#19 裏切られたモノクローム
祈りの騎士に変身した月美はムーンロッドを手に会場の中へと急いだ。
中に入ると、いろいろな物が散乱しており、そして灰色に染まっていた。
数人の人も灰色に染まってしまっていた。
逃げ遅れてしまったのだろうか――。
まるで、あの時と一緒である。
月美が前を見据えると、そこにはあの日の少年がいた。
優雅にモノクロームの肩に座っている。
今回のモノクロームは明らかに大きい。
と、同時になんかめっちゃ可愛かった。
説明するとしたら悪い目をしたおっきな熊というところだろうか――。
何をどうすればこのようなモノクロームが生まれるのであろうか――。
というか、こんな大きな物が会場内のどこにあっただろうか――。
「何で――。どうして事務所のみんなを狙うの?」
「――お茶会がしたいから」
なんと会話の噛み合わない相手だろう。
月美は諦めてモノクロームに向かって走り出した。
モノクロームはそんな月美を捕まえようと必死だ。
巨人並みのデカさのモノクロームは少々動きが鈍いらしい。
すばしっこい月美を捕まえることが出来ずに地面に手をつくばかりだ。
その度に床が灰色に染め上がっていく――。
動きは鈍いが力は強いのだろうか――。
少しだけ床がへこんでいる。
幸い、今戦っている場所の周りには事務所のメンバーはいない。
だから、思う存分戦うことができる。
しかし、現段階であのモノクロームがどんな技を使ってくるのか分からないのも事実。
ここで決めてしまいたいところだが、その間に不意を突かれてはもともこもない。
――どうしよう。
「あーあ、やーめたっ!」
少年はポツリと呟くと、モノクロームから降りた。
そして――。
「いいよ。何もしないって約束するからこのモノクロームを倒してよ」
しばらくの間、沈黙が走った――。
月美もララもモノクロームでさえも少年の言っている意味が分からなかったからだ。
『やったぁ!ツキミちゃん、倒していいんだってぇ』
「ダメだよ、ララちゃん。これ、絶対に罠だよ?!」
呑気なララとは対称的に、月美はロッドを構えて戦闘態勢を崩そうとはしなかった。
モノクロームも少年の言葉の意味が分かったのか、唖然としながら少年に目を向けていた。
「何もしないって約束するよ。それとも、指切り拳万でもする?」
少年が何を考えているのかまるで分からなかった――。
それはモノクロームも同じだったのだろう。
ご主人様に裏切られた恨みなのか、手を大きく挙げて少年めがけて振り下ろそうとしていた。
「危ない!ムーン プレイ・クレセント!」
紫色の光に包まれたモノクロームは静かにその姿を消していった――。
最期に少年を押し潰すことも出来ずに――。




