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共同墓地の駐車場に着いたコウは、ポツンと停めてあった大型ミニバンの助手席に乗り込んだ。運転席に座っているレイは膝にノート端末を乗せて、恐ろしい速さでキーボードを操作していた。
「戻ったぞ、おっさん。つか、おっさんも来ればよかったのに」
レイはノート端末を閉じて小さく息を吐いた。
「死人に興味は無い。ましてや奴らはただのテロリスト集団だ」
「金かけて埋葬してやったくせに。どうせエミカに顔合わせ辛かったとか、そんなだろ」
「……先週分の金、振り込んでおいたぞ」
レイは顔を背けながら言った。コウはそれ以上何も言わず、スマートフォンを取り出して自分の口座をチェックする。
「……あれ? 何か振込金額多くね? この金どっから出てきた」
「あぁ、ついさっき飛び込みの依頼があってな。その分の金だ」
コウの疑問にレイは淡々とした口調で依頼内容を告げた。その内容にコウは唖然とした表情でレイを見つめた。
「そんなことやっていいのか? 事務所の信用大丈夫かよ」
コウの言葉に、レイは鼻を鳴らす。
「電話でやり取りしただけだ。記録には残していない。それに元々情報は俺が自分で調べ上げたものだ。それを偶然買いたいという相手が現れたから、俺は快く売ってやっただけだ」
「いくらで売ったの?」
「八百万」
その言葉を聞いて、コウは呆れたように首を振った。その額はクリスの首にかかっていた賞金と同額だった。
「やっぱ、おっさん悪党だわ」
コウの言葉に、レイは口元をニヤリと歪ませる。
「回収できるところから回収するのが俺のポリシーだ」
「まさかエミカの依頼の金も回収するとか言い出さないだろうな?」
「振込金額をよく見ろ」
レイが涼しい顔でそう言った。コウは一瞬考え、それから慌てた様子で口座を確認する。そして依頼金から自分の取り分を計算すると、確かにきっちり百万円差し引かれていた。
「……いや確かに俺が立て替えるって言ったけどさ」
コウは呆れた眼差しをレイに向けた。
「そういうことだ」
レイはエンジンをかけ、車を発進させた。
コウは不貞腐れた顔で窓の外を見る。そしてうんざりするほどの快晴にコウは大きくため息を吐いた。




