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27.移動ダンジョン


「不当な額の請求とそれを盾にした肉体労働という事で勇者カーカは禁錮刑になる予定よ。今頃は捜索隊が探し回っていると思う」カンナの借金についての俺の質問にハルニレは答えた。


「そして、はいこれ」ハルニレは言った。


「え‥‥」とカンナの声がした。


「借用書。これでもうカンナは自由の身よ」


 すすり泣きの声が聞こえた。


「カンナ、目隠しを外していいか?」


「何よ、悪趣味ね」とカンナは鼻声で言った。


 目隠しを外して俺は涙をダラダラ流すカンナの肩に手を置いて言った。

「良かったな」


 カンナは俺の胸に飛び込んできた。そしてたくさん泣いた。そんなカンナを見るのは初めてだった。

「ずっと辛かったんだな」


「ありがとう、ハルニレ。ユカラ。キキリも」


 そんなカンナの声を聞いてハルニレに目を向けると片乳がはみ出ていた。「ハルニレさん⁉︎」


「あ、忘れてた」

 やあうっかり、という按配でハルニレは片乳をしまった。


「人が感動しているのに何をしているのよ!」とその光景を見たカンナは激怒して俺のほっぺたを引っ張った。


「いや、理不尽だ!」俺は叫んだ。


 その光景を見てハルニレとキキリは笑った。



「一応それぞれの目標をすり合わせしたい」俺は皆に言った。

 ちなみにハルニレの提言により俺の目隠しは外されたままになった。


「私は姉を探しているの。その為にダンジョンに潜っている」ハルニレは真面目な顔で言った。

 先程まで片乳を出していたとは思えないくらいに。


「俺は幼馴染を探している。その為にダンジョン内を探している」 


「二人とも探す相手がダンジョンにいるって何で分かるの?」カンナは当然の質問をした。


「いわゆる『移動ダンジョン』、『逃げ部屋』なんて言われ方もするな。ダンジョンの中を無作為に移動する区間がある。そこに俺の幼馴染は囚われた」


 俺が説明するとハルニレもまた頷いて「私の姉も多分そこにいる」と言った。


 ハルニレの話を聞いた時から多分同じ境遇だろうと当たりはつけていた。


 キキリは俺の袖を引っ張り、首を傾げた。移動ダンジョンについて知りたいらしい。


「それほど難しい話ではないよ。たまたまダンジョン内で入った部屋から出られなくなる、そういう話だ」俺はキキリに言った。


「なんでユカラとハルニレは無事だったの? ってキキリは聞きたいんじゃない?」とカンナは翻訳してくれた。


 キキリはウンウンと頷いた。


「言葉が足らなかったな、すまん。例えば二人組でダンジョンにある部屋から部屋へ移動するとする。後ろを振り返ると相方は消えて壁になっているんだ。狐につままれたような気分さ」


 キキリは少し考えてから俺の袖を摘んだ。


「そういやキキリは妖狐だったな」


 ひとしきり皆が微笑んだところで俺は続けた。

「場合によってはその場で声をかけると答えてくれる時もある」


「私の時はそうだった。お姉ちゃんが『逃げ部屋に入った。私の事は諦めて』ってすぐに叫んで知らせてくれた」ハルニレは鎮痛な面持ちで話した。


「そうなのか」俺はその話の違和感に気づいて続けて訊いた。「なぜハルニレの姉さんは逃げ部屋に入ったと分かったんだろうな?」

 

「あれ? そういえば」とハルニレは小首を傾げた。


「俺が調べた伝承では逃げ部屋からの生還者の記録があった。そこには『突然目の前が真っ暗になって気がついたら全く知らない空間にいた』と記されていた」


「それって」とカンナは眉を寄せていった。「モンスターに食われたんじゃ‥‥」 


「俺もそう思う。食うというか攫われたとか。ただそのモンスターの手中から別の空間へ飛ばされるのが謎だ。そして俺の幼馴染の場合、物理的に壁が出来ていた。その説明がつかない」 


「これ仮説なんだけど」とハルニレはおずおずとした様子で言い出した。「ダンジョン自体がモンスターだという説があるの」

 

『え?』と皆の空気が固まった。


「初耳だが、そうかなるほど。それなら俺のケースも説明がつく」俺の頭の中を光速で情報と情報が結びついていく。「すごいな、その説は。どこで聞いたんだ?」


「国家魔法使いだけに伝わる仮説だから皆には話しちゃダメね?」とハルニレは唇の前で人差し指を立てた。


「国家魔法使い? え? ハルニレは国家魔法使いと知り合いなの?」とカンナは心底驚いて訊いた。


「えーとっ、知り合いというかなんと言うか」しどろもどろでハルニレは反応する。


「まあそこは良いよ。それよりその説で考えると今後の方針が変わってくる」俺はハルニレに助け舟を出した。


「なんで?」とカンナは素早く反応する。


「冒険者たちは毎度モンスターの体内に入っているからだよ」


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