、私とこの子はキキリの上から見ているね」ハルニレは作り笑顔で言った。


「‥‥いや、ハルニレには最前線に立ってもらう」の俺は言った。


「えええ! それはそれで荷が重いよ!」ハルニレは叫んだ。


「大丈夫」俺は皆に言った。「作戦はこうだ」


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