第5話 王都
異世界の行くのって案外簡単なんだな。第5話です。
読んでくれたら嬉しい。
王都トッテを目指して走り出した心は、バーラッキ村での事を思い出していた。
「初めて人を殺した…」
「なのに何故だろ罪悪感も何も感じなかった」
「俺はおかしくなってしまったのか」
「前の世界なら人を殺すなんて事絶対にしないのに」
「盗賊を殺す時もなんの躊躇も無く引き金を引けたし」
「まぁ起きた事を考えてもしょうがない」
「もうすぐ王都に着きそうだし気持ちを切り替えよう」
そんな事を考えているとすぐ先に、王都トッテが見えてきた。
その大きさに圧巻された。
王都を囲む様に建てられた背の高い壁。
入り口には、大きな鉄格子。
漫画やアニメでよく見る様ないかにも王都と言う感じの佇まいだ。
王都の中に入るには、門番の許可が必要な様だった。
「あのーすみません」
「中に入りたいのですが…」
そう言うと門番の一人が口を開いた。
「王都に何の用だ」
心が答える。
「旅をしているのでその足安めに宿に泊まりたくて」
門番がさらに質問する。
「名前はなんだ」
「憂鬱 心と申します」
「お前の横にあるその鉄の馬みたいのはなんだ」
またこの質問だ。
「これは、バイクと言って走る鉄だと思って頂ければ大丈夫です」
門番は少し困った顔をしたがすぐに元の表情に戻った。
「ちょっと待っていてもらえるか」
門番は、そう言うと門の奥に消えていった。
しばらくするとさっきの門番が戻ってきた。
「憂鬱 心殿国王陛下がお呼びです」
「どうぞ中へお入り下さい」
「えっ 何で国王様が俺のこと呼んでるのですか?」
「それについては国王様からお話がありますので」
心は、さっぱり訳がわからないまま言われるがままとりあえず門番に着いて行った。
門番に着いて行くといかにも王様が住んでそうなお城が目の前に現れた。
中に入るととても煌びやかな内装で、バーラッキ村にいた時には想像すら出来ない豪華さだ。
そうこうしている内にとても大きな扉の前に着いた。
「中で国王様がお待ちです」
その言葉と同時に大きな扉が開いた。
赤い長いカーペットのその先に国王様扉思われる人が座してこちらを見つめている。
心はゆっくりと部屋に入り国王様の前に跪いた。
「憂鬱 心殿よく来てくれた」
国王様の前で無礼だとは、思ったが咄嗟に口を開いてしまった。
「国王様何故私が呼ばれたのでしょうか」
挨拶も早々いきなり本題を突かれた国王様は、少し驚いた表情をしたが、再び喋り始めた。
「先日のバーラッキ村の一件を噂で聞いての」
「鉄の馬に乗り、摩訶不思議な武器で盗賊を瞬殺したと」
正直舐めていた。
そんな小さな村事なんて噂にすらならないと思っていたからだ
電話も無いよなこの世界だからこそ風の噂のスピードが前の世界より格段に早いのかも知れない。
「それでその一件と私が呼び出された関係は、なんなのでしょうか?」
「簡単な事じゃ」
「君が使ったその摩訶不思議な武器について教えて欲しいのだ」
「それと走る鉄の馬とやらもな」
これは困った事になった。
説明をした所でたぶん理解できないだろうし、何より自分の特殊能力超作成が国王様にバレると余りいい事にはならなさそうだと瞬時に思った。
さらにそれらがバレると自分が異世界移動者だとわかってしまう。
頭をフルに回転させて抜け道を探したが上手い考えは、浮かばなかった。
しばらく沈黙していると国王様が口を開いた。
「言いたくないのかのう」
「無理には聞かんが一つだけ教えてくれるかの」
「何でしょうか」
「今この国は、深刻な食料不足なのだ」
「バーラッキ村の食料不足も心殿がどうにかしたと聞いておるが、我が地トッテの食料不足も解決する事は、可能であろうか」
少し考えて答えた。
「可能です」
「ですがそれをするには条件があります」
「条件か」
「言ってみなさい」
「まず食料調達の作業を見せるわけにはいけません」
「次に沢山食料が置けて誰にも見られない場所の貸し出し」
「最後に自分に関しての散策はしない」
「これらをお守り頂けるのであれば食料不足の件どうにか致しましょう」
国王様は、考える様子も無く答えた。
「よかろうそれで食料不足が解消されるなら」
「食料が置けて、誰にも見られない場所だが神殿の敷地内にある倉庫を使うといい」
「部下に後で案内させる」
「無論倉庫近くに誰も近づかない様に皆に伝えておくので安心して使ってくれ」
「わかりました」
「では、早速ですまないが取り掛かってくれ」
心は、国王様に軽くお辞儀をして部屋を出た。
部屋を出ると直ぐに国王様の部下が倉庫に案内してくれた。
倉庫へ向かう途中、前からとても綺麗な銀色の髪をした少女とすれ違った。
「今の子、凄く可愛いな思わず口に出してしまった」
その独り言が聞こえたのか国王様の部下の人が喋り始めた。
「今のお方は、国王様の娘様でカミル様です」
「カミル様か…」
心は、そのすれ違い様の一瞬でカミル様の虜になってしたのだった。
一方その頃国王様は、何やら不穏な動きをしていた。
「あの心とやらの素性何としてでも探ってこい」
先程の約束は、物の5分として守られる事はなかったのである。
この事を知らない心は、この先何が起きるかなど知るよしもなかった。
ご覧頂きありがとうございました。