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Lawless Hunter  作者: 佐久謙一
第零章 D・P・ダブルダウン
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 賞金首制度――バウンティ法。

 この時代錯誤な法案が設立された時、世界各国は驚きに包まれた。

 その当時、世界は平静を装いつつも、経済全体の後退は目に見えて明らかだった。具体的な改善策も見つからず、徐々に後退していく景気。そしてそれに比例するように、反社会勢力の活性化と治安の悪化。もはや、既存の法や、警察組織の力では収集しきれなくなっていたのだ。

 それに業を煮やした当時の米国大統領は、犯罪者に対抗するために大胆な政策に打って出た。

 まず現在逃走中の犯罪者全員に莫大な懸賞金を懸け、そして国より認可を受けた賞金稼ぎ――通称ハンターの優遇措置を決定した。それは銃の携行は勿論のこと、賞金首を捕らえる上での、ありとあらゆる暴力行為が許される『法の外の存在』にしてしまうというものだった。

 このとんでもない政策は米国内のみならず、世界中からのバッシングを受けることになった。

 しかし、この法案の効果は絶大だった。

 何もしてもよい、という莫大な力を与えられたハンター達は、次々と犯罪者達を血祭りにあげていった。その勢いは誰にも止められず、裏の人間がハンターに鞍替えし、身内を売るといった事態も起こり、裏社会の秩序がボロボロに破壊されることになった。

 始めは批判一辺倒だった各国も、その絶大な効果に感嘆し、自国でも同様のバウンティ法を成立させていくことになった。

 これは日本でも例外ではなかった。

 海外マフィアの進出や、経済や宗教を理由としたテロリストの増加。もはや現行法では対処出来ないほどに国内は凶悪犯罪者で溢れていた。

 日々増え続ける犯罪者達に頭を抱えた当時の総理大臣は、ついに日本でもバウンティ法の成立を決定。かくして、銃と殺しのライセンスを持ったハンターが、日本でも誕生することになったのだ。



『――我々ハンターはあなたの未来に幸福を届けます。ハンター事務所、アルストロメリア』

 信号待ちで停車した車内から、コウは街頭テレビに映るハンター事務所のコマーシャルをぼんやりと眺めていた。時刻は二十三時を回ろうかとしていたが、いまだ多くの人々が横断歩道を行き交っている。人種も、白人に黒人、アジア系にインド系と多種多様。今では日本も立派な多民族国家だ。

 その集団の中に、『賞金首制度反対!』『人権無視のバウンティ法を許すな!』等の垂れ幕やプラカードを持った集団がいた。

 日本でバウンティ法が成立されてから早十年。幾度もの法改正や、都道府県ごとの独自法が誕生するなど、法律そのものが全く安定していない状態だ。

 まず日本においては装備品に制限が課せられている。銃器として持ち歩けるのは拳銃と小銃――要はピストルとライフルのみだ。口径、カスタマイズは自由だが、フルオート改造は禁止されている。非致死性の武器やグレネードに関しては特に制限はない。

 賞金稼ぎと言えばフリーランスのイメージが強いが、街頭テレビに映っているコマーシャルのように、多くのハンター達は事務所登録をし、そこの従業員として活動を行っている。いわば会社員のようなものだ。かくいうコウも、立場的にはレイの事務所の従業員である。一般的にハンター事務所は賞金首を捕らえること以外にも、市民からの依頼の解決やボランティア活動等も積極的に行っており、そうして日本社会に徐々に溶け込んできている。

 しかし警察組織以外の銃の解禁には、今なお市民の反対が強い。

「もし明日にでも、市長なり知事なりが、この町でバウンティ法は不履行~なんてほざいたら、その瞬間に俺達無職になるのかね」

「少なくとも安定性を求める職場ではないな。県をまたぐとルールが変わるのも、どうにかしてほしいものだ」

「田舎の方だと銃の類が使用禁止なんだっけ? やり辛いな」

「その代わり日本刀を振り回しているがな」

 そんなことを話していると、車の左手――助手席側にぴったりくっつけるように、一台の黒いバンが停車した。スモークガラスで内部は見えない。

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