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虹色騎士 クールナイツ ~cool knight~  作者: 彼方 菜綾
♮1 クールナイツの誕生
31/208

#29 黒に奪われたオレンジ

 笑顔の騎士(クールサン)へと変身した日向ひなたは、モノクロームを追いかけた。


 モノクロームはというと、日向サンの気配を察知したからなのか空中を軽やかに駆けて逃げていた。


 日向サンは必死に後を追いかけたが、相手はなんせ馬なので走るのが早かった。


「あれはこの前のケイローンよね?なんかやけに速いわよ?」

「いや、あれはケイローンではないよ。覚えてる?ケイローンの身体からだは上半身が人間で下半身が馬だったことを――」


 でも今、日向サンの目の前で逃げるモノクロームは馬の上にちゃんと人が乗っている。

 しかもケイローンが持っている武器は弓なのだが、馬に乗っている人が持っている武器はつるぎ――。

 つまり、あれはケイローンではないということになる。

 では、あれはいったい何なのだろうか――。

 

 しかし、相手は相変わらず攻撃してこようとはしない。

 立派なつるぎを持っているのならば、少しぐらい殺陣たてでも披露ひろうすればいいのに――。


「とりあえず、逃がさないでよ!」

「分かってるって!!」


 クールナイツに変身すると、すごく身体が軽やかになる。

 たぶん、普通の姿だったらあのモノクロームを追うことは敵わなかっただろうが、笑顔の騎士(クールサン)に変身してしまえば見失うことがないという程度には追い付いていける。


 しかし、さっきからただ追いかけるだけの鬼ごっこ状態――。

 しかも、相変わらずモノクロームは攻撃をしてくる気配もない。

 このままではらちが明かない――。


「レレ、サンヨーヨーを出して。あの時みたいに動きを封じる!」

「任せなさいよ!」


 コンパクトからオレンジ色の光が出てくると、日向サンの手にサンヨーヨーが握らされた。

 ひとまず、日向サンはサンヨーヨーをモノクロームに向かって伸ばしてみる。

 しかし距離が離れすぎて届かないのと、走りながらだと焦点が合わないのとで相手を捕らえることは出来なかった。


「落ち着くのよ。一旦立ち止まって狙いを定めてからあのモノクロームを捕らえるのよ」

「でも、そうすればあいつとの距離が離れてますます捕らえられなくなるじゃない!」

「大丈夫よ。サンヨーヨーはどこまでも伸びるわよ――。後はアンタの力量次第よ」


 ――相変わらず無茶苦茶むちゃくちゃだ。


 日向サンは心の中でそう思ったが、おとなしく一度立ち止まった。


 ――サニータに出来て、あたしに出来ないことはない!


 その間にもモノクロームはただただ逃げ続けているため、日向サンとの距離はどんどんと離れていく。


 それでも日向サンはレレの言葉を信じ、モノクロームめがけてサンヨーヨーを放った。

 放たれたサンヨーヨーはどんどん伸びていき、モノクロームとの距離を徐々につめていく。

 そして見事、モノクロームの馬の方の脚にサンヨーヨーを巻き付けることに成功した。


 脚の自由を奪われたモノクロームは空中で体勢を崩して大きく倒れた込んだ。


「やった、捕らえた!」


 そのまま人型のモノクロームを引きずり降ろそうと思った日向サンだったが、なぜかふたつのモノクロームを引き離すことが出来なかった。

 このモノクロームたちはお互いに接着剤でくっつけられてでもいるのだろうか――。

 とりあえず、ここまでこればあとは浄化をするだけである。


 しかし、一瞬の喜びもつかの間――。


 日向サンの身体に勢いよく何かが当たった。

 何が当たったのだろうと身体に目を向けるとオレンジ色のコスチュームの一部が黒く染まっていた。

 かと思えば、そのオレンジ色がみるみる黒にむしばまれていった――。


「何、これ――」


 日向サンは腰をはたいた。

 しかし、黒い色はどんどん日向サンの身体を蝕んでいった。

 しかも腰に触れた手も黒くなり、そこからまた黒い色が広がっていた。

 これは、ただの汚れやシミではない――。


「はーい、久しぶり。元気にしてた?」


 後ろを振り返ると、ベガとその隣には先ほどのモノクロームがいた。


 ――まさか逃げられた?!


 いや、違う。

 このモノクロームはつるぎを持ってはいない。

 改めて確認しても、先ほど捕らえたモノクロームはまだサンヨーヨーによって脚を巻き付けられているままだ。


 そう、最初からモノクロームは2体いたのだ――。

 これはすべて日向サンを捕らえるためのわなだったのだ――。


 モノクロームは1体しかいない。

 誰がそんなことを決めただろうか――。

 敵は形あるものであれば何でもモノクロームに変える奴らだ。

 形あるものさえあれば無限にモノクロームを産み出せるのであろう。


 ――。


 とりあえず、この状況で戦うのは不利である。

 

 日向サンはその場から逃げようと脚に力をいれた。

 しかし、脚はびくとも動かなかった。

 見ると、両脚はすでに真っ黒に染まっていた。

 左手も黒く染まっており、動かすことは出来そうにない。

 残るはサンヨーヨーを握っている右手のみ――。


 ――だったら!


 日向サンは先ほど捕らえたモノクロームからサンヨーヨーを離し、ベガの隣にいるモノクロームめがけてサンヨーヨーを放った。

 

 だがすでに、日向サンの首もとまで黒い色が蝕んできている。

 モノクロームを倒すのが先か、日向サンが黒く染まるのが先か――。


「届けぇぇぇ‼」


 日向サンは最後の希望を信じて力いっぱい叫んだ――。

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