#49 遅い来る怪物
女性はひたすら走った。
ちらちらと後ろを振り返りながらも必死で走った。
目の前にはモノクロの人形がたくさんたたずんでいたが、それをかき分けて必死で走った。
しかし、目の前に怪物が現れ行く手を阻まれた。
「きゃーっ!!」
女性はしりもちをついて倒れこんだ。
そんな女性にゆっくりと手を伸ばす怪物――。
女性は逃げたしたい気持ちでいっぱいだったが、足がすくんで思うように動くことができなかった。
ゆっくりゆっくりと後ろへ下がることしか出来なかった。
怪物もゆっくりゆっくりと手を伸ばしていく。
やがて、女性の顔の目の前まで手が近づいたとき、なぜだか動きが止まった。
見ると、腕に何かが巻きついていた。
「ここはわたしたちに任せて早く逃げてください!」
3人の少女たちがそう声をかけてくれた。
女性は無言で頷くと、そのまま走り去っていった。
まだ恐怖が身体に残っているのか、何度か体勢を崩しながら――。
しかし突如、目の前にさっきの怪物が現れたかと思えば、そのまま意識を失ったのだった――。
☆
確かに、サンヨーヨーをしっかりと腕に巻き付けた。
なのに目の前に怪物の姿はなく、ただ力なくサンヨーヨーが転がっているだけ――。
「きゃーっ!!」
悲鳴が聞こえた方を振り返ると、あの怪物がさっきの女性に対して口づけを施していた。
すると、その女性の身体がみるみるモノクロに染まっていったのだった。
まるで、その女性の色を吸いとったかのように――。
星奈たちはあまりの衝撃的な光景に声が出なかった。
それを見た怪物は満足げに微笑む。
そして背中から大きな翼、いやコウモリのような羽を広げるとそのまま空へ羽ばたいていってしまった。
「待ちなさい!!」
日向は勢いよくサンヨーヨーを伸ばしたが、残念ながらその怪物には届かなかった。
「ムーン プレイ・クレセント!」
紫色の光がモノクロームを追いかけるが、それも残念ながら当たらなかった。
3人は怪物が翔んでいった方へと走り出した。
その間にもモノクロに変えられた人々が目に入ってきた。
そして、次々に女性の叫び声も聞こえてきた。
――早く捕まえないと街中の人々がモノクロに変えられちゃう!!
3人は必死で走った。
そして、とある公園でまた女性に口づけを施そうとする怪物を見つけた。
「スター ドリーム・スプラッシュ!」
水色の光が怪物めがけて駆け抜ける。
怪物はそれを軽々しく避けたが、同時に女性からも手を離してしまった。
「大丈夫ですか?!」
日向と月美はすぐさまその女性に駆け寄った。
特にモノクロに染まっている様子はない。
どうやら、襲われる前に助けられたようだ。
「早く逃げてください!」
女性は頷くと、そのまま走り去っていった。
それを追いかけようとした怪物の動きを、サンヨーヨーを巻き付けてなんとか止めることができた。
「2度も同じことはさせないから!!」
「――シナイデ」
怪物はクールナイツを睨み付けて改めて大声でこう叫んだ。
「ジャマ、シナイデ!!」
そして、そのまま日向に襲いかかるのであった――。




