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虹色騎士 クールナイツ ~cool knight~  作者: 彼方 菜綾
♮1 クールナイツの誕生
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#5 笑顔の騎士、クールサン誕生!(後編)

 先程まで白かった景色からオレンジ色の温かな景色に変わっていた。

 目の前にゲリラ将軍はもちろん、白く塗り替えられた人々の姿も見えない。

 日向ひなたただ1人だけがその空間にポツンといた。


『全く、仕方ない子よね――』

「誰――?」


 周りを見渡すが、誰の姿も見当たらない。

 見えるのはただ広がるオレンジ色の景色――。


『さぁアンタの笑顔に免じて力を貸してあげるわよ!』


 突如とつじょ、オレンジ色の景色から日向は解き放たれるのであった――。


 ☆


大地だいちらすオレンジの太陽。笑顔の騎士、クールサン!」


 日向サンはオレンジ色のコスチュームを身にまとい、そう名乗っていた。

 腰には太陽のコンパクトがかわいく飾られている。

 茶髪でポニーテールの髪はオレンジ色のお団子頭に変わっていた。


「――なんだ。全然サニータじゃないじゃん」

『当たり前よ!アンタは笑顔の騎士(クールサン)なのよ!』

「えっ?!」


 日向サンは周りを見渡した。

 しかし、皆白く染められているため話すことは出来ないであろう。

 そして、目の前には今にも襲いかかろうとするゲリラ将軍がいた。

 もしや、ゲリラ将軍が――。


『早く逃げないとオレンジ色のコスチュームが真っ白に変わるわよ!』


 日向サンは我に返ると間一髪かんいっぱつ、ゲリラ将軍の攻撃から逃れることが出来た。


 地面に手をついたゲリラ将軍の周りが更に白く染められていく――。


「ゲリラ将軍ってこんな能力の持ち主だっけ⁈」

『とぼけてる暇なんてないわよ?あれはアンタの知ってるゲリラ将軍ではなく、この世界をただ白く塗り染める怪物なのよ。さぁ次の攻撃が来るわよ!』


 その言葉の通り、ゲリラ将軍は次々と日向サンに攻撃を仕掛けてくる。


 現状を飲み込めていない日向サンは避けることが精一杯――。


『一旦止まるのよ!』


 聞こえる声の通り、日向サンは一旦足を止めた。

 そして何事かと思い振り返った瞬間、日向サンは衝撃で目を丸くした。

 

 そこにいたのはお互いに身体を寄せ合い、怯えた表情をしている真実まみ悠佳ゆうかであった。

 もちろん、白く塗り染められているので話すことはできないが――。

 電話に出られなかったのは周りがうるさかったからではない。

 おそらく、この時すでに白く塗り染められていたのであろう。


『ボーッとしてないで横にけるのよ!』


 日向サンは言われた通り、横にけてみた。


 するとゲリラ将軍の手が真実と悠佳に振り下ろされ、更に2人は白く塗り染められていった。


「真実!悠佳!」


 もう表情などほぼ読み取れない。

 ただの像ではないかというぐらいに白く塗り染められた2人。


『お友達じゃなくて今は敵を見るのよ!』


 ショックを受ける日向サンをゲリラ将軍が待ってくれるはずがない。

 ゲリラ将軍は次々と攻撃を仕掛けてくる。


 変身したので、この際パンチやらキックを繰り出せば相手を倒すことなど簡単なのであろう。

 しかし、変に触れて自分まで白く塗り染められてはもともこもない。

 だから、日向サンはただけることしか出来なかったのだ。

 何も出来ずに、ただ敵を暴れさせているだけ――。


 その間にもゲリラ将軍はどんどんと周りを白く塗り染めていく。

 このままでは被害が更に拡大するだけである。


「どうしよう――。どうしたらいいの?」


 この間にもゲリラ将軍は大暴れを続ける。

 もうここを救う手立てはないのだろうか――。


『アンタ、さっき泣かないって決めてたわよね?』

「無理だよ――。だって、あたしはサニータじゃないもん――」


 目の前にいるのもきっと本物のゲリラ将軍ではない。

 そもそもゲリラ将軍は人々の大切な物を盗むが、人々に直接危害を加えるようなキャラクターではない。


 ふと、ある物語が日向サンの脳裏をよぎった。

 それは、乙女おとめ怪盗団かいとうだんのとある話――。


 ある回でクラウディアとレーナがゲリラ団に捕らえられたことがあった。

 ゲリラ将軍はサニータの大切なものを盗んだのだ。

 仲間を奪われ、さぞかしショックだっただろう――。

 しかし、それでもサニータは泣くことなく、むしろ笑顔でこう呟いた。


『絶対に助けに行くからね――』


 さて、その後サニータはどうしたのだったか――。

 確か、サニータは1人ゲリラ団へと乗り込んでいった。

 自身が得意とする道具を使って――。

 その道具というのが――。


「ヨーヨーだ!」


 サニータはヨーヨーを使って敵を翻弄ほんろうさせるのが大好きであった。


「ねぇ声の主。サニータが使ってたようなヨーヨーない?」

『アンタは意外に鋭いわよね。後、アタシの名前はレレっていうから覚えておくのよ!』


 日向サンの右手に太陽をモチーフにしたヨーヨーが握らされた。

 これなら、遠距離でも戦える――。


 「ありがとう、レレ!」


 もう表情も伺えなくなってしまった真実と悠佳に向けて日向サンは一言、笑顔でこう呟いた。


 「絶対に助けるから――」


 そして、ゲリラ将軍をにらみ付けた。


 日向サンのその姿がゲリラ将軍の感に触ったのか、紅かった目を更に紅く光らせて突進してくるのであった。


 日向サンはまず、ゲリラ将軍の右足にヨーヨーを巻き付けた。

 左足で地面を蹴り、次に右足をと思っていたゲリラ将軍であったのだろうが、思うように右足を動かすことが出来ずに体勢を崩して倒れこんだ。

 

 そういえば、サニータは敵の足にヨーヨーを巻き付けてこかすのが好きだっただろうか――。


 続いて、日向サンはゲリラ将軍の腕にヨーヨーを巻き付ける。

 ゲリラ将軍はというと、立ち上がりすぐさまに日向サンへと突進をする。


 日向サンはその場から跳び上がるとゲリラ将軍への背後へと回った。

 足とは反対方向に手を引っ張られ、ゲリラ将軍は背中から地面へと倒れこんだ。

 少しゲリラ将軍の目の色が弱くなったのを日向サンは見逃さなかった。


『あいつの胸元に鍵穴が見えるわよね?あれがあいつの心臓部分よ』


 レレの言う通り、目の前にいるゲリラ将軍の胸元には鍵穴が描かれていた。

 もちろん、作中のゲリラ将軍にあのような鍵穴は描かれていない。


「オッケー!偽物なんて今すぐ対峙しちゃうんだから!!」


 日向サンは鍵穴を中心にゲリラ将軍の身体へとヨーヨーを巻き付ける。

 そして――。


「サン スマイル・シャイン!」


 ゲリラ将軍の身体はオレンジ色の光に包まれ、やがて浄化されていった。

 浄化されたゲリラ将軍から目の光は無くなり、ピクリとも動かなくなった。


 やがて、戦いが終わったのだと認識した日向サンはガラス越しに写った自分の姿を改めて確認する。

 どこをどう確認してもオレンジ色のコスチュームに身を包んでいる。


「何よ、これ――」


 日向サンの身体がぷるぷる震えだした。


「何よ、これ!すごいじゃない!」


 日向サンは目を輝かせた。

 てっきり、この状況に怒りくるっているのかと思ったら、どうやら違うようである。


「サニータの使ってるヨーヨーとはデザインが違うけど、性能としては問題なしね。よく分からないセリフとか意図せず出ちゃったけど、この際どうでもいいや!」

『まったく、うるさい子ね――』


 面倒くさそうな声とともに変身が解かれた。


「まったく、なんでここの人たちはいきなり変身して喜ぶのか分からないわよ――。普通はパニックになるものよ?」


 さっきから声は聞こえてくるのだが、どこから聞こえてくるのかが分からない。

 日向は辺りをキョロキョロと見回した。

 すると、白く塗り染められて動けないはずの人々に紛れて毛繕けづくろいをするネコがいた。

 どこから迷いこんで来たのだろうか――。


 日向はそのネコをじぃっと見つめた。


「じろじろと見つめるなんて失礼よ?」


 ――ネコが喋った。


「ちょっと?無視するなんて失礼よ?」


 ――やっぱりネコが喋った。


 日向はネコにそっと近づくと優しく抱き上げた。

 そして、ギュッと抱きしめた。


「かーわーいーいー!!」

「ぎゃあぁぁぁぁぁ!!やめなさいよね!!」


 ネコは必死で抵抗するが、日向は顔を近づけてひたすらにモフモフを楽しんでいた。


「どうしてこの世界の人はアタシたちを見て驚かないのよぉぉぉ!!」


 ネコの悲痛な叫びを無視して、未だモフモフを楽しむ日向であった――。

クールサン

笑顔の騎士。日向が変身した姿。サンヨーヨーを駆使して華麗に戦う。

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