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なんでも屋さんと流れ星

作者: 新萌


 森に囲まれた小さな町の中に、どんなものでもあるという不思議なお店がありました。小さな小さなそのお店は、「なんでも屋さん」と呼ばれ、人間だけでなく、森にすむ動物も来ている、と言われていました。




ある寒い冬の夜、なんでも屋さんのおかみさんがいつものようにお店番をしていると、カランカラン、とベルが鳴り、一人の小さな女の子が入ってきました。


「いらっしゃいませ。」

 おかみさんの声にぺこりと頭を下げた女の子の頭には、狐の耳が二つ、くるりと振り返った後ろには、ふさふさの尻尾が揺れていました。


(あらあら、狐さんかしら。随分小さい狐のようね。)

 そう思ったおかみさんは、しばらく女の子を見ていました。



 女の子は、きょろきょろとお店の中を見て、何かを探しているようでした。しばらくして、探しているものが見つからなかったのか、女の子はおかみさんの座っているいすの間でやってきました。


「あの....」

「どうしましたか?なにか、欲しい物でもあるの?」

 おかみさんが尋ねると、女の子はたどたどしく答えました。


「おねえさん、ここには、何でもあるの?」

「ええ。お店にはなくても、届けてもらうこともできるわ。」

「あのね、わたしね、欲しいものがあるの。」

「どんなものが欲しいの?教えてちょうだい。」


 おかみさんが優しく聞くと、女の子はゆっくりと言いました。


「わたしね、えっと....流れ星が欲しいの。」



「流れ星?」

 おかみさんが聞き返すと、女の子はこくりと頷きました。


「お母さんがね、病気になっちゃったの。流れ星にお願いすると願いが叶うんだよって、お母さんが教えてくれたから、お願いして治してもらうの。」


 どうやら女の子は狐が化けたもので、お母さんの病気を治すためにおつかいに来たようです。


「流れ星、ね。お店にはなかったかしら?」

「うん。全部見たけど、見つからなかったの。」


 


 おかみさんは、少し考えた後、そうだ、と何かを思いつきました。

「倉庫にあるかもしれないわ。一緒に探しに行きましょう。」


 そう言うと、女の子も頷き、二人はお店の裏の倉庫に行きました。


「どこかになかったかしら........」

 小さな倉庫に入った二人は、手分けをして流れ星を探すことにしました。

女の子は下の棚を、おかみさんは台に上がり、上の方を探しました。



 しかし、流れ星は見つかりません。

「どうしましょう。困ったわねえ。」

 女の子は困ったような、泣きそうな顔です。


 おかみさんはしばらく考えると、少し屈んで女の子に言いました。


「わかったわ。3日間たったらまた来てちょうだい。それまでに、流れ星を用意しておくわ。」

「ほんとう?」

 おかみさんはしっかりと頷きました。


「ほんとうよ。だから、待っていてちょうだい。」

「わかりました!」

 女の子は嬉しそうに帰っていきました。





「さあて、どうしたものでしょうねえ........」

 閉店したお店で、おかみさんは考えました。


 なんでも屋さん、と言っても、流れ星は手元にありません。届けてもらおうにも、簡単な事ではないでしょう。


「でも、あの子の願いはかなえてあげたいものだわ。」

 おかみさんは、もう一度倉庫の中を探してみることにしました。



 それでもやはり、流れ星はありませんでした。




 おかみさんはなんとかして女の子の願いを叶えようと考えましたが、時間だけが過ぎていき、とうとう2日目の夜になってしまいました。

 おかみさんは椅子に座ってラジオを聞いていました。


「困ったわねえ。明日が約束の日だわ。」

 ラジオからは、明日の天気が聞こえてきます。


「配達屋さんは明日しか来ないし.....」

 女の子の願いを叶えてあげたいおかみさんでしたが、できることがありません。



 すると、ラジオからこんな声が聞こえてきました。

「明日は、とても綺麗な空が見られるでしょう。とくに、明日は流星群ですからね、とても幸運です。」


「流星群ですって?」

 それを聞いたおかみさんは、何かを思いつきました。

「よかった、あの子の願いを叶えてあげられそうだわ。」

 おかみさんは、嬉しそうに笑いました。




 約束の日の夜、女の子が、またお店にやってきました。今度はちゃんと、尻尾も耳もありません。かわりに、かわりに、首から葉っぱのネックレスをかけていました。

「おねえさん、流れ星、見つかった?」

 女の子はワクワクしながら聞きました。

「ええ。見つかったわ。もうすぐ持ってくるから、ココアでもいかが?」

 おかみさんはそう言って、赤いマグカップに暖かいココアを入れて持ってきました。

「おねえさん、ありがとう!」

 女の子はおかみさんが用意した小さな椅子に座り、やけどをしないように、ゆっくりとココアを飲みました。


 




 女の子がココアを飲み終わる頃には、空は女の子が来た時よりも暗くなっていました。


 それを見たおかみさんは、ゆっくりと立ち上がり、女の子に言いました。

「そろそろ流れ星が見ましょう。さあ、いらっしゃい。」


「どこに行くの?おねえさん。」

 女の子が立ち上がっておかみさんに尋ねると、おかみさんはお店のドアを指さしました。


「お店の外よ。」

「そとに流れ星があるの?」

「ええ。いらっしゃい。」

 首をかしげる女の子の手を引いて、ドアを開け、お店の外に出ました。


 外には黒い空が広がり、星がキラキラと輝いていました。


「ね、ね、どこに流れ星があるの?」

 女の子が満天の星空をうっとりと見上げながら、おかみさんにいいました。


「見ててごらん。もうすぐ届けてくれるわ。」


 おかみさんが空を見上げた時、小さな光がきらりと流れました。


「あっ!............」

 女の子が驚いて空を見上げると、一つ、また一つと、流れ星が見えました。


「流れ星が、いっぱい........」

 女の子はとても嬉しそうです。


「さあ、早くお願いしないと。流れる前に3回、お願いしないといけないのよ。」

「はい!」

 おかみさんがそう言うと、女の子は一生懸命にお願いを始めました。


「お母さんの病気が治りますように、お母さんの病気が治りますように、お母さんの病気が治りますように............」



「流星群が綺麗に観れてよかったわ。」

 そんな女の子を見て、おかみさんも嬉しそうです。



 流星群が終わるころには、女の子はすっかり笑顔になっていました。


「おかみさん、どうもありがとう!お礼は絶対に持ってきます!本当にありがとう!」

「どういたしまして。お母さんの病気、治るといいわね。」

 

 女の子は何度も何度もお礼を言いながら、お店から帰っていきました。






 



 次の日の夜、おかみさんがいつものようにお店番をしていると、コンコン、とドアをノックする音が聞こえました。


「あら、ドアは空いているはずだけど......」

 おかみさんが不思議そうにドアを開けると、2匹の親子の狐が座っていました。


 おかみさんがあら、というと、お母さん狐がぺこり、と頭を下げ、それに続いて、子供の狐も頭を下げました。


「まあ、病気がよくなったのね。」

 おかみさんがそう言うと、お母さん狐が、手に持っていた蔦と木の実と葉っぱでできたリースをおかみさんに渡しました。


「まあ、ありがとう。」

 おかみさんがそう言うと、狐の親子は、もう一度、ぺこりと頭を下げると、森へと帰っていきました。



「素敵な贈り物をもらったわ。ありがとう。」

 おかみさんはそう言って、リースをドアに飾りました。



 外には月明かりの下で、雪がひらひらと降っていました。



  

 




 

ボリューミ........

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