#35 2人のおかげ
アピスたちは姿を消し、3人のクールナイツだけが取り残された。
ボロボロに崩れた壁を見ると、ケルベロスがどれだけ危険な人物かが分かった。
たぶん、この先1番厄介な敵になるかもしれない。
いや、もしかしたら上には上がいるのかもしれない。
これから先、勝てるだろうか――。
心配事はたくさんある。
だけど、とりあえず今は素直に喜ぼうではないか――。
最初にアクションを起こしたのは笑顔の騎士であった。
スッと手を差し出し、一言。
「ありがとう。あなたたちのおかげで本当に助かった」
絶対に敵を捕らえるという不注意から黒く染められてしまった笑顔の騎士。
もしも、夢の騎士と祈りの騎士が助けに来てくれなかったら今頃はモノクロームにされていたかもしれない――。
「わたしは何もしてないよ。彼女がが来てくれていなかったきっとわたしも――」
そう言って、申し訳なさそうに目を逸らす祈りの騎士。
夢の騎士があの場に駆けつけてくれなかったら、自身もモノクロームにされていた可能性はある。
ララからクールナイツは1人ではないと聞かされて驚いたはいたが、今は仲間がいて本当によかったと思える。
それと同時に、夢の騎士と笑顔の騎士に比べたら自分は足手まといになるのではないかという不安が密かに芽生え始めていた。
そんな祈りの騎士の手を夢の騎士は優しく握った。
「あなたがベガとデネブの気を引いてくれたから、わたしはその隙を狙えたんだよ。その場にあなたがいなかったら、きっとモノクロームは倒せてなかった――。だから、ありがとう!」
そう言って、ニコッと微笑む夢の騎士。
「あなたもありがとう!」
反対の手で笑顔の騎士の手を握る夢の騎士。
笑顔の騎士は静かに反対の手を祈りの騎士に手を差し出した。
少しためらった祈りの騎士だったが、やがて笑顔の騎士の手を握った。
その目は少しだけ潤んでいるようにも見える。
「わたし、こんなにも早く仲間に会えると思っていなかったから嬉しいわ」
「あたしも!気が付いたら2人がいたから少し驚いたけどね」
「やったぁ!ねぇミミ、もう変身を解いても大丈夫だよね?!」
「いいでしゅよ」
今までずっと正体を隠し続けてきた。
親や友だちにはもちろん、幼なじみでさえクールナイツであることを言ってはいけないと口止めされていた。
だけど、仲間に出会えてやっと自身がクールナイツであることを伝えることができる。
3人はそれぞれ変身を解いた。
「ん?!」「あれっ?!」「えっ?!」
今一緒に手を繋いでいるのは、子供の頃からずっと一緒にいた幼なじみ。
改めてお互いの顔を確認すると――。
「「「えぇぇぇぇ?!」」」
3人は一斉に声をあげたのであった。




