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16.失われた思春期

 痺れて動かない体でも音は聞こえた。


「もう一匹いる!」とハルニレの叫び声がした。


 凡ミスだ。いつもならカーカ達の舐めプを見越して全周囲を警戒していた。そして人知れず駆除していたのに。


 カンナの電撃はことことく逸される。物理攻撃が必要だ。


 俺はポルターガイストを動かそうとするも操作する腕自体が痺れて動かない。


「カンナ、私が!」とハルニレの声がする。


 ダメだ! カンナのヴァジュラ(雷神雷刀)の予備動作に合わせて針を撃ってくるくらいの反応速度だ。ハルニレでは対応できない。


 嫌だ。


 またあの時のように誰かを失うのは見たくない。


 俺の非力のせいで大切な誰かを!


「あ‥‥」あの感覚が再び起きた。ハルニレが虎型モンスターに襲われていた時の熱が全身に巡る。


 俺は指先を動かした。動く。なんとなくの理屈だが、古い皮膚に毒を集めて中身は解毒された状態のような気がした。


 俺は一気に二度目の脱皮をおこなった。

 地面には脱ぎ捨てた上衣と少年の俺の体ーー、その皮膚がある。


 俺はポルターガイストを操作して二匹目の蠍型モンスターを捕まえて尻尾を引っこ抜いた。

 蠍型モンスターはそれだけで絶命した。


「やれやれ。油断した」と俺は地面にへたり込んで言った。


「え、なにそれ」とカンナは震える手で俺を指差した。「なんで女の子になっているの?」


「えー! 可愛い!」そう言ってハルニレは俺を抱きしめた。


 ハルニレの肉圧に耐えながらも俺は自分の体をまさぐる。

 俺の上半身には小さいながらも胸に柔らかな脂肪の塊がある。

 心なしか髪も伸びている。

 そして股間に触れると俺の思春期が綺麗さっぱり無くなっていた。


「なんじゃこりゃあ!」俺は叫んだ。


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