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Lawless Hunter  作者: 佐久謙一
第一章 親愛なる依頼人
16/52

1-8

「たっ、たっ……!」

「ちなみに前金で百万ね。成功報酬でさらに百万円の合計二百万円。依頼内容により増減するけどな。人探し程度なら半額でも大丈夫だ。前金と成功報酬五十万ずつの合計百万円」

「そ、それでも高いですよ。そんなお金払えません!」

「元々お前が払えるとも思っていない」

 レイが冷ややかに言う。エミカはぐっと言葉に詰まる。

「名刺を渡して勝手に期待させたのもある。だから最低限の情報は渡してやる。あとは警察でも頼るんだな」

 そこまで言って、レイはすっと目を細める。

「そもそもお前、薄々気付いていたんじゃないのか? だから警察ではなく、ハンターの元に来た。薬物常用者であることがばれてしまえば無事では済まないからな。だが、ドラッグを舐めるな。周りの説得や本人の気合だけで断ち切れるものじゃない。専門の治療を施しても後遺症は一生付きまとう」

 レイの言葉に、エミカは思わず視線を逸らす。沈黙したまま手元のボトルを見つめている。レイは構わず言葉を続ける。

「そのマリアという女のことを思うなら、問答無用で病院に放り込め。そうすれば命は助かるだろう。もうこの先、まともな学生生活は送れないだろうがな」

 エミカの肩が震える。顔を上げ、すがるような眼でコウを見つめてくるが、コウはかける言葉を思いつけなかった。

「そ、それじゃあ……!」

 エミカはきっとレイを睨みつけると、口早にまくしたてる。

「マリアをそんな目に合わせた奴らを捕まえてよ! そのドラッグを売ってる奴らを!」

「金はあるのか?」

「……無い、ですけど、でも――」

「支払いは現金しか受け付けていない。依頼金をこの場で用意できないのなら話にならんな」

「犯罪者を捕まえるのがあなた達の仕事なんでしょ!?」

「違う。首に賞金がかかった奴らを金に換えるのが俺達の仕事だ。金にならないのなら犯罪者だろうと用はない」

「それじゃあ――」

 エミカはなおもレイを睨みながら吐き捨てるように言った。

「私が襲われていた時も、お金にならなかったら見捨てていたんですか?」

「その通りだ」

「おっさん、ちょっとシャラップ」

 コウは睨み合うレイとエミカの間に割って入る。両者の視線を一身に受けつつ、ジャケットの内ポケットから革の財布を取り出すと、テーブルに軽く叩きつけた。

「金は俺が立て替える。依頼も俺が遂行する。これで文句は無いよな、おっさん? 元々そういう話だったろ?」

 コウの言葉を聞いて、エミカの表情が、ぱあっと明るくなる。その反面、レイは怒りと呆れを混ぜ合わせた様な形相になっている。

「またいつものおせっかいか」

「俺はおっさんと違って、感情がショートしてねえから、何でもかんでも損得勘定で動ける質じゃないんだよ」

 コウは肩をすくめながらそう言った。レイは呆れたように首を振る。

「依頼はドラッグを売る奴への対処だったか? どう決着をつけるつもりだ?」

「そこは実際に調べてから考えるつもりだけど――まぁ、なんとかなるだろ」

 コウのぼんやりとした目標に、レイはため息を吐いた。

「あ、私、そのドラッグを売ってる組織には心当たりあるんです!」

 突然、エミカが軽く手を上げながら発言する。コウは驚いた様子で、エミカを見る。

「え、本当に?」

「はい。というのも、マリアはそこに通うようになってから、おかしくなったので、多分間違いないはずです!」

「どっかのクラブとか?」

 コウの問いにエミカはぶんぶんと首を横に振る。そしてはっきりとした口調で場所の名前を告げた。


「真愛会というところです!」


 その名を聞いた途端、コウとレイは驚愕の表情を浮かべ、互いに視線を交わす。そして二人そろって押し倒しそうな勢いでエミカに詰め寄った。

「……え、何……?」

 突然二人に迫られ、エミカは困惑の表情を浮かべた。

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