#27 3人で協力しよう
いつもの部屋でデネブはお茶をたしなみ、ベガは部屋の隅にある机に目を向けていた。
ガチャっと扉が開くと、アルタイルが入ってきた。
少しだけ背筋を伸ばしたベガとデネブはなんだという感じですぐに楽な体勢に戻った。
「おまえたちもいたのか。ちょうどいい、話がある」
「何よ、かしこまっちゃって。気持ち悪い」
ベガからの言葉など無視し、アルタイルは席に着くとこう切り出した。
「3人で協力してクールナイツを潰そう――」
しばらくの間、沈黙が流れる。
それを打ち破るようにデネブがわざと音を立ててお茶をすすった。
「もう一度言うぞ。3人で協力して――」
「聞こえてるわよ!そんなの決まってるでしょ。絶対に嫌っ!」
「なぜだ?クールナイツを倒せば、我々の目的を達成しやすくなる。だから、まずは邪魔者を排除しようと言っているのではないか」
「嘘つきなさいよ。あんたがクールナイツを倒したい理由なんてバレバレよ」
ベガは首もとを指さした。
アルタイルの首もとをよく見ると、ところどころが赤くなっているのが分かった。
それに加えて、手などには擦り傷が目立っていた。
「あたしたちが気づいていないとでも思っていた?あんたがクールナイツを倒したいのはいい加減、ケルベロスから解き放たれたいからでしょ?そんなことのために付き合わされるとかまっぴらごめんよ」
ベガは聞こえるように大きくため息をついた。
「ねぇ、何でアルタイルはそこまでしてケルベロス様のために動くの?それだけひどいことされてるのに――」
さっきまでお茶をすすっているだけだったデネブが口を開いた。
「――主の望みを叶えるのが僕の役目だろう?」
――アホらしい。
そんなことをしたところで、あのケルベロスが大いに喜ぶとは思えない。
それに、たとえクールナイツを倒したとしてもケルベロスからの扱いは変わらないだろう。
ベガはやってられないという態度を丸出しにして部屋から出ていこうとした。
しかし――。
「ふーん。なら、僕はアルタイルに協力するよ」
意外にもデネブがあっさりアルタイルを受け入れたのであった。
「やめときなさい、デネブ。そんなアホに付き合うこともないでしょ?」
「嫌でも主に従わないといけない理由は僕にも分かるんだなぁ~。まぁ主に優しくされてるベガには一生分からないだろうけど?」
「何ですって!!」
声を荒げたベガだったが、落ち着けと自分に言い聞かせる。
デネブは挑発をすることによって人を動かそうとしている。
ここで挑発に乗ってしまえばデネブの思う壺であろう。
「とりあえず、何を言われようともあたしはパス」
「ふーん?じゃあ、僕とアルタイルだけで手柄をとることにするよ」
「どうぞ、ご自由に――」
「あーあ、僕たちが手柄をとったのにベガはサボってたとハク様とコク様が知ったら、アピス様はどうなるんだろうね?」
ドアノブに手をかけたベガだったが、その言葉でピタリと動きを止めた。
「ケルベロス様から聞いた話だけど、ハク様とコク様は従わない奴は徹底的にモノクロームに変えていたんだっけ?」
「だったら、それはあたしだけの問題でしょ?アピス様は関係ないわよ」
「さぁどうだろう?ベガが従わないのなら、アピス様も従わないと認識されるかも?」
そのような話、あまりにも無茶苦茶すぎる。
しかし、僕の責任は主が取らされるというのはよく聞く話だ。
自分のせいでアピスがモノクロームと化すのは見たくはない――。
「ああもう、分かったわよ!!やればいいんでしょ、やれば?」
ベガの返答にデネブはニヤリと笑うのだった。
結局、挑発に乗ってしまった。
しかし、今下手な行動をしてアピスに危険が及ぶのは避けたい。
――アペス様だけは失わさせない。
ベガは悔しさからチッと舌打ちをするのであった。
「話はまとまったな。では行くぞ!」
アルタイルは無表情で、デネブは少し口角を上げながら、ベガはあたかも不機嫌そうに部屋を後にした。




