シャルルと王子様
「ねえレオ、赤のリボンと緑のリボンどっちが合うと思う?」
「どっちもいいけど、悩んでんなら緑がいいんじゃないか。シャルルの目の色と一緒だし」
「確かに!じゃあ緑にしよ〜!」
ふんわりと膨らんだベルスリーブとドレープを寄せた襟元に細いリボンが巻かれたフリルシャツで高貴な雰囲気と中性的なイメージを演出。タイトなスラックスは私の足の長さを際立たせる。
ふわふわの金髪はアシンメトリーに分けて、足元は金色の金具のついたツヤツヤの革製ローファー。頭のてっぺんから靴の先まで、これぞ貴族令息といった出立に仕上がった。
「どう?」
「似合ってるしかっこいいぞ。にしても随分張り切ってんな」
「へへ、だってシャルルで会うのは今日が初めてじゃん?」
そう、今日は王子様との授業の日だ。だから1番かっこいい格好にしようと朝から試行錯誤して、その結果がこのコーディネート。我ながらいい出来だ。
満足しながら支度を終え、レオと一緒に授業に向かう。
「マクシミリアン第一王子殿下にご挨拶申し上げます。ロベール伯爵家の長子、シャルル・ロベールと申します」
臣下の礼をして顔を上げると、王子様の付き人からひっと小さな悲鳴がした。
レオの時といい失礼だなあの侍従。
レオと一緒に初めて王子様に挨拶に行った時もおんなじような反応してた。
全く、こんな美少年の何が怖いっていうんだ。
王子様は変わらず無口な様子。でも心なしか仮面越しに目が合ってる気がする。
「マクシミリアン様、お隣に失礼してもいいですか?」
「…うん」
え?!?!?!しゃべっ?!しゃべった!!早くない?!?
内心の動揺を押し隠しながらお礼を言って席につく。
「…シャルルはシャルロット…の、弟?」
「あ、はい!そうです。シャルロットは僕のお姉様です。」
王子様の方から話しかけてくれた…!!もしかして昨日一昨日の無口っぷりはシャルロットが話にくかっただけ?
そんなことを考えてちょっと凹んでいると、王子様が再び質問をしてきた。
「……仲良し?」
「僕とお姉様がですか?はい、仲良しですよ。一緒にお部屋で遊んだり」
「………、」
王子様が少し躊躇ってから口を開いたその時。
コンコンコン!!
「失礼します」
語学の先生が来てしまった。なにか言おうとしてたっぽかったのに…。
フォンテーヌ語の先生は私語を嫌がるから、そのあとは静かに授業を聞いて書取りに集中することになった。その後も政治と法律、領地経営の授業があり、やっと解放されたときにはもうお昼だ。
「マクシミリアン様、さっき何言おうとしてたんだろね」
「授業の前のことか?」
「うん、終わってすぐ帰っちゃったから聞けなかったけど…」
レオと話しながら部屋に帰っていると同じく客館の方へと向かう王子様達の姿が見えた。
「お、噂をすれば」
「本当だ、帰るとこかな?」
気になって様子を見ようと立ち止まると、王子様の侍従達が話す声が聞こえてくる。
「……全く、この盆暗王子ときたら…」
「…フォンテーヌ語すら碌に読み書きできませんからね」
「こんな醜い顔じゃお飾りにもならん…」
まるで世間話でもするような声量で、当人の目の前で交わされる口汚い言葉達。
「なにあれ…」
「あいつら…」
聞いてられない。最悪すぎる。大の大人が子供の目の前であんなこと言う?!
「っ貴方達!」
居ても立っても居られずに大きな声で呼びかけて侍従達に近づく。侍従達は足を止めて露骨に顔を顰めた。
「…シャルル」
侍従や護衛の隙間から王子様が声を上げる。
「…騒がしくして、すまない。」
え?なんで?なんで王子様が謝るの?
「マクシミリアン様は体調が芳しくない。これ以上はお控えください」
侍従の一人が慇懃な様子でそういうと、王子様は背を向けて去っていってしまった。
ええ………
呆然として立ち尽くす。わけがわからない…
いや、他所の従者を注意するのは良くなかったのかもしれない。越権行為みたいな…。
うん、少なくとも良い対応じゃなかった。もっと冷静に動くべきだった。
…んだけど。
「…いややっぱおかしいでしょ、あの態度。侍従としても大人としても」
どうなってるんだあの侍従達は。
タイトルが思いつきません。
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