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ニコルの食堂

「ひいっ、ば、化け物…」

「…酔っ払うのもほどほどにね」


食堂の床に転がされた酔っぱらいが私の顔を見て引き攣った悲鳴をあげる。荒療治になったがこれで酔いも覚めただろう。

フードを被り直しながらニコルの様子を横目に確認すると私の顔を見て固まってる。…とりあえずよかった、怪我はなさそうだ。


「シャルル、怪我は?」

「大丈夫!『身体強化』で一発だったし。レオは?」

「問題ない。こっちも片付いたしな」


こうなったのには訳がある。

そもそも食堂の個室に案内されたはいいものの、いつまで経っても注文した料理が来ない。それでレオと一緒に様子を見に下に降りてきたのだ。


なんだか騒がしいな?と思ってみると、酔っぱらいが食堂の真ん中で大喧嘩をしていた。

最初は大声で罵り合っていた3人はいつのまにか取っ組み合いを始め、他の客や店のものに被害が出そうになったところをレオと一緒に鎮圧したわけだ。


変に目立ってしまったけれど、物にも人にも被害が出なくて良かった。うっかりフードが外れてしまったせいで悲鳴は上がったが。

騒ぎに気がついてジェレミーが呼んできてくれた衛兵に事情を説明し、酔っぱらいを引き渡す。こういう時家紋を持っていると話が早い。


「あっあの、」

後始末を終えて早々に個室に戻ろうとするとニコルに引き止められた。

「た、助けてくれてありがとう!!」

両手を胸の前でぎゅっと握って上目遣いに(身長差のせいだけど)お礼を言われる。わ、めっちゃかわいい。


「どういたしまして。怪我とかなくて良かったよ」

「かっこよかったです…!王子様みたいで…」

「ほんと?ありがとう」


王子様みたいだって!!!!!やった!!!超嬉しい!!!完璧超人王子様系イケショタが私の目標なので、レオとの剣術・体術の練習は忙しくなった最近も毎日欠かさずにいる。

努力の成果が出たみたいで達成感がすごい。


「…」

「レオ?」

「あ、いや…あの子、俺の顔も見てたのに全く怖がらなかったな」

「そういえば、素顔で目合うの久しぶりかも?」

そう思うと珍しい子だなあ。看板娘で色々な人に会うからだろうか?


個室に戻ってしばらくすると料理が運ばれてきた。雑穀の入った硬めのパンに粗挽き肉のパティとピクルスやチーズが挟んである、有体に言うとハンバーガーだ。揚げた芋も添えてあって見た目は前世のマ⚪︎クみたい。


「…!おいしい…!」

「評判通りだね!このポテト好きだな」

ジューシーなパティと香ばしいパン。チーズがコクのある風味を加えて、シャキシャキしたピクルスがいいアクセントになっている。フライドポテトもジャンクでクセになる味だ。食後にはアップルパイまでおまけでつけてくれて、大満足の昼食だった。


「急だったのに個室を貸してくれてありがとう。アップルパイも美味しかった」

「また来てくださいね!いつでもおまけしますから」


お代とすこし多めのチップを渡して店を出る。ニコルは出る間際まで見送ってくれた。いい雰囲気のお店で料理も美味しかったからお忍びの時はまた来たいな。

その後少し街を見て回って、そのまま帰路に着く。


帰り際、マックス様がふと足を止めた。

「…シャルル……。」

「どうしたの?」

「…………。…ううん、なんでもない」


えっ何々気になるんだけど…!!!

口をつぐんだマックス様はそのまま思案顔で黙り込んでしまった。なにかあったのかな…

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