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29.男女同衾


 ハルニレはクシャミをした。

「誰か噂をしているね。人気者は参るよ!」


「そろそろ寝るか」と俺は提案する。


 意見の擦り合わせは終わったのでパーティーの方向性は大体決まった。ほぼ俺とハルニレの事情がメインだがカンナは付き合ってくれると言った。キキリも了承してくれた。


「それで‥‥ベッドが一つしかないんだけれど」とカンナは今更ながら言った。


「皆で一緒に寝れば良いよ! あったかいよ」とハルニレは我先にベッドに潜り込んだ。


 確かに巨大なベッドなので四人が並んで寝るには申し分ない。


 カンナの視線が痛い。

「俺は下で寝る。寝袋もあるしな」


「ダメだよ。風邪ひくよ」とハルニレはベッドから出て俺をお姫様抱っこしてベッドに放り投げた。


「うわっ」


「それ」とキキリもその隣に投げた。怪力か。


 カンナは構えてハルニレの暴挙に抗う。

「いや、男女同衾とかありえないでしょ」


「ユカラの体は女の子だよ」ハルニレはカンナと手と手を合わせて力比べの体制になった。


「次の脱皮でオッサンになるかもしれないじゃん!」とカンナは叫んだ。


 カンナの勘の良さに驚いた。でも残念。元オッサンなんだな!


「ユカラならオッサンでも良いよ!」とハルニレは言った。


「私は父とユカラ様以外のオッサンは信用しない」カンナは言った。


 嬉しいような切ないような複雑な気分になった。なので俺は提案する。

「俺、ハルニレ、キキリ、カンナの並びで寝るのはどうだ?」


 そう言うが早いかキキリは俺の腕を揺らして抗議した。


「俺の隣が良いのか?」


 キキリは俺の腕にしがみついた。

「だ、そうだ」


「じゃあキキリ、ユカラ、私、カンナの並びね」とハルニレはまとめる。


「いや、‥‥そうじゃなくて」とカンナが言いかけた時にハルニレはカンナを持ち上げてベッドに投げた。「ひゃあ」


 結局ハルニレの提案通りになった。

 キキリとハルニレにしがみつかれて暑いんだけれど。

 そしてハルニレの体の向こうから何やら邪悪な怨念のようなものを感じる。

「クルクル」とクルクルは俺の顔面に止まって息の根を止めにかかる。


「って死ぬわ!」



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