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31.重力ウサギ


 件のダンジョンに来た。

 サヴァーという受付とのやり取りに心を乱された俺は心ここに在らずだった。


「なんか変」とカンナはいち早く気づいて言った。


「何がだ?」俺は訊いた。


「受付とユカラのやり取りがなんか‥‥エッチだった」とカンナはとんでもない事を言った。


「なんだそりゃ。からかわれただけだ。今はこんな身なりだからな」

 俺はカンナとハルニレの見立てによる服に若干不満があった。

「なんでこんなに肌の露出が多いんだ?」


「可愛いから」とハルニレとカンナはユニゾンで、かつ真顔で言った。


 だから中身はオッサンなんだが。


 キキリは袖を引っ張った。

 視線を向けると親指を立ててドヤ顔をしてきた。マジか。

 そういやキキリも服選びに参加していたな。


 サヴァーか。そういえば見覚えがあるな。

 幼馴染と一緒に初めてダンジョンを攻略する時に世話になった。

「なんで忘れていたんだろうな」


「何が?」とハルニレはキョトンとした顔つきで訊いた。


「あの受付ーー、サヴァーはずっとあのギルドにいるなって話さ」


「受付なんて何人もいるからねえ。それに何年かすると入れ替わるから誰も気にしない」ハルニレは少し寂しそうにいった。


「別の地区のギルドに行く場合もあるしな。俺も冬の間はプルガトリオ付近の町へ行ってそこのギルドに世話になった時もあった」プルガトリオはゲヘナ南部に隣接する独裁国家だ。


「プルガトリオ付近なんて誰も行きたがらない。何でまた」とカンナは驚きつつ言った。


「移動ダンジョンの噂を聞いたからな。空振りに終わったが」


 そうこうする内にモンスターが現れ、撃退し、マーカーが描かれた地点まで来た。


「ここの敵はわけの分からない攻撃をしてきた」カンナは言った。「しかも本丸の姿が見えない」


「具体的にどんな攻撃なの?」ハルニレは剣を構えて訊いた。


「それは」とカンナが言いかけた時にそれは起きた。


 犬のような四つ足のモンスターが現れ吠え始めた。


「え? 何これ。攻撃していいの?とハルニレは俺に訊いた。


「ああ、問題ない」


「分かった!」

 そう言ってハルニレはその犬型モンスターに剣を振り下ろした。

 犬型モンスターは一瞬で消え去った。

「やった!」


 しかし別の場所からまた同じ犬型モンスターが現れる。

「え? 何?」


 動揺するハルニレをよそにカンナは動かず様子をみた。

「吠えるだけで攻撃してこない。ただ行く手を阻むように現れる。強引に行こうとするとあのワンコを巨大にした奴が現れる」


「どうするの?」とハルニレは不安げに俺をみた。


「実はプルガトリオ付近の狩場でも遭遇した。こいつらは牧羊犬なんだ」俺は皆に言った。


「牧羊犬? あの羊を追い立てて餌場に導いたり家に帰したりする、あの牧羊犬?」カンナは言った。


 俺は頷いて言った。

「だからあえて追い立てられる方へ行ってみるのが正解だ」

 俺は犬型モンスターが導く先へ足を進める。

 皆も俺のあとに従ってくれた。


 方向を間違えると再び牧羊犬が現れる。

 ダンジョンを進んでいくと、やがて明らかに怪しい扉が現れた。


「罠じゃないかな」カンナは不安げに言う。


「入れば分かるよ」俺は扉を開けて中に入った。


 そこはまるで水の中にいるような空間だった。さまざまな物が浮き、ゆっくりと流れている。

 樹木に机、岩や猫が浮かんで流れている。


「これは」とハルニレは思わず声に出した。


「来てやったぞ。姿を現せ!」俺は叫んだ。「寂しがり屋のモンスター『重量ウサギ』!」


 暗がりの中から二足歩行する野ウサギが現れた。

 その野ウサギが足を上げて下ろすと途端に俺たちの体は浮いた。


「うわっ、なになに!」ハルニレは慌てふためく。


「くっ」カンナは試しにとばかりに小さく放電させる。「ダメだ。上手く放電できない!」


 慌てて重力ウサギに攻撃しない辺りにカンナの力量がうかがえる。


「さて」俺はポールターガイストを出して皆を掴み、もう片方のポルターガイストで地面の溝を掴んだ。

 その瞬間、風というより場の流れのような圧を感じた。


 俺にしがみつくキキリが俺の肩を叩いた。

「ああ、大丈夫。あのウサギはここに誘い込んで逃がさないように重力制御しているだけだ」


「じゃあ無害なの?」ハルニレは剣を納めてスカートから下着が見えない様に股間を抑えている。


「取り込ままれた人はずっと浮かんでいるからいずれ餓死する。ほら、死体も流れてきた」俺はゆっくりと流れる冒険者の死体を指差して言った。


「いやああああ!」ハルニレは目を背けた。顔の前に手を置くから下着は丸見えだった。


「みんな、俺につかまって」ポルターガイストは今のところは二本しか出せない。地面につかまって進むにはこうするしかない。

 胴体や手足にしがみつく皆の柔らかい感触に集中力が途切れそうになるが俺は一歩一歩空間の中を進んだ。


「あいつは攻撃してこないの?」カンナは訊いた。


「重量ウサギは寂しがり屋だ。ここにいて欲しいだけだよ。しかし」


 重力ウサギの横を通り過ぎようとした時にそれは起きた。

 重力ウサギはもう一度足をタップした。


「え、なんか」ハルニレはフワッフワの胸を俺に押しつけて強くしがみつく。


 流されている樹木や死体がより早く流れ出した。


「逃げようとしていると分かると流れを速くして妨害する」


 その瞬間、一気に流れが加速しカンナの腕が外れて流された。

「カンナ!」


「ユカラ!」カンナは叫んだ。



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