お茶会(開始前)
そんなこんなでお茶会当日。
我が家の庭に大きなテーブルや天幕を用意して、家格やら家同士の関係を考慮して決めた席次通りに茶器やら持ち帰れるネームプレートやらを配置して。マックス様がいらした時と同じくらい、朝から屋敷は大わらわだ。
私は私で自室で準備を済ませ、少しの待機時間の間にレオに泣きついていた。
「レオお願い、僕に頑張れっていってくれない?できれば10回くらい。僕このまま部屋に篭っちゃいそう」
「いいけど…。」
レオは私の要望に応えてくれたあとに少し心配そうな顔で続ける。
「あんまり無理するなよ。限界になる前に早めに休め。病弱って言われてるんだから途中抜けしてもいいはずだし」
うああ…優しさが染みる…
元々人見知りする性質では無いはずなのだ。
マックス様と会う時…はあまり大丈夫じゃなかったけど、花祭りの時も花送りの時も孤児院の時も緊張せずにやれていた。
どうして今回に限ってこんなに緊張するのか。
多分その一因は今日の私の美しさにある。
白と薄桃色のフリルをふんだんに使ったプリンセスドレスは陶器のような肌の美しさを引き立て、柔らかなベルスリーブから除く手首の細さを際立たせていた。
普段と違う衣装のみならず今日の私は顔の様子(?)も絶好調らしく朝から不便極まりない。
「パールに飾られた金髪は誘うようにきらきらと輝き、翡翠の目がまつ毛の影の向こうで宝石のように色合いを変える。薔薇色の淑やかな唇は綻ぶ直前の蕾のようで、その口から名前を呼ばれた日には己の心臓すら喜んで差し出してしまう。夏の日差しですらこれほどに目を灼くことは無い。私はこの美しさのためならば人生全てを捧げても後悔しない、いや出来ないだろう」
ちなみに今の感想は私の姿を見た使用人がエラーの様に吐き出した賛辞の言葉の一部である。我が家の使用人にこんな詩の才能があったなんてね…。そのまま我を忘れて跪き出した彼女は私と目を合わせずにことなきを得たらしい他の使用人に引きずられて退場していった。
熱中症が心配になる程赤くなったジェレミーもそっぽを向いたまま一生目が合わないし、様子がおかしくなっていないのは両親とレオだけだ。こんな調子でお茶会は平和に終わるのだろうか…。