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3話

ギルド登録を済ませたあと、足早に露店へ向かう。

もう、夕方に近い時間帯。ザックのアホが絡んできたせいで、予想以上に時間がかかってしまいお昼ご飯も食べられなかった。…おのれザック。

それに、もしかすると早く行って霊草を買わないと無くなってしまうかもしれない。なんといってもあの霊草はエリクシールの素の1つ。気づかれれば買われてしまうに違いない。


「ロベリア様、そんなに急いでどうしたんですか。そんなにあの霊草が必要なんですか?」

「どうしても欲しいって訳じゃないけど、あると便利だからなるべく確保しておきたいの。」

「…ロベリア様は草マニアっと。」

「キリヤ、覚えなくていいよ。」


そんな事を言いながら向かうとちょうど店主が店仕舞の準備をしているところだった。


「店主ー!!」

「お、あんた達ギリギリセーフね。もう店仕舞するところだった。危なかったね。ほら、まだ霊草あるから。欲しかったら売るよ。」

「ありがとうございます。さ、ロベリア様カードを。」

「うん、はいどうぞ。」


素早く店主にカードを渡すと店主が驚いた顔で此方を見たが、すぐに何処か納得したように頷きカードを返した。


「あんた、竜神族の御人だったのね。道理で霊草の価値わかるよ。」

「まあ、使い方を知っていればね。はいお金。」

「はい、確かに5万リル。」


そう言うと店主は霊草と一緒に白い包に入った赤い玉を渡してきた。


「何これ?」

「飴よ、竜神族の御人はコウガでは縁起が良いからね。サービスよ。」

「でも砂糖って高いんでしょ、飴なんていいの?」

「いいの、いいの。それ私のとっておきおやつよ。商品違うね。気にせず食べるよ。」

「よかったな、ロベリア様。」

「うん、ありがとう店主。」


そう言うと店主はにこりと笑い手を差し伸べてきた。


「私はローウェンね、よろしく。まだこの街に暫く居るよ。よかったらまた寄って欲しいよ。」

「私はロベリア。よろしくねローウェン。」

「私は竜人族のコノハです。よろしくお願いします。」

「同じく竜人族のキリヤだ。よろしく頼む。」

「ああ、あんた達噂のAランク兄妹ね。知ってるよ。あんた達もまた来るよろし。」


店主と別れた後、このあとどうするかキリヤ達と話す。

何となく、一緒にいたキリヤ達だか彼らにも用事がある筈だ。いつまでも私の世話を焼く訳にも行かないだろう。


「キリヤ達どうするの?もう夕方だけど。」

「そうだな、俺達はそろそろ宿に行って飯でも食べるかな。」

「ロベリア様もご一緒にどうですか?私達が泊まってる宿はオススメですよ。接客サービスは良いしご飯は美味しい。それに部屋にトイレもお風呂もありますよ。」

「おう、ビーフシチューが絶品だ。」

「行きます。」


ビーフシチュー好きなんだよね。即決案件である。







あの後キリヤ達にオススメされた宿に行き、部屋がちょうど一部屋空いていたので私は事なきを得た。路上で一晩明かさずに済んだ。…危なかった。そこまでは良かった、良かったのだが。


「それでぇー!俺達はーバアー!!っと旅に出てぇ。今にいたるんですよぉー。」

「キリヤうざ、マジでうざ。」

「…兄様お酒飲み過ぎですぅ。」


キリヤが私達の出逢いに乾杯とかなんとか言って酒を飲んでしまったのが最後。この有様である。

え、私?勿論飲んではいるがスキルのおかげでほろ酔い程度で済んでいる。


「コノハ、大丈夫?」

「ふわふわですねぇ。」

「うん、駄目だね。」


まあ、この兄妹こう見えてもAランク。放って置いても大丈夫だろう。


「…すいません、ビーフシチューのお替りとホロホロ鳥のサラダ下さい。」

「かしこまりましたー!それにしても、お客さんキリヤさん達と仲がいいのねぇ。私なんかキリヤさんに相手にされないし、嫉妬しちゃうわ。」

「いや、今日あったばかりだから気のせいだよ。それに、ここの宿の人達はみんな良い人だしビーフシチューが美味しいってキリヤ達が言ってましたよ。あと、給仕のお姉さん可愛いって。」

「本当!?やだー、キリヤさんったら!!良いこと教えてくれてありがとう。ビーフシチュー大盛りにしておくわね!」


…っぶねぇー。あの給仕の女、キリヤ目当てか。

ふざけんなキリヤ。女の嫉妬とか面倒な事巻き込まれてたまるか。


「ロベリア様ぁ、俺の話ちゃんと聞いてますかぁ?」

「やめろ、くっつくな聞いてる、聞いてるから。コノハ助けて。」


おい、やめろ。給仕の女に見つかったらヤバいだろうがっ!!


「ああー、兄様ったらずるぅい。コノハも、コノハもロベリア様とくっつきたかったのにぃ。もおー、兄様ったらぁ。っめ!!」


ッドゴォ!!!


嘘でしょ、コノハさーん!?

確かに、私は助けてとは言ったが殴れとは言っていなよ!?


「…っう!…!?…?…。」

「…おい、キリヤ?キリヤ!?」

「あははははは、兄様寝ちゃったぁ!」


そう、私は忘れていた。コノハはおっとりしていてもAランクなのだ。ただ殴るだけでもハンパない威力に決まってる。


「…取り敢えず、回復だけしとくか。」


まさかこんなことで初めて回復技を使うはめになるとは思わなかった。が、いい機会だ。キリヤには実験台になってもらおう。キリヤ、君の犠牲は無駄にはしないよ。

そう思い私は背中に仕舞ってあるアーミラリを機動させ手にし回復の術を発動させる。


「ヒールっと」


するとキリヤの体が淡く光りだしたかと思えばすぐに光が消えた。一応成功…したのか?


「わぁ、ロベリア様綺麗な光でしたねぇ。」

「コノハ、後で反省ね。」


取り敢えず、キリヤを調べて見たが脈は安定していて寝ているだけだったので放っておくとする。

私はアツアツのビーフシチューと棒々鶏サラダもどきを堪能した後に自分の部屋へと戻るのであった。







部屋に戻りお風呂に入って寝る準備をすませる。

今日の出来事を振り返りながら状況を整理する。自分で言うのも何だが、初日にしてはまずまずの滑り出しではなかろうか。

お金に関してもゲームの時と同じなのでこの世界で人生3回生きるくらいには貯めてある。暫く困ることはなさそうだ。

まあ、空間魔法の収納に以前沢山作ったご飯が時間停止した状態で保管されているので、全然働かなくても食べ物には困りはしないのだが。


まあ、そんな事は置いといて。明日は食堂でキリヤ達を見かけ次第一応今後の予定を聞いておこう。

一緒に行動するにせよしないにせよ、世話になったので話はしておくべきだろう。

とにかくもう眠い…、体を休めなければ。







翌朝、昨日の疲れとは裏腹にスッキリとした目覚めであった。

こんなに気持ちよく起きたのはいつ振りだろうか。そう思いつつ食堂へ向かう。…今日のご飯はなんだろうな。

食堂に向かうと昨日とは別の給仕のお姉さんがせっせと働いていた。


「おはよう、お姉さん今日の朝ご飯はなに?」

「おはようございます、今日の朝ごはんは目玉焼きとマッドブルのソーセージ、白パンとサラダ。後はお替り自由の日替わりスープよ。今日はトマトスープなの。」

「へぇ、美味しそう。ところでキリヤ達はもう出てった?」

「いいえ、まだよ。いつもはこの時間帯に起きて来るのだけれど。同僚の子が昨日は飲み過ぎたみたいって言ってたいわ。だから少し遅いみたいね。」

「ふーん、そうなんだ。ありがとう。」

「いいえ、どういたしまして。すぐご飯持ってくるわね。」


そう言いお姉さんはすぐにご飯を運んでくれた。仕事の出来るお姉さんは素敵ですね。今日もご飯が美味しい。


暫くご飯を堪能しつつ、スープのお替り3杯目に突入した頃にキリヤ達はやっと来た。…遅いぞ。


「…おはようございます、ロベリア様。」

「…はよッス、ロベリア様。」

「はい、おはよう。…何か言うことは?」

「「昨日はすいませんでした」」

「でしょうね。まあ、お酒の席だから余り言うつもりは無いけれど、程々にね。」


酒の席で多少はめを外すのは構わないが、流石に殺人事件は御免である。


「うううー、頭が痛いです。」


コノハ、貴女は飲みすぎです。


「そうか?俺は途中で記憶が無くなったが…、何だかスッキリしてるぞ。」


キリヤ、お前は死にかけてたんだよ。


「…ところでキリヤ達はこれからどうするの?私は当初の予定通り。一人で暫くこの街を拠点に活動するつもりだけど。」

「え、ロベリア様は俺達と一緒じゃないのか?」

「流石にこれ以上キリヤ達のお世話になるのは申し訳ないよ。」

「私と兄様は気にしませんよ。」

「私が気にするの。それに私はもう冒険者なんだから。自分の事は自分でなんとかしないと。」

「ロベリア様が俺達のパーティーに入ったら良いんじゃないか?」

「妙案です兄様!!それでいきましょう。」

「いや、いかないから。」


仲良くなった自信はあるが、この二人は何故そこまで私に固執するのだろう。そこまで良くしてもらう理由は思い浮かばない。


「私の事を良く思ってくれて嬉しいけど、流石にそこまでする理由は無いだろう。何か私に聞きたい事やして欲しい事でもあるの?」


そう言うと、そんな事を考えたこともなかった。というように二人は目を丸くさせた後、頬を赤く染めながら恥ずかしそうに此方を見つめてきた。…いったい朝から何なんだ。


「…えっと、ですね。ロベリア様。ロベリア様は竜神族の方であらせられますよね?その魔力はとても膨大で…その…。竜人族にはその魔力を感じ取る事が出来るんです。」

「だから、俺達竜人族にとって、その感じ取った魔力はとてもそのっ…。」

「もじもじ言わない、はっきり言う。」

「「気持ちが良いんです!!」」

「朝っぱらから何言ってんだてめえ。」


何言ってんだマジで。

思わず口調が汚くなってしまったじゃないか。

え、いつもだと?気のせいだよ。


「…取り敢えずご飯食べな。頭が回ってないから変な事口走るんだよ。」

「いえ、けしてそうではなく」

「いいから食え。」

「だが、ロベリア様」

「食え。」

「「…はい。」」


二人にご飯を運んで貰うよう給仕のお姉さんにお願いしすぐに持ってきてもらった。

あの会話が聞こえてたはずなのにお姉さんは配膳を終えると動揺すら見せずにこやかに仕事に戻っていった。…強いなあの人。


今後の話をする為に朝からかなり時間が掛かりそうな予感に私は頭を悩ませる。…駄目だ何も考えられない、トマトスープ飲んでから考えよう。

そう思いすでに冷え切ったトマトスープに口を付け思考を暫く放棄させるのであった。







キリヤ達の朝食を終えた頃に話し合いは始まった。


「ロベリアさま。コノハ、どうしてもいっしょにいたいです。だめですか?」

「ありがたいけど駄目です。そんな幼女みたいに言わない。プライドないんか。」

「ロベリア様、絶対に後悔はさせない。俺を選んでくれ。」

「やめろ、給仕の女に刺される。」

「俺は貴女の為なら刺されてもいい!」

「刺されんのはお前じゃなくて私だから言ってんの!」


あれからもう2時間は話し合いをしている。

二人とも、どうしても離れたくないのか。さっきからずっとこの調子だ。


「もう、どうすれば一人で冒険者させてくれるの?」

「俺、良い事考えたロベリア様。ロベリア様は一人で冒険をしてくれても大丈夫です。俺達は遠くから後ろを着いていきます。」

「…兄様、天才ですか。」

「はい却下。それ一人言わん。つーか、ストーカー行為ダメ絶対。」


なんでこんなに執着するかな。魔力がどうの言ってたけど、もはや魔力じゃなくて私は麻薬か何かじゃないのだろうか。

そう思いはたと、思い出す。

そういえばローウェンは霊草を取り扱ってたし、竜神族の事にも何だが詳しそうだった。もしかするとこの事を知っていて昨日のあの態度だったのではと。


「…取り敢えず、この後私はローウェンの店に用事があるから。もし二人に依頼が入っていても同行はしないよ。」

「大丈夫だ、昨日は俺達も何も依頼は受けていない。」

「だから何も心配いりませんよ。ロベリア様。」

「それは冒険者としてありなの?」


そんな私は不安を覚え、私達はローウェンの店へと向かうのであった。

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