選択
シモーヌは溜息を吐き、額を押さえてポツリと零した。
「折角の初めての子供が、私生児になるかもしれないなんて……」
そんな義母の言葉を聞いてミレーユはハッとして意味を察してしまった。
例えユージオの子であり、エルランジェ家の血を引いていたとしても、愛人との間に出来た子は跡取りとは認められず私生児となる。
「お義母様、私は十六歳でエルランジェ家へと嫁いで、もう少しで十九歳となります。ですが未だに子は授かる気配がありません」
誰にも言えず、その事を口にする事は今まで躊躇っていた。そして可能性は常に自分の中にあり、ようやくミレーユは覚悟を決めた。
「私はもしかしたら不妊かもしれません。ユージオが他の女性との間に子供が出来たのなら、きっと原因は私にあるのでしょう」
「ミレーユ……」
今でこそ閨を共にする事がなくなり、ミレーユが身籠る可能性はなくなった。それでも結婚してから一年以上は、それなりに夜の営みはあった。
結局、閨を拒否された理由が何だったのか分からない。聞いても教えてくれなかったから。
マデリーンという最愛の人と出会ったからなのか、マデリーンの存在を抜きにしてもミレーユの事を、疎ましく思っていたのか。
それとも中々身籠もらないミレーユに、嫌気が差したのか──
「役立たずな嫁で申し訳御座いませんでした」
ミレーユは目の前のシモーヌに対し、深々と頭を下げた。
自分さえいなければ、ユージオはマデリーンと結婚することが出来る。そして生まれて来る赤子は、正式にエルランジェの家名を名乗れるのだ。全てを丸く収めるには、これがきっと最善なのだろう。




