異世界の街舐めてた
異世界の街舐めてた!!
早速迷子なう。
「ここ、どこ…」
地図も目印もない。
お屋敷の庭の裏口から抜け出して町にでたは良いものの、いい匂いにつられてふらふらしたり街の人に追い払われたりしているうちにどこかの裏路地に入ってしまったらしい。
表通りよりも2度くらい気温が低く感じる。日当たりが悪くジメジメしたそこには人気がないのに何かがこちらを見ているような嫌な感覚があった。
「と、とりあえずきた道を戻れば帰れる…よね?」
振り返って戻ろうとした瞬間、足元を何かが駆け抜けていく。ネズミだ。
「ひぇっ」
勘弁して…。そもそもここに来るまでに何度か戻ろうと試してはいた。
大きな建物を目指して歩いてみたり、街の人に聞いてみたり。どちらも成果を上げずに今ここに至るわけだけれども。
遠くからも見える何かの塔を目指して歩こうとしても道が曲がりくねっていてまっすぐ歩いていたはずが気がついたら元の場所に戻っていたし、街の人に聞こうとしたら悲鳴を上げられた。
うん、あれが迷子になった1番の原因だと思う。
今まで美形側でこの世界の人間の容姿への偏重を浴び続けてきたけれど、不美人に対してはもっとひどいらしい。
顔を見れば悲鳴を上げられ、舌打ちをされ、あげく私の顔に驚いて勝手に転んだくせに当たり屋扱いされた。
「まったく、こんな美少年にひどいったらないよ」
出発前に鏡の前で自分の姿を堪能していなかったら心が折れていたところだ。
懐から取り出した手鏡を見て気を取り直して、元来た方へとと足を進める。
十分ほど歩くと道の幅が少し開けてきた。奥の方に教会らしき建物の屋根が見える。
あそこを目指そう!教会の人ならきっと文字通りの迷える子羊を導いてくれるはずだ。と、安心したその時。
「誰かっ助けて!!!」
子供の悲鳴が聞こえた。
考えるより先に体は声の主の方に走り出していて。
一本隣の路地、柄の悪い男たちが二人がかりで少女を捕まえ、麻袋に押し込もうとしている。
「はなせ外道!!!!」
駆けつけた勢いそのままに突進する。この無謀な試みは火事場の馬鹿力で幸運にも相手を転倒させることに成功した。
「逃げるよ!!」
「っ」
怯ませた隙に少女の手を取って。驚いた少女が私の顔を見てかたまり、
「っきゃーー!!!!!!!!!!!!!!」
近くの建物を震わせるようなとびきりの悲鳴を上げた。なんで?!?!
戸惑ってるうちに背後から駆け寄ってきた誰かが怒声を響かせる。
「シェリー!!!離れやがれ変質者っ!!」