第1章:ザキマヤ王国 第2話:ダイカとマナモ
誰か同じ設定で書いてくれませんかね。
元神様が天界に云々 みたいな
「ダイカ!!お前の取り分だ!!」
「ひい、ひい・・・。」
北東の大陸は形状として、南北に伸びいくつかの川で細かく分断されてた。
そこでは盗賊がいくつかの派閥に別れ、河川がそれぞれのテリトリーの境界線となっていた。
ゲルトン盗賊団は4人という少数精鋭ながら大陸随一の実力を持っており、
各々の姿恰好はゲルトン盗賊団を象徴する例えがたい煌びやかさを備えていた。
三つ指をそろえて平伏する。
「すみません、すみません・・・!」
「絶賛メンバー募集中だからなウチらはっ!
お前にもウチらやルートン頭領に匹敵する賊になってもらう!!」
ダイカ・・・。
彼女はゲルトン盗賊団の中で最近入りたての新人盗賊だった。
濃い茶色の髪とカーディガンにスカートは、
メタリックなブローチをつけているとはいえ、盗賊団4人の中では一番地味だ。
頭部の側面で赤色とピンク色の中間色をした、彼女お気に入りのリボンで結っているが、
もう何日もつけっぱなしなのか、くすんだ色をしている。
「そのためには、まず盗賊としての場数を踏むことだ!
1人でザキマヤ辺りで手頃なやつを襲ってこい!」
「はいぃぃ・・・!」
一見するとこの状況、盗賊団に良い思いを抱いていないダイカは、
略奪をしに行くと見せかけ足を洗うことも可能だった。
だが・・・ダイカには不可能だった・・・。
なぜなら・・・。
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日が暮れ、気温が下がり始める・・・。
街路樹の影が街道を包み込む・・・。
しゃがみこんだ裏不神に対して
一切の希望など存在無いと諭すかのように・・・。
・・・?
目の前に月が二つも映ったかと思えば、それは眼鏡のレンズに反射したものだった。
「あ・・・生きてた」
しゃがみこみ、顔を覗き込む者が何者なのかと裏不神が少し顔を上向けると、
眼鏡の人物はそうつぶやいた。
脛の中間まである皮のブーツは軍靴を連想させるような造形をしており、
街灯の一つもないこの場所では、彼女の着ているつなぎの色が分からないが、大量の砂埃で変色しているだろうことは判明した。
「私、マナモといいます。 厚かましいかもしれませんが、あなたの身に着けているネックレス、
もっとじっくり見せていただけませんか?」
天界から身に着けていた物だったが、今の裏不神には誰の手に渡ってもどうでもよかった。
金属でできており、宝石がちりばめられたネックレスをマナモへ手渡すと、
彼女は所持していたルーペで観察を始めた。いや、鑑定なのだろうか。
ボサボサになった髪の毛を掻き毟りながら「むむ・・・これは・・・」なんて発した。
おおかた、天界の物であることが分かったのだろう。だが、説明をするのが面倒だなと感じた。
気が付けば裏不神はザキマヤ城下町宿屋の部屋で、
ベッドに座りながらマナモがシャワーを終わらせ
部屋に戻ってくるのを待っていた。
裏不神は
(なんてことはない・・・ただ、これまでの境遇を話すだけだ。
何しろ追放されたのだから、地上で何をしようと勝手なはずだ。)と自分に言い聞かせていたが、
『何をしようと』の点でやましいことを考えてしまった。
たとえ神であろうと、自分と同じヒューマノイド型生物を目の前にすると
どこからともなく緊張感が押し寄せてきた。
これまで、他者との関わりが希薄だった彼は、この状況での立ち振る舞い方が分からず
ベッドにとても綺麗な姿勢で座り、硬直してしまっていた。
「ふいぃ~・・・34時間ぶりのお風呂でした~」
部屋の扉の開閉音よりも早く喋り始めたマナモは、石鹸の香りをまき散らしながら
裏不神が座っているベッド空いた空間に何の遠慮もなく飛び込む。
「天界のこと、もっと教えていただけませんか?」
目を輝かせてながら聞いてきた。
そう、関所から城下町に至るまで彼女から事情聴取を受けたのだ。
それぞれの神に特定の事象を司る、天界での裏不神自身の立ち位置、
天界から追放された事の顛末・・・を・・・。
チラリとマナモを見た。どういった気持ちで話を聞いているのか、表情の方を確認したが、
特に同情している風でもなく涼しい顔をしていた。
「そうだったんですか。天界から追放されて・・・。
さぞお辛いでしょう・・・。」
社交辞令としての返答なのだろう。
マナモの眉こそ悲しそうではあるが、心からというわけではなさそうであった。
「まっ、そんな気にすることないですよ。
私も似たようなモンですし。」
悪い癖なのかもしれない。
人の言葉からその人物の境遇をあれこれ想像してしまう。
マナモの入浴前の姿、発掘調査を生業としていそうな恰好から、
先ほどの発言を結び付け、考古学か何かを目指すところを家族から反対され
家を飛び出したのだろうか・・・。
それとも学会か何かで認められず、コミュニティを追放されたのだろうか・・・。
勝手な妄想に浸っていると、マナモが自身の天界イメージを熱く語っていることに気が付かなかった。
眠たいだろうと気を遣ったのか、そろそろ寝ましょうかと言われたぽく、
部屋のランプを消し裏不神とは別のベッドへ潜った。
裏不神はオレンジ色の部屋が黒と紺の混ざり合った色に変化したことにハッとした。
その時、フクロウの鳴く声がほんのかすかに聞こえるほど
夜が更けているのだと発覚した。
裏不神がマナモのように自身のベッドへ入り瞼を閉じ、
今後の神生、いや、人生について物思いにふけた。
(オレはツいているのだろうか・・・。
地上へ堕天したその日の間にこれほど心優しい人間と出会えることができたとは・・・。
別にオレはあのまま消えてなくなっても良かったのだ・・・。
神としての力を失い、
無力そのものの人間という地上の生物として暮らしていくことなど考えられない・・・。
そもそも神として天界で暮らしていようが、死人同然か・・・。)
夢現の狭間で意識を失いかけた時、
カーテンの隙間からわずかに入ってきていた紺色の夜の光が閉ざされたことを裏不神は感じた。
特に気にも留めることなくそのまま眠りについたが、
決して月明かりが雲に遮られたわけではなかった。
窓から侵入したその人物はカーテンと着ている服がこすれる音を出すことも、
木でできた床に踏み入れた際に軋む音を出すこともなく、
部屋の中央まで進み狼狽えていた。
(何を盗めばルートン頭領らに怒られないで済むんだろう・・・。
あ・・・。関所の近くで倒れてた人だ・・・。
それと、この女は・・・。)