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もう一度あの空の下で




全速力で走ったおかげで3分で着くことが出来たが、部活を引退した後全く運動をしなかった為か息切れと動悸が激しく、俺が配属されたらしい1-4教室へ入る頃には息も絶え絶えだった。



くそ、これも自転車が壊れたせいだと心の中で思いっきり悪態をつき席についた。



後から聞いた話だがこの時俺はクラスの全員から引いた目で見られていたそうだ。先程あった強烈なアクシデントのせいで忘れかけていたが、元からの凶悪な目つき、全速力で走ってきたせいで乱れた髪に乱れた呼吸、多量の汗。とまあこんな最強最悪のコンボで今しがた人を殴って逃げてきたのではないかと思われていたらしい。んなわけないだろ。



まあお陰様で恵まれた体格に産んでくれたもんだから高1にしちゃどデカい、さらに目つきが悪く乱れに乱れた男が息を切らせて教室に入ってきたらビビらない方がおかしいのかもしれない。

俺でもそんなやつが入学早々教室に入ってきたらビビる自信がある。


でもまあ奇跡的というか楽観的というか客観的に見れていなかった当時の俺は、自分の心臓の鼓動と暑さと息切れで周りの目なんて気にする余裕がなかったからそれは不幸中の幸いだったのかもしれない



俺が席に着くやいなや教室に妙に気合いの入っている教師らしき男が入ってきた。マジのマジでギリギリセーフだったようだ。あの時はよ行けやって言ってくれた香坂さんありがとう...と心の中で感謝する。



あー、ハイハイどうせ担任の挨拶ってやつでしょうよ俺ァそれどころじゃないんだわと、張り切って心持ちやら1年間の意気込みやらペラペラとくっちゃべってる雑音を適当に聞き流し、時間はあっという間に過ぎ去り、入学式当日の学校あるある(?)、クラス全員の自己紹介時間に突入した。


俺は幸い頭文字がま行のため後半だが言うてクラスは30人程度。話す中身を何も考えていない俺には20番目以降だろうがなんだろうがハードルは高すぎる、富士山くらい高かった。


これは一見チョロそうに見えて実は今後の高校生活に大きく影響する第一印象が決まってしまう地獄の時間なのだ。


どうしようどうしようどうしようと悩んでいる俺をよそに1人目の自己紹介が始まった。



そもそも自己紹介以前に、登校してきた瞬間から強烈な第一印象を残していたことには当の本人の俺は1ミリも気付いていなかった。故のド緊張。どうしようヤバい何を言うべきか。




「北中出身、浅岡です。好きな食べ物はハンバーガー、嫌いな食べ物は....」


「南中出身、加藤でーっす!好きな女優は明日〇キララ、将来の夢は逆玉です!」


「南中出身、鹿野ですよろしくお願いします」




それぞれ名前、出身校、好きな食べ物なんて在り来りなことを言ったり、笑いをとったりスベったり、ボソボソ言ってて全く聞こえなかったりとオーソドックスから個性的な自己紹介までさまざまな色溢れる自己紹介が終わり、ついに俺の番がきた。


緊張のあまり治まったはずの動悸息切れがぶり返してきた。やばいほんとどうしよう昨日笑顔の練習なんて意味無いことしてないで自己紹介でも練習しときゃ良かったぁぁあ…!!なんて嘆いても時すでに遅し。前の席のやつが自己紹介を終え座った。もうどうにでもなれ前のやつが座ると同時に立ち上がりスゥゥウウウっと思い切り息を吸い込み吐きながら言う




「あ、東中出身です。エー、まあ…1年間よろしく…」




早口でまくし立て勢いよく座る

緊張のあまり小声も小声で言いたいこと全てが立ち上がった瞬間で抜け落ちた



おおおお終わったいろんな意味で終わった何言ったか全然覚えてないんだけどちゃんと言えたよなていうかあれ、俺名乗ったっけ?俺名前言ってなくね?

ガバッと勢いよく立ち上がり、




「あ゛!!名前は三芳、三芳彰仁ですよろしく...オネガイシマス.......」




最後は消え入りそうな声で、でもしっかりよろしくって1番言いたいこと言えたから良しとしよう。はー頑張ったよ俺偉いぞ俺。フーっと息をつき胸を押さえ机に突っ伏した。朝走ってきたより動悸が激しい気がする俺もうほんとに無理こういうすべった空気苦手すぎる穴があったら入りたいってこの今の俺のために生まれた言葉だよ絶対そうだよ無理だよあー帰りたい今日はもうツイてない日なんだよ。


ハッというか俺さっき香坂さんにやった自己紹介もグダグダだったような。やばい思い出してきた死にたい。めっちゃ笑ってたなあ。はあやらかしたわ。とぐるぐる困惑している俺を他所に自己紹介ターンは終わりを告げる。


反省に時間を費やしすぎて俺以降の人間の自己紹介は一切聞けずにいた。つまりクラスの半数以上の人間の自己紹介は聞いていない。はい終了…


そう思い自分の情けなさに呆れ笑いうなだれたところで授業終了のチャイムが鳴り響く



もうやだやっぱり学校嫌い....


そう改めて思ったのだった。







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