飛べない天使
俺はごく普通の高校生。
しかし天使の様な女の子と同棲することになりました。
「蒼羽、行ってくるわね」両親が出かけて行った。
仕事でしばらく帰ってこない。
12階、3LDKのマンションでしばらく一人暮らしとなった。
俺の名は秋月蒼羽、18歳の高校三年生だ。
良く言えば普通、悪く言えば…………言いたくない。
これと言って特技もなく、セールスポイントはほぼ無い。
趣味がとてつも無く地味で園芸だ、と言ってもベランダで野菜や観葉植物を育ててる程度だ。
そんなこんなで影の薄い俺はクラスでも全く目立たない。
勿論彼女が居る訳もなく、筋金入りの童貞君なのだ。
このままでは一生寂しい人生を送るのは目に見えている。
何とかしないと……しかし……良い方法は見つからない。
今日も折角の休みを部屋でボーッとしている。
仕方なくベランダの植物に話しかけようとした時、空から何か降ってきた。
『ドシャ〜ン!バキバキ、バサバサ』
「何だ???」
見ると女の子の様だ。
「ええ!!!」
「いてて……」起き上がってこっちを見た。
背中に翼がある。
「えっ?天使???」
「ちょっとだけかくまってよ」
「えっ?」
「だから小悪魔に追われてんのよ」
「はい?」
「いいからかくまって!」
とりあえず中に入れて俺の部屋に案内した。
窓を閉めてカーテンも閉めた。
1時間ほど経つと落ち着いてきた。
「ふー……どうやら諦めたようね」天使らしき女の子は微笑んだ。
白いレースの様な衣は透けていて裸が見えている。
綺麗な形の良いおっぱいが見えている。
下の方は恥ずかしくて見る事が出来ない。
「あのう……もしかして……天使さんですか?」
「第二航空警備隊二等天使のニーナちゃん、よろしくね」笑った。
「警備隊???二等天使???」意味がわからない。
「だから私は空の境界線を警備してたわけ、そしたら小悪魔のヤツがいきなり後ろから攻撃してきやがった」
「ほら、翼を怪我したから上手く飛べなくなったのよ」
「そうですか……って全然理解できませんけど???」
「いいよ理解しなくっても、ただ一週間程かくまってくれたらそれで良いから」
「はい……」俺に選択権はなさそうだ。
「お腹すいたなあ」
「えっ、天使もお腹空くんですか?」
「人間界にいるときは何故だか空くんだよ」
「そうなんですか……カップ麺くらいなら直ぐに出来ますけど」
「それでいいよ」
「美味しいなこれ、どこの会社の?」
「会社名で分かるんですか?」
「ううん、分かんない、えへへ」可愛い笑顔だ。
「その格好だと目のやり場に困るんで、何か着てもらえませんか?」
「別に私は気にしないけど」
「いえ、俺が気にします」
「そう……」
とりあえず自分のTシャツを渡した。すると翼はシュッと消えて背中に小さな羽の絵になった。
「へ〜……」そうなるんだ。
ダボっとしたTシャツは肩が見えたり、ミニスカートのようになって逆に艶かしくなってしまった。
「これで人間と区別がつかないよね?」
「ですね……」
それから一週間二人で暮らした。
髪は白く肌も透き通るように綺麗だ。
顔は堀が深くとても美人だ、まるで天使の様だと思った???いや天使様そのものなのだ。
「ありがとう、お陰で回復できたわ」
「そうですか、よかったですね」
「お礼に何か一つ願いを叶えてあげるから言ってよ」
「えっ……願い事ですか?」
「うん」
「じゃあ……童貞を捨てたいです!って無理ですよね」笑った。
「うーん……この後の人生を見てみたけど……君は一生童貞だなあ……」
「ええ……やっぱりそうなんですね」俺はガックリと肩を落とした。
「可哀想だから童貞を捨てさせてあげる、ベッドにおいで」
「ええ!!……ああああああああああああああ……」
「じゃあ残りの人生頑張ってね」
天使様は空へと帰って行った。
俺は口をポカーンと開けて見送った。
翌日クラスに天使そっくりの転校生がやってきた。
俺を見て微笑んだ。
隣の席が空いていたので、横に座った。
「元気だった?」
「えっ???」
「実は人間とHした事が神様にバレちゃったのよ」
「はい?」
「何でバレたのかなあ……」
「バレたらどうなるんですか?」
「その人間が死ぬまで一緒に居なきゃいけないのよ」
「そうなんですか?」
「うん、そうだよ」
「と……言うことは……ずっと一生俺のそばにいてくれると言うことですか?」
「そうなるね」微笑んだ。
俺は一瞬喜んだ。
「でも、一生連れ添うなんて大変じゃないですか?」
「私は人間の寿命みたいに短くないからほんの2・3日位の感覚だけどね」
「そうなんですか?」
「うん」
なんか軽いなあと思ったが、結果嬉しくなった。
クラスの男たちはみんな天使を見るような目でニーナを見た……そりゃそうだ。
クラスのイケメン達が必死に口説いたが「私は蒼羽さん以外は興味ありません」と言い切ったので、俺は一挙に注目の的となった。
しかもイトコという戸籍の設定になっていて一緒に暮らすことになっている、神業か!。
それから毎日同じベッドで寝た。
「子供はダメよ、子供ができると子供の一生まで付き合わなきゃいけないのよ」
「はい、子供はいなくても良いです、ニーナちゃんがいてくれたらそれで幸せです。
二人は大恋愛をスタートさせた。
しかし、人間社会の現実は厳しい。
ある日バイトに行こうとしたら、ニーナが「あの宝くじを買いなよ」と言ったので買ってみた。
前後賞合わせて3億円入ってきた。
「ええ!!!天使と付き合うとこんな事になるの?」
「えへへ……これでバイトに行かなくても一緒にいれるね」微笑んだ。
「ニーナ!!!」俺は彼女の待つベッドにダイブした。
マンションを買って二人で移り住んだ。
幸せなので頑張りたくなった。
「ニーナがこの会社の株を買ったら」と言ったのでゲーム会社の株を買ってみた。
すると、ワンマン社長が急に亡くなって社長になってしまった。
「ニーナが、この人とこの人に任せたら」と言ったので異例の人事をして任せてみた。
ゲームは次々にヒットした。
世界的なゲーム会社になった。
沢山のお金が入ってきたので、貧しい国に学校や病院を立てた。
世界中を二人で飛び回った。
とんとん拍子ってこういう事を言うんだと思った。
世界的な雑誌にも取り上げられたり、ノーメル賞の候補にもなった。
二人の幸せを出来るだけみんなに分けて手渡した。
充実した人生を送った。
やがて俺は歳をとった。
「あなた、そろそろお迎えよ」
「ありがとう、君のおかげで俺は最高の人生だったよ」
「私も幸せだったわ」
ニーナに最後のキスをすると、彼女の背中に翼がフワッと出てきた。
俺はニーナに抱きしめられ天国へ向かった。
「パパ、この子は幸せだったの?まだ18歳なのよ……それなのに天国へ行くなんて……」
「勿論さ、みてごらんとても満足そうな顔をしてるよ」
「そうね……でも病気ばかりしてて、ほとんど学校にも行けなかったし……」
「でも、とっても優しくて良い子だったよ」
「うん………」
「俺たちは蒼羽がいたお陰で沢山の幸せと思い出を作る事ができた」
「そうね……」
「俺たちにとって蒼羽は飛べない天使だったんだよ」
簡単に読める短い物を書いてみました。
コネタ・コネクションとして、続けて行きたいと思っています。
よろしくお願いします。




