第6話 快楽
異世界に行くのって案外簡単なんだな。第6話です。
多少過激な表現があるのでご注意下さい。
「心様こちらがお使い頂く倉庫になります」
案内された倉庫を見て心は、仰天した。
「でか…」
もはや倉庫と言うよりドームだった。
「心様 それでは私はこれで」
そう言い残すと早々と案内してくれた部下の方は帰っていった。
心は、早速倉庫の中に入った。
「まぁこの倉庫いっぱいに食料置いとけば国王も満足するだろう」
「一応欲しい食料のリスト貰ったけど全部知っている物でよかった」
「早速始めるか」
そう言って作業を始めようとした時心は、ある事を思いついた。
「もしかして超作成って数の指定とか出来るのかな」
「バーラッキ村の時は一個ずつ出したから時間かかったんだよな」
「よし試しにやっみるか」
「最初は…パンを想像して個数を1000個」
「よし 作成」
「やった成功だ」
面白くなった心は、あれよあれよと作成し、物の一時間ほどで
倉庫がいっぱいになった。
「これで終わりだな」
「国王様に報告しなきゃ」
心は、国王様への報告の為倉庫の外に出た。
その時、神殿の方から何か声が聞こえた。
心は気になってその声のする方向に向かってみる事にした。
「ここかな…」
少しだけ空いていたドアの隙間から部屋の中を覗いてみた。
するとそこには、国王様と娘のカミル様がいたのだ。
「何してるんだろ」
心はもう一度部屋の中を覗いてみた。
覗いた瞬間心は、怒りが爆破しそうになったのだ。
国王様は娘のカミル様に酷い暴力を振るていたのだ。
泣いて詫びるカミル様を国王様は、さらに酷く暴力を振るった。
心の怒りが頂点に達した。
部屋のドアを蹴り開けて、部屋にあった火かき棒を手に取り後ろから国王様の足を刺した。
いきなりの襲撃に国王様は、言葉が出ない様だった。
「国王様あなたは、死んだ方がいい」
「だから私が殺して差し上げます」
「でも楽に死ねると思わないでくださいね」
「あなたがカミル様にやっていた様に私は国王様を存分に痛ぶって殺しますので」
心はまず部屋にあったタオルで国王様の口を塞いだ。
次に国王様がカミル様にやった様にひたすら国王様を殴り蹴飛ばした。
それでも怒りの収まらない心は、火かき棒を国王様の足から引き抜きそれを今度は国王様の目を目掛けて突き刺した。
余りの光景にカミル様は、一歩たりとも身動きをしなかった。
いや出来なかったのだ。
なにせ心は気づいていないが国王様を痛ぶっている時の心の表情は常に笑顔なのだから他の人からすると正気の沙汰とは思えない光景なのだ。
「国王様一応報告しときますね」
「食料不足解決しましたよ」
「それとなんか周りをこそこそ嗅ぎ回っていた国王様の部下、国王様が約束を破った罰として殺して焼却炉に入れておいたので安心して下さい」
そう話す心の表情はまたしても笑顔だった。
「じゃそろそろ終わりしましょう」
「あっそうだ国王様殺した後私が新国王になるので悪しからず」
「それとカミル様は私のお嫁になって貰う予定なので心配事は何も無いですよ」
そう言うと心は、ズボンの後ろに隠して持っていた銃で国王様の頭を撃ち抜きトドメをさした。
正気に戻った心は、カミル様に話しかけた。
「大丈夫ですか」
その言葉に軽く頷いた。
「貴方は、さっきすれ違った…」
「心です」
「憂鬱 心と申します」
「カミル様ですね」
「何故私の名を」
「さっきすれ違った時、国王様の部下から聞きました」
そう挨拶すると、話を続けた。
「ごめんなさい国王様殺しちゃいました」
するとカミル様は、にこやかな笑顔でこういった。
「殺してくれてありがとう」
その予想外の言葉に心は面を食らった。
「とりあえず国王様の遺体処分しなきゃね」
心は、国王様の遺体を部屋にあった毛布で包み焼却炉に放り込んだ。
そしてそれから数分後お城の中で国王様が居ないと大騒ぎになっていた。
もちろん死んでいるので見つかるはずも無く夜が明けようとしていた。
心はカミル様の指示でお城の中の一室に泊まる事になった。
寝室に入ると、その日の疲れのせいだろうか、倒れ込む様に眠りについてしまった。
昼が過ぎた頃だろうか、心は、目を覚ました。
昨日の出来事などまるで嘘のように冷静な自分に少し驚きつつもこれと言っていつもと変わりない寝起きに思えた。
しばらくすると扉を叩く音がした。
「心様 起きていらしゃいますでしょうか」
カミル様の声だ。
「はい 起きてますよ」
「中へどうぞ」
静に扉を開けてカミル様が部屋へ入る。
入るや否や早速本題を切り出した。
「心様 昨日言っていた新国王になると言うのは本気なのでしょうか」
一瞬何の事かわからなかったが直ぐに思い出した。
昨日は、余りの興奮に凄い事色々言ってる事も思い出して赤面した。
「確かに昨日そんな事を言いましたね…」
少し沈黙した後答えた。
「本気ですよ」
「この国は、腐っている」
「理不尽な物が世界を楽しみ幸福であるべき人がひもじい生活をしている」
「そんな世界は間違っていると私は思うのです」
カミル様は、無言で相槌を打った。
「それに、昨日はカミル様に対する国王様の行動に物凄く怒りを抑えきれなくなってしまい気付いた時にはもう…」
カミル様が優しく微笑みながら心に言った。
「大丈夫ですよ」
「昨日も言ったでしょう、殺してくれてありがとうと」
「お父様、国王様は、小さい頃から私の事を嫌っていたのです」
「それは、恐らく私のお母様つまりは、国王の妻に私がそっくりだからでは無いのかと思っています」
「母は私が物心ついた頃にはもう居ませんでした。」
「後から聞いたのですがどうやら母が父を殺そうとして逆に殺されてしまったみたいなのです」
「何でお母様は国王様を殺そうとしたのですか」
心が質問する。
「心様もご存知の通り今は深刻な食料不足ですよね」
「そうですね」
「実は食料不足は数年一度この国で起こる事で今年だけが特別不足してるわけでは無いのです」
「そしてお父様は、その数年に一度来る食料不足に備えて盗賊を極秘で雇いこの国の小さな町や村から食料を強奪させていたの」
「それを知ったお母様は、それが許せなくてたぶん殺そうと…」
「なるほど」
これで合点が行った。
バーラッキ村の事が何故あんなに速く広まったのか、国王様が雇っていたから何だと。
「なのでお母様に似ている私を毛嫌いして暴力を振るていたのだと思います」
「そんなのただの八つ当たりじゃないか」
「まぁそうなのですが」
「カミル様は、殺してくれてありがとうとおしゃいましたがそれは母の仇をうてたからと言う事なのでしょうか」
「それもありますが、もっと単純な話です」
「と言いますと」
「私も殺したかったのです」
「醜い物は、いつまでも醜い物です」
「なのでお父様は、いつまで経っても醜いままでしょ」
「だから殺してあげた方がお父様のためだとおもっていたの」
「だけどここは一応王宮でしょ」
「兵士や召使いは皆んなお父様の味方だからチャンスが無くて…」
「だから心様が殺してくれて正直助かったの」
「でもここからが大変よ」
「国王亡き今私が次の国王なのよ」
「私以外に身内は居ないから」
「て事はカミル様が王位継承権1位て事」
「左様でございます」
「なるほど」
「先程言った通り王宮の兵士や召使いは皆んなお父様の派閥なの」
「だからその人達が恐らく何かしらので工作をして私をを国王にしない様にヤジを入れてくると思うの」
「確かにそうだね」
「そこで、最初の話に戻るのだけど」
「私は正直国王なんてめんどくさいから嫌なの」
「でも他の人が国王になったらお父様の教えを濃く引き継いでいるからこの国は、何も変わらないと思うの」
「それで考えたの」
「まず私が新国王になる」
「そして国王になると国王権が一回だけ使えるの」
「国王権?」
「新たに国王になった者は一回だけ何でも好きな事が出来る権利よ」
「なるほど」
「カミル様が新国王になった瞬間、国王権を使い俺を新国王にすると言う事か」
「その通りで御座います」
「ちなみにお父様が国王権で命令したのは、お父様の悪事に罰則を設けない事」
「つまり何でもやりたい放題しても何も罰せられないて事」
「それで国王様が盗賊なんて雇ってても誰も何も言わなかったのか」
「その通りです」
「どこまでも腐った野郎だな」
「返す言葉も御座いません」
「あ、いや、カミル様に言ったんじゃ無いですから気にしないで下さい」
「ありがとうございます」
ゆっくりとした口調でカミル様がそう言うとしばらく沈黙が続き再び口を開いた。
「心様 どうか私に力をお貸し願いないでしょうか」
そうカミル様が言うと心は考える事なく返事をした。
「もちろんです」
「ありがとうございます」
「では早速なのですがお願いがあります」
「何なりと」
次の瞬間カミル様の言葉に驚愕した。
「心様、この王宮の人全てを殺して下さい」
それは、冗談では無い今までに無いぐらいの真剣な表情だった。
心は、その真剣な表情に対する様な不吉な笑みを浮かべながらカミル様に答えた。
「喜んで」
そう、心は前世界では、感じた事も無かった新たな感情に目覚めてしまっていたのだ。
人の命をこの手で決められる殺しと言う快楽を。
ご覧頂きありがとうございました。