第1章:ザキマヤ王国 第1話:裏不神(りふじん)
RPGツクールで過去に作ったゲームを元に執筆してます。
作成したデータはいつの間にか消えていたので、思い出しながら書いてます。
あまり深く考えてません。
地面を舞う砂ぼこりが頭を覆う・・・
舗装された街道に、何のためらいもなく仰向けになり、男は天を仰いでいた。
彼には状況を理解し、飲み込むのに幾分かの時間が必要だった・・・。
(オレは・・・天界から・・・地上へ叩き落されたのだ・・・)
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あまたの神々が暮らす雲の上の世界・・・それが天界・・・。
力なき魑魅魍魎が生活し、混沌とした地上界とは全く異なり・・・、
ここは憎悪や絶望、疫病や災害のない楽園。
天界の住人はほとんどがこの世の何かを司る神である。
ある男の神は炎を司り、ある女の神は水を司り、またある男は石を・・・。
ほとんどの神は自分の役割に誇りを持ち、地上界を見守っている。
ただ一人の神を除いて・・・。
彼の名は裏不神・・・。
この世の偶然や事象の衝突を司る神。
その名の通り、理不尽な出来事を地上界へ与える力を持っているため、
彼を慕う神は0人・・・。いなかった・・・。
「う・・あ・・・。」
天界の朝は早い・・・。
自宅の寝室へ朝日が差し込む・・・。
寝起きのうめき声をあげながら、軽く体を伸ばす。
外へ出ようとゆったりとベッドから出て、のそのそと部屋の扉へ手をかける。
開かない・・・。
扉の故障ではないようだ。一ミリも動かすことが出来ない。
『冷徹な声「身に余る怠慢・・・。汝の能力・・・。」』
「あ・・!?」
思わず声を上げる裏不神・・・。
寝起きに他の神々からのテレパシーは身構えてしまう。
『傲慢な声「先日の最高神議会にて決定した事項がある・・・。
地上界への異動だ・・・。」』
『美しい声「この天界には不要な神が多すぎる。地上界の喧騒の原因となりうる。」』
『低い声「地上界にて自己研鑽してもらうことになった神を選んだのだ。
それがキミだ・・・。」』
「あ・・・ま・・・待ってください・・・。」
正論だった・・・。彼の司る力では地上界へ繁栄をもたらすことは少なかった。
神としても彼は自覚していた・・・。
肩をすぼめた彼は、とても神には見えないほど哀れだった・・・。
地上界で生きることは神ではなくなるということを意味する。
神である恩恵は不老不死であることだった。
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日が傾き、影が伸び始めた・・・。
事の顛末を思い返し、ようやく彼は態勢を仰向けから座り込む形へ変えた。
着替える間もなく追放された彼は濃い灰色のローブに身を包んでいる。
そこらの浮浪者と同等の格好だった。
(これからどうすればいいんだ・・・。
天界を追放された神が再び舞い戻った例はない・・・。)
無気力・・・。その一言に尽きた・・・。
迫りくる空腹や寒さ。死への恐怖すら感じなかった。
だが、唯一幸いしたことは彼が堕天した地が王国間の関所付近だということだ。
街路樹で囲われ一本道を形成していおり、2kmほど先に関所が見える。
その反対方向から何者かが近づいてきた。
彼女は野盗を生業としていた。