第3話 超作成
異世界に行くのって案外簡単なんだな。第3話です。
暇潰しにでもなれば幸いです!
異世界に着いた心は早速何をしようか考える。
「うーん異世界に着いたのはいいけどここは、一体どこなんだろうか?」
見渡す限り一面の草原で、人気も無い。
「まずは、この辺りの散策からかな」
そう思いながら歩き出そうとした時、神様から言われた事を思い出す。
「超作成」
神様がくれた特殊能力超作成。
今までに見た物また新たに見た物を頭の中で想像しながら作成と言うとその物が作成される能力。
「さて何を作成しようかな」
「とりあえず散策に必要な物かな」
「まずは、仕事終わりの格好で異世界移動しちゃったから洋服かな」
心は頭の中で洋服を想像した。
「えーと周りは草だらけだし虫とかも居るかもしれないから長ズボンで動きやすい物で…」
色々と想像した結果頭に思い描いたのは迷彩服の上下だった。
「よしじゃあ、作成」
そう言葉にすると一瞬で目の前に迷彩服が作成された。
「わーおスゲーなこの能力」
テンションの上がった心はさらに超作成を使う。
「後必要な物は…」
「靴とバック、それから何かあった時の為の武器かな」
使い方を覚えた心は、それらの物をすぐに作成した。
「よし出来た」
作成したのは、汚れてもいいように靴はブーツ、これまた迷彩柄ぽいバック、それから、武器は拳銃と予備の弾薬。
「これでとりあえずは、いいかな」
準備を整えて出発しようとした心はすぐさま立ち止まった。
「待てよこの先どれだけの距離があるかもわからないのに俺は、歩いて行こうとしてたのか」
「流石に気が遠くなるし疲れそうだな」
そう思った心は超作成で、ある物をを作成する事に。
「想像して…作成!」
超作成を使い心の前に作成されたのは、林道や山道すら難なく走れそうなオフロードバイクだ。
「できたできた」
前世界では、バイクが大好きだった心にとっては2度と乗れないと思っていた物なのでその気分の高揚は凄まじい物である。
「今度こそ出発だ」
そう力強く腰を上げると、早々とバイクに跨り颯爽と行くあてもないまま走り出した。
走り始めてしばらく経った頃遠目に小さな村らしき場所が見えた。
それから10分ほどバイクを走らせると村の入り口と思われる所に着く。
「バーラッキ村」
そう書かれた村の看板。
見た事の無い文字なのに何故か違和感なく読めた。
「文字は読めるのか」
異世界での言語の違いは、苦労すると思っていたので少し安堵した。
「あのーすみませんどなたかいらしゃいますか?」
そう大きめの声で呼びかけると小さな荒屋の中から人が出てきた。
「誰だ」
荒屋の中から出てきた男性は、酷く怯えた様子。
心はとっさに言葉が出た。
「あの怪し者では無いのですが」
そんな言葉で怪しく無い事の証明など到底出来る訳もなく余計に村人は警戒し始めた。
「村に何の様だ」
「この村にはもう何も無い」
どうやら村人は心の事を盗賊か何かだと勘違いしている様だ。
それに感づいた心は、誤解を解く為に優しく話を切り出す。
「こんにちは、旅をしている憂鬱心と言う者です」
「道に迷ってしまってちょっとお尋ねしたいのですが…」
もちろん異世界移動してきましたなんて言える訳もないので咄嗟の嘘話しだ。
その優しげな物言いに少し警戒が解けたのかゆっくりとこちらに近づいてきた。
「何が知りたい」
村人はさっきよりは落ち着いたトーンでそう言った。
「ここはバーラッキ村というのですか?」
「そうだバーラッキとは私の名前だ」
「この国では町や村などの名前は、その村の村長や領主様又は国王様の名前がそのまま町や村の名前になる」
「そうなのですね」
「そんな常識を知らんとは呆れた」
「すみません…」
そんな会話をしているとバーラッキが心の横にある物を指差した。
「その鉄の馬見たいのはなんだ?」
心はビックリした。
まさかバイクを知らないとは。
この世界の文明は前世界とほとんど変わり無いと勝手に思い込んでいたからだ。
「えーとこれは、バイクと言いましてまぁ走る鉄だと思ってもらえればければいいかと…」
この瞬間神様が言っていた事がわかった。
文明が栄えていないこの世界では自分の能力がチート級だと言う事が。
バーラッキは、声を出すことすらままならないほどの驚きに震えていた。
しばらくすると立ち話もなんだと家の中に入れてもらえた。
「すまない余りの驚きに言葉を失った」
「心君と言ったか?君は何者なんだ」
どう答えていいのか物凄い迷った。
「えーとただの人ですよ」
その困った表情にバーラッキはそれ以上追求はしてこなかった。
話を戻そうと喋り始めようとした瞬間、家の中に誰かが入ってきた。
「お父さんお腹空いたよ」
家の中に入ってきたのは見るからに酷く痩せ細った子どもだったのだ。
「ミットすまない今は食べ物が無いんだ」
「心君すまない恥ずかしい所を見せてしまったね」
「この子は息子のミットだ」
「村は先日盗賊に襲撃され食べ物など全て奪われてしまってな」
これで最初の対応に合点がいった。
「そうなのですね」
「正直最初の一目で裕福では無いと思ってはいましたが…」
「食べる物まだ無いとは」
「そうなんだ正直このままでは村の人々は皆飢え死にしてしまう」
「だが村長の俺には何も出来る事が無くて…」
バーラッキは涙組ながらそう語ったのだ。
「国の援助などは受けられないのでしょうか?」
国の情勢などを知りたかったのでそう切り出した。
「国はこんな小さな村の事まで考えてはくれない」
「それに今は国レベルでの食料危機なんだ」
「むしろ国にとっては自分たちの様な小さな村は滅んで欲しいと思ってる」
「だから国に援助を支援したところで何も変わらないのだよ」
「なるほど…」
心の内心腑が煮えくり変えるほどの胸糞感で溢れていた。
「そう言えば国の名前てなんなんですか」
その言葉にバーラッキは驚いた。
「何を言っているんだ?」
「いくら旅をしていたって国は1つしか無いのだからヘーベルバーグに決まっているだろ」
その言葉に心は衝撃を受けた。
大体の話でも国が1つだなんて話は、聞いたことも無いからだ。
「本当に心君は何者なんだ」
バーラッキはとても不自然そうな顔で心を見つめた。
その表情に慌てた心は直ぐに話を切り出した。
「とりあえずこの村にたどり着いたのも何かの縁です」
「できる限り自分が支援しましょう」
「色々教えてくれたお礼として」
それを聞いたバーラッキは心にしがみつきなが再び涙ぐみ始めた。
「ありがとう」
その行動に心はさらに盗賊や国に対する不信感と憎しみ感が強くなった。
前世界では警察官。
平和と秩序を汚す物は誰でも許さない。
その感情が染み付いてる心にとってはこれらは、排除すべき存在だと無意識に感じているのであった。