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剣術大会(後編)

「お父様、お母様。私お花摘みに行って参ります」

「あら、それなら護衛の騎士に声をかけていってね」

「はい!」


お母様ごめんなさい、今だけ1人行動させてください…!!

こっそり特別席を抜け出してすぐに身体強化を使う。全力疾走で向かう先は伯爵邸だ。裏庭にいつも抜け出してる秘密の出入り口がある。


レオはまだ成長期途中なので身長に合わせて大人より少し短めの剣を使ってる。それに合わせて練習もしてるから例え他の人から借りられてもサイズが合わないと困る。


孤児院から替えの剣を取ってくるにしても時間が足りない。5回戦、準々決勝から出場者は控室が用意されて、そこで試合を待つことになるからだ。

割と八方塞がりな現状。


でも一つだけ案がある。

「誰もいないよね?…よし」

自主練用にお母様にお願いして買ってもらった木剣。身長的にもレオとほとんど変わらないし、孤児院の木剣と同じ重さだ。これなら替えの剣として申し分ないだろう。


あとはこれをレオに届けるだけ…なんだけど、どうしよう。服着替えていく暇ないよね。トイレに行くって行って抜けてきたし。


コツコツコツ。

「っ!」

誰か来る…!

ベッドの下に隠してたフード付きのコートを引っ張り出して窓から大急ぎで逃げ出す。

目立つ服装だけならこれで隠せるはず。


とにかく急いでレオのところに行かなくちゃ。

コートを羽織ってフードを被り、会場へ走る。

4回戦が終わって今はお昼休憩。会場の周りにも人が結構出てきてるから紛れていけるかな。

レオの控え室は会場の裏手の方だった。


準々決勝までまだ時間がある。それでも気が急いて小走りで裏手に向かおうとして。

「っ、ごめんなさ…レオ?!」

「えっ、シャルル…?」

向こうから来た人にぶつかってしまった。


視線を上げると見慣れた顔が驚いた表情でこちらをみている。やばい、顔見られちゃった!

咄嗟にフードを被り直し、レオの手を掴んで引き寄せる。

「あ、貴方がレオね?ちょっと着いてきて」


今からでも誤魔化せない…な、うん。思いっきりレオって呼んじゃったし。姉ですっていっても納得しなそう。さっきレオもシャルル?って言ってたもんね!というかレオ気づいてくれるんだ、いや気づかれたらダメなんだけど。


脳内でうるさい思考を巡らせてるうちに控え室につく。レオは移動中何も言わずに黙って着いてきてくれた。

ばたん。扉を閉めて一瞬気まずい沈黙が漂う。あー!!どうしよこれ!!


「…シャルロット嬢で合ってるか?」

「あ、はい!私がシャルロットです!」

「…そうか、それで俺に何か用があって来てくれたんだよな?」

あっ今一瞬呆れた顔したね?!でもありがとう!私は全力でレオの演技(気づかないふり)に乗っかります!


「ええ、シャルルが貴方にこれを渡してって言っていたの」

「!!木剣か、替えが無くて困ってたんだ。助かる…」

「よかった。シャルルが貴方を応援していたわ。レオなら絶対優勝出来るって。」

剣を受け取って安心した様子のレオにそういうと力強く頷いた。


「ありがとう。必ず勝つから。

優勝してシャルルの騎士になるって伝えてくれ」

「シャルルの?……どうして?」


「どうしてって…

そしたらわざわざ抜け出してこなくても会えるし、遊べるだろ」

「…っふ、あはは!確かに、友達だもんね」

珍しくちょっと戯けた表情をしていうから、力が抜けて思わず笑ってしまった。


そっか、レオは変わらないでいてくれるんだ。

この姿で会って遠ざけられたり、変な関係になったりしたらどうしようって本当は心のどこかで思ってた。

だからずっと隠そうとしてたけど…失礼なことしちゃったな。


「というか、シャルロット嬢。時間大丈夫か?」

「あっ!!」

やばい!!!!!

木剣を取りに行ってた時間を抜いても優に10分は経ってる。お父様とお母様も心配しているだろう。

護衛の人が探しに来る前に帰らなきゃ!


「帰んなきゃ!レオ、またねっ!応援してる!」

「ん、ありがとな」

手を振って控え室を飛び出す。扉の向こうで「隠す気あんのかあれは…」なんて呟く声が聞こえた気がした。

ごめん、隠す気は無くなりました…この大会が終わって落ち着いたらレオにちゃんと説明したいな。


心がすごく軽い。体もなんか軽い気がする。

妙にはしゃいだ気分で席に戻ろうとしたら無意識に『身体強化』を使ってたみたいで護衛の人を驚かせてしまった。

もうすぐ準々決勝が始まる。


難産でした

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