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剣術大会(レオ視点)

「レオ、この服どう思う?」

「ん?ああ、機能的でいいデザインだな」


薄手のワイシャツと綿の入っていないスラリとしたベストを身につけたシャルルが思案顔で尋ねてくる。

体の幅を大きくみせるための厚手のジャケットや綿入りのシャツとは違い、シャルルの服は機能性に特化し一見見栄えに気を配っていないようにも見える。


「似合ってるよ。シャルルが着ると様になるな。」

「ん、へへ。ありがと」

「花祭り用か?薔薇の刺繍が入ってる」

「あっよく気づいたね!そうなんだよ、これ花祭り用に作ったの」


けれどこうして細部に工夫が凝らされてたり布地の色や質にこだわったりしている様子を見るに、このデザインはシャルルなりの美的感覚に沿ったものなのだろう。

だからだろうか。そうして作られた衣装は本人が身につけると突然魅力を増す。

シャルルの作る、シャルルのための衣装。


そう思っていたから次の言葉は想定外だった。

「あのさ、こういう服…レオも興味ない?着てみない?」

「え」

「あ…無理にじゃなくて」

「いや、興味はある。…けど俺に似合うか…?」

動きやすそうで着て見たいとは思う。でも、シャルルみたいに着こなせるだろうか。


「似合う!!ぜっったい似合う!!レオ背高いし筋肉ついてるし、スタイルいいから」

「俺にスタイルいいっていうのはシャルルだけだろうな。…でもシャルルが似合うっていうんなら。」

「やった!!」


「つーか、いいのか?シャルルのじゃサイズ合わないだろうし、作んなきゃいけなくなるんじゃねえの」

「ん?うん、もともと作りたくて聞いたし。

いつもレオにはいっぱい助けてもらってるからお礼がしたくて」


シャルルらしい律儀さだ。剣の相手やら助かっているのはこっちも同じなんだが…。

シャルルはやる気になっているみたいだし、そっちの礼は別の形ですることにしよう。


そうしてシャルルが作ってくれた服を受け取ったのは花祭りの1週間前。忙しい中だったのだろうにその服の縫い目はすごく丁寧で、素人目にも手間と時間をかけて作ってくれたのだろうと分かった。



「ああ、ごめんね?うっかり手が滑っちゃって!でもそんな見窄らしい服、ちょっとくらい汚れても誰も気にしないか」

だから、こんな言い方をされていいようなものではない。絶対に。


「なんだよ、その顔…気持ち悪い。汚れたのがいやなら帰れば?」

いきなり泥の塊をぶつけてきた犯人は魔法で作ったらしいそれを片手にへらへらと軽薄な笑顔を浮かべている。

辺りを見渡せば他にも被害にあった出場者が恨みがましい視線を向けていた。


「…帰らない。さっき、見窄らしい服って言ったな」

「あははっ!そうだね!お前たちみたいな貧乏人にはそれくらいしか買えないんだろうけど」

「取り消してくれ。これは友達が俺のために作ってくれた大事な服だ」


息を整えてまっすぐ目を合わせ、できるだけ冷静な口調を心がける。手元の高そうな剣からも土魔法が使えることからも、目の前の子供は身分が高い。下手に挑発したり叱りつけてはいけない。


以前なら反論しても仕方ないと何も言わずにその場をやり過ごしていたけれど、俺がここで言わなかったらシャルルの作ってくれた服は馬鹿にされたままだ。

そんなのは嫌だ。


「っ…あ、はは!誰が作ったかなんて僕には関係ないし、ただ感想を言っただけだよ。今日は伯爵夫妻も令嬢も見にくるんだから、お前みたいな不細工いたら、…」

「取り消してくれ」

「…っしつこいなぁ、めんどくさっ」

子供は顔を引き攣らせたかと思うとふいっとそっぽを向いて足早に場を離れていった。


「はー…」

他の出場者は俺を遠巻きにして囁き合っている。

その中に聞こえたあの子供のものらしき名前。

トーナメント表に載っていた、4回戦の対戦相手だ。

気持ちを切り替えよう。

感情的になって調子を崩したら元も子もない。


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