第4話 救い
異世界に行くのって案外簡単なんだな。第4話です。
暇潰しにでもどうぞ見ていって下さい。
心にしがみついたままのバーラッキを落ち着かせ話しに戻った。
「とりあえず盗賊を退治したい所ですが、その前に村の立て直しが先かな」
そう言った心の言葉に、バーラッキが無言で頷いた。
「まず村の皆さんの食料を用意するので少し時間を下さい」
バーラッキが勢いよく立ち上がり心の顔を凝視しながら真剣な顔で言った。
「村をどうかお救い下さい」
その感情に親近感を覚えた心は、力強く頷き一旦村を後にした。
「さてまずは食料を用意しなきゃな」
そう呟くと村の外の人気の無い場所まで行く事にした。
超作成を使う所を見られると色々厄介な事になりそうな気がしたからだ。
「ここまで来れば大丈夫かな」
「じゃとりあえず食料を作成したいがこの世界の人は何を食べているんだろう」
「聞いておけばよかった」
そんな不安を抱えつつも無難そうな食べ物をいくつか作成してみた。
「パン、卵、お肉、お米、じゃがいも…」
「こんだけあればしばらく大丈夫そうだな」
「あっ!確かあの村には、水も無さそうだったな」
「水も作成してっと…これでよし!」
一通り作成が終わると、大量の食料と水を超作成で作成した
荷車に乗せて村に戻った。
「バーラッキさん戻りました」
その声に反応して村人の殆どの人が心の元に集まってきた。
心の持ってきた大量の食料と水に村人は驚きを隠せない表情だ。
その様子を見たバーラッキが心に尋ねる。
「心君一体何処からこんな大量の食料を」
「申し訳ないがそれは言えない」
「そうか。」
「何か訳があるんだろからこれ以上の散策はよしとくよ」
「村の救世主なのだから」
そう話すと、とてもにこやかな顔でお礼を言った。
「ありがとう。心君」
その時いきなり悲鳴が聞こえた。
とっさに悲鳴の方を見ると、盗賊と思われるいかにも悪そうな連中どもが村に入ろうとしていた。
「心君あれが、この前襲ってきた盗賊なんだ」
さっきまで笑顔に満ち溢れていた村人が恐怖に歪んだ顔になっていた。
盗賊の数は大体10人ほどで武器は古びた剣の様な物。
盗賊の一人が雄叫びを上げると盗賊が一斉に走り始めた。
その瞬間凄まじい音が周りに響いた。
「バン、バン、バン」
心は、一瞬で、盗賊3人の頭を撃ち抜いた。
前世界で警察官だった心は、拳銃の腕がとても優秀だった。
始めて聞く銃声の大きさと、一瞬で3人が死んだ驚きで、盗賊たちは、一斉に静かになった。
「聞け盗賊ども、今この場に跪き命乞いをするなら逃してやってもいい」
「抵抗する様ならお前ら全員撃ち殺す」
心の優しげな顔からは、想像もできない怒りに満ちたオーラに村人たちもかなり驚いた様子だ。
たった2,3分ぐらいだろうか、沈黙が続いた後、盗賊一人が前に出た。
「俺が盗賊の賊長だ」
「何が起きたかわからないがお前がやったのか?」
賊長が心に尋ねた。
それはそうだ。
この世界の文明状況からして、拳銃などあるはずが無いからだ。
「そうだ」
心は、静かに答えた。
賊長がさらに口を開いた
「お前は俺の部下3人殺した」
「だから俺もこの村のヤツ3人殺す」
そう賊長が言った瞬間心は、賊長の頭を撃ち抜きさらに、周りにいた残りの盗賊全員を殺した。
「心君…」
その光景を見たバーラッキは掠れた声で呟いた。
心は全員死んでいるかを確認すると、死体を一箇所に集め、燃やした。
死体の処理が終わると心が口を開いた。
「盗賊なんか逃してもいい事なんてない」
「優しさで逃した所で、また悪さをして誰かが不幸になる」
「だから全員殺した」
その言葉にバーラッキは何も言えなかった。
村は確かに盗賊のせいで壊滅仕掛けたが、盗賊は村人には、危害を加えなかった。
内心バーラッキは、そこまでやらなくてもと思ったのだ。
何よりバーラッキが1番怖かったのは、心だ。
盗賊を殺す時バーラッキは、心の顔を見ていた。
盗賊を殺す直前までは、いかにも怒りに満ちている様な表情をしていたが、殺す瞬間確かに心の顔は笑っていたのだ。
まるで殺す事を楽しんでいるかの様に。
しばらくして村人達が落ち着きを取り戻した後心が口を開いた。
「そろそろ村を出ようと思う」
「他に困っている事はないですか?」
心が言うとバーラッキは、すぐさま答えた。
「大丈夫です」
バーラッキは、恐れていた。
さっきの光景を思い出すと、鳥肌が立つ。
それとバーラッキは思った。
これ以上心に関わってはいけないのだと。
何かよくない事が起きる気がして。
「バーラッキさん次の町に行こうと思うのですが、ここから1番近い所はどこですか?」
バーラッキが答える。
「小さな村は、いくつかあるがそう遠くない所に王都のトッテがある」
「そこなら宿屋や食事屋もあるからそこを目指すいいぞ」
「そうか。ありがとうバーラッキ王都のトッテを目指す事にするよ」
「いやこちらこそ村を救ってくれてありがとう」
「トッテは、ここから馬で2日ほどで着く」
「気をつけて旅を続けてくれ」
「バーラッキありがとう」
「困った事があったらいつでも呼んでくれ」
「ああ わかった」
「それじゃ行くよ」
「またな心」
「またなバーラッキ」
別れの挨拶を済ませると心は、バイクに跨り王都トッテを目指して走り出した。
ご覧頂きありがとうございました。