#21 主の怒り
あれから数ヶ月――。
アルタイルはとある目的を果たすために何度か街にモノクロームを放った。
しかし、結果は見事に惨敗――。
そんなことを繰り返していたある日のことだった。
アルタイルはケルベロスに呼び出されていた。
アルタイルは跪きながら、ケルベロスに深々と頭を下げた。
「アルタイル、顔をあげろ――」
アルタイルは言われた通り顔をあげてケルベロスを見据えた。
次の瞬間、体勢が崩れたかと思うと地面に身体が叩きつけられていた。
身体にじんじんと痛みが走る――。
それ以上に痛みを訴えたのが左頬であった。
触れると、少しだけ腫れ上がっているようにも感じた。
手を見ると、赤いものが少しついている。
唇から少しだけ出血していたのだった。
ケルベロスを見ると、拳を構えていた。
そして、ものすごい険しい顔でアルタイルを見ていた。
「ケルベロス、様――?」
「いつまで逃げ帰ってくるつもりだよ?いつになったらクールナイツを倒すんだよ?」
「申し訳ありません。必ずや目的を果たしますので、今しばらくお待ちください――」
「どの口が言ってるんだよ!」
ケルベロスは言うなり、いきなりアルタイルの首を掴み始めた。
首が絞まり息苦しく、アルタイルは苦しそうに声を漏らした。
首からケルベロスの手を引き剥がそうとしたが、息が苦しくて思うように力が入らなかった。
「言ったよな?必ずクールナイツを潰してこい。それが出来なければどうなるかも伝えたはずだ」
「それは心得ています。しかし、モノクロームがあっけらかんとやられてしまうので――」
「言い訳なんて聞きたくねぇんだよ!」
ケルベロスはアルタイルの首を掴む手にさらに力を入れた。
「おまえ、俺が見てないと思ってサボってんだろ?俺のことをなめてるだろ?」
言葉を発する代わりに苦しそうに声を漏らすアルタイル――。
やがて限界が近づいてきて、ケルベロスの手を引き剥がそうとしていたアルタイル手が力なく降ろされた。
そんな姿を見てやっと満足したのか、ケルベロスは荒々しくアルタイルを地面へと投げつけた。
やっとまともに息が出来たと言わんばかりに、アルタイルはゴホゴホを苦し紛れに咳をしながら激しく呼吸を繰り返した。
それと同時に、汗も噴き出してきた。
「俺がずっと黙ってると思うなよ?次は必ず仕留めてこい」
「かしこまり、ました――」
アルタイルは再び跪き、また深く頭を下げた。
「フェリスの仇は必ず討て――」
ケルベロスは小さくそう呟きながら、部屋から出ていった。
やがて、足音が聞こえなくなりケルベロスが完全に立ち去ったことを確認すると、アルタイルは地面に大の字で倒れこんだ。
そして、もう一度大きく咳き込んで呼吸を整えるのであった――。




