34.ニド
「シャバの空気は美味いな」と城下町の目抜き通りで勇者・カーカは言った。
釈放されたものの極秘クエストをこなさない限りは禁錮十年が待っている。
「ゲヘナ国王女か」と呟いてみたもののゲヘナ国には王女が三人いる。その中の誰を暗殺すべきなのか、国家魔法使いの老人は何故か言わなかった。
「まさか三人共殺せとは言わないだろうな」通りを歩きつつ勇者・カーカは呟いた。「確か第二王女は数年前に行方不明になった筈だ。国政に疎い俺でも聞いたことがあるぜ」
「勇者・カーカだな」とそこで背後から声が掛かる。
勇者・カーカが振り返るとそこには明らかに盗賊上がりの外国の女が立っていた。
「お前を補佐しろと言いつかっている」
女は名をニドと言った。フード状の帽子を被り顔の下半分はマスクで隠されている。
「補佐ってことは奴隷ってことで良いんだな」勇者・カーカは嫌らしく笑みを浮かべて言った。
「補佐は補佐だ。奴隷じゃない。ちなみに裏切ったら殺せとも命じられている」ニドは無表情で言った。
「なんだと?」勇者・カーカは剣の柄に触れた。
だがその柄にいつの間にかニドの足が蓋をするように乗せられていた。「抜いてみろ」
勇者・カーカは半歩後ろに下がってニドの足を外し体を一回転させながら剣を抜いた。「バカが! 格好付けやがって!」
だが再びニドは抜き身の刀の柄に足底を合わせる。「遅い」
そして剣ごと勇者・カーカを蹴り飛ばした。
「なんだそれは! 見たこともない技を使いやがって」勇者・カーカは無様に転がって地面に這いつくばって叫んだ。
「水み国では普通の技だ。無刀体術という。もっともニドは水み国の出ではないがな」ニドはため息をついて言った。「期待はずれもいい所だ。足を引っ張るなよ」
歯軋りしながら勇者・カーカは立ち上がる。「おま、お前は俺の補佐だろうが! 生意気な口をきくな!」
「まあいい。それよりどうする気だ」とニドは呆れつつも聞く態度を示した。
王女暗殺の計画の事か、と勇者・カーカは当たりをつけた。確かに通りで大声を出して話す内容じゃない。ただでさえ喧嘩騒ぎでいつのまにか取り巻きができている。
「とりあえず移動するぞ」勇者・カーカは取り巻きに悪態をつきながら人混みを脱した。
ニドもそれに続いた。
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