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 シモーヌとミレーユ、そしてミレーユの両親であるラコスト伯爵夫妻で、離婚に向けての話し合いが行われた。


 離縁するに当たって、ユージオとの面会は今後もしたくないとのミレーユの意見を聞き入れ、代わりにシモーヌは書類を差し出した。


 やはり生まれて来る子供の事を思い、既に離縁のための書類は用意し、持ってきていたとは。


 書類にサインをし、ペンを置くと信じられないほど心が軽くなった気がした。


(結婚する時は神の前で誓ったのに、こんな紙切れ一枚で婚姻は破棄されるのね……)


 もっと離縁は悲しいものだと思っていた。もう既にここに来るまでに、夫への愛情は枯れてしまったのか、晴れ晴れとした気分に自分自身も驚いていた。


 後はユージオがサインをし、書類を提出して受理されれば離婚が成立する。



 **


 あれから貴族界では子爵家の者や伯爵夫人など、数人が立て続けに毒薬による殺人罪の容疑で捕まり、世間を震撼させていた。

 それらがサイラスやオズイン達の働きによるものだと、ミレーユは理解している。


 そして数日も経たないうちに、サイラスが再びラコスト家を訪れた。


「ミレーユ、元気にしてた?」

「ご機嫌ようサイラス殿下。すぐにお茶に致し……」


 言い切る前にサイラスに手を取られ、甲に口付けられる。

 驚いて固まっているミレーユに対し、サイラスは手を更に強く握ったまま離そうとしなかった。


「サイラス殿下!?」

「会いたかった」


 熱のこもった瞳で見つめられ、戸惑うしか出来ないミレーユは、慌てて侍女にお茶の用意を指示した。


 春の花々に囲まれた庭園にある東屋。そこに用意されたお茶と、焼き菓子を前にミレーユはサイラスに世間で話題となっている事件について尋ねる事にした。


「少しずつ、毒薬の件で捕まった方が出てきましたね。これでこの国に平穏が訪れる事を願います。陛下やサイラス殿下、オズイン様に感謝しないと」


 途端サイラスがくすりと笑うから、ミレーユは小首を傾げた。


「折角会えたのに、甘い会話や色気のあるやり取りではなく、早々に物騒な話題だね」


「ご、ごめんなさい……」


 サイラスは先日長きに及ぶ秘めた想いを告げてくれた相手だが、ミレーユは恋愛という分野に頗る疎かった。


「嘘だよ、甘い時間は後にとって置くつもりだったから。俺も先にこの件に触れようと思っていたから、謝らないで。可愛い反応が見たいからと、からかってしまった、ごめん」


 伸びてきたサイラスのしなやかな手が、ミレーユを捉えて髪や頬に触れる。

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