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マリアンヌ嬢


マリアンヌ・ブロワ子爵令嬢。

豊かな黒髪と銀の瞳に艶ぼくろが特徴的な美少女で、避暑の為にロベール伯爵領に持つ別荘へとやってきた。

ブロワ子爵はロベール伯爵領の一部を収めており、寄子のような関係にある。多分。


土属性魔法は使えないが、魔力自体はあるらしい。

趣味は読書と植物の世話。

その美貌から隠されて育てられていた為、若干世間知らず。

シャルルとはお忍びで遊びにいった街中で出会い、友人になる。

と、ここまで並べられた情報で察していただけただろうか。


マックス様である。

マリアンヌ様はその女装姿である。大層かわいい。

マックス様のサプライズは入念に計画され、部屋に行ったらマリアンヌ様がいらっしゃってびっくり!といった簡易なものではなく街中での出会いまで計画していらっしゃった。


シャルロットとして計画を説明された時はその熱意に驚いたものだ。こうなったらシャルルとして徹底的に知らないふりをするしかないと覚悟を決め、ネタバラシを待つこと1週間。

そろそろ火祭りも近づき、マックス様が王宮に帰る日も近づいてきたというのに全くその気配がない。


「…シャルル様?」

「ああ、ごめん。ちょっと考え事しちゃってた」

「ふふ…そうだったのですね。…ところで、そのお手元のものは…?」

「花冠。マリアンヌ嬢に似合うかなって思って。」


興味深げに覗き込むマリアンヌ様に手元の花冠を見せる。

白妙草とよばれるこの花は夏に白詰草のような丸い花を咲かせ、魔素が多いところに群生するらしい。真っ青な空と輝く湖、そしてマリアンヌ様の黒髪にこの白はよく映えるだろう。


「…え、私に…?」

「うん、誘ってもらったお礼…にはちょっとお粗末かも。」

「とんでもないです…っ!…嬉しい…」


そんなわけで編み上げたのはいいものの、前世の記憶頼りに作ったのであちこち作りが粗雑だ。それでもマリアンヌ様はにこにこと満面の笑みで受け取ってくれる。天使かな。


そう、今日はマリアンヌ様に誘われて、一緒に領都の郊外を訪れているのだ。

豪商や豪農の避暑地によく使われるこの村は澄んだ湖も木陰もあり、植生が豊かでピクニックにはぴったりだった。


「…このお花…「あなたに安らぎを」って、花言葉で…」

「へえ…」

「…解熱と咳止めの、効果があるから、なんですけど…、…私、シャルル様といると、ほっとします。…安心できて、…楽しいです」

「…!!そっか、ふふ、僕もだよ」


頬を染めてはにかみながら笑うマリアンヌ様。

アンリエット様も仰っていたけど、女装姿だとやっぱり気が楽なのもあるのかな。


「マリアンヌ嬢は博識だね。どんな植物のことも知ってるし、花言葉とか薬効まで…」

「…そう、でしょうか…?…植物のことばかり、しっていても、…役に立たないと思います」

「そうかな。穀物も野菜も植物だし、研究していったらすごく役に立つと思うけど。薬草のことをよく知っていたら薬師として人の命を救うこともできるかもしれない。」


王子様としての後継者教育の中には植物学はないかもしれないけど、植物学者も薬学者も欠かせない職だ。

品種改良だとか栽培環境の拡大とか漢方だとかを思いつくままに上げてみるとマリアンヌ様の表情がみるみる明るくなる。


「…植物学者…薬師…。そうか…確かに。シャルル様の言う通り、です。」

「でしょう?マリアンヌ嬢の知識はきっと自分にも人にも役に立つよ」

「…私、…もっと、植物のこと、調べてみます…!…シャルル様のお役にも立てる、かも」


拳をぎゅっと握ってやる気に満ちた表情で顔を上げる。

自分で言って思ったけど、マリアンヌ様に植物学者は天職だろう。

王立学園卒業後、後継者以外の貴族の子息は研究職に進むこともできる。私もそういう道を選ぶのもいいかもしれない。

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