#17 その名をベガ
モノクロームとなっていたケイローンは無事に解放され、ただの木像へと戻った。
日向はケイローンに近づくと、近くに白い鍵が落ちていることに気がついた。
それは持ち上げると同時に塵のようにサラサラと消えていった――。
「チッ――」
振り返ると、先ほどの少女が立っていた。
サングラスをしていても表情からは明らかに不機嫌なのが分かる。
「今回こそはあんたのことを潰せる自信があったんだけどね――」
少女の言葉など無視した日向は、少女に向かってサンヨーヨーを伸ばした。
しかし、軽やかに交わされてしまう。
「あたしを捕まえようなんて100年早いって――」
それでも、日向は少女を捕まえようとサンヨーヨーを伸ばした。
しかし、何度やっても結果は同じ――。
しびれを切らした少女は伸びてきたサンヨーヨーを素手で捕らえた。
握る力が強いのかサンヨーヨーを引き戻すことが出来ない。
「さて、今度はこっちの番――」
ニヤッと不敵な笑みをもらす少女――。
現段階では彼女の力量はわからない。
どんな攻撃を仕掛けてくるだろうか――。
サンヨーヨーが使えない今、どのように戦えばいいだろうか――。
いろいろと考えを巡らせる日向であったが、それとは裏腹に少女はサンヨーヨーを手離した。
見ると、モノクロームが消えたおかげで白く塗り染められたところが徐々に消えていっていた。
白く染められた人々も徐々に元通りになるだろう。
「あなた、名前は?」
「人に名前を訪ねるときはまず自分からでしょ?笑顔の騎士――」
――知ってるじゃん。
日向は声には出さなかったが、表情には出ていたのだろう。
少女は高らかに笑い始めた。
「いい顔するね。気にいった!あんたには特別に名前を教えてあげる。我が名はベガ」
「――どうして、あんたはこの世界を襲うの?」
「おっと、ストップ。これ以上はフェアじゃない。これ以上のことを知りたいのならば、そうねぇ――。まずはあなたのパートナーについてでも教えてもらおうかしら?」
「はっ、何のことかしら?」
「とぼけなくてもいいのよ?そこにいるんでしょ、レレが――」
ふと、ベガの表情が真顔となった。
そして、何か考え事をしながら何も言わずにその場を去っていったのであった。
「ちょっと待ちなさいよ!」
日向の問いかけも無視して、ベガの姿は完全に見えなくなった――。
「何で、あいつはあたしのことやレレのことを知り尽くしてるの?レレ、あんたあのベガって奴に何かされたの?」
『――知らないわよ。それより、早くケイローンをもとの位置に戻してあげましょうよ。みんなが元通りになった後だと何かと面倒よ?』
「――そうだね」
日向は地面に力なく倒れたケイローンの木像を持ち上げようとした。
しかし――。
『何してるのよ?』
「これ、意外に重いんだけど――」
『早くしないとみんな、目覚めちゃうわよ?』
見ると、先ほど目の前で白く塗り染められた女子生徒は元に戻っていた。
何があったのか飲み込めず、辺りをきょろきょろと見回している。
こちらに気付いてこの姿を見られるのは非常にまずい――。
「普通、変身したらパワーアップとかするんでしょ?なのに、何でこんなに力が出ないのよ?!」
『誰がそんなオプションついてると言ったのよ?』
確かに、クールナイツにそのような能力があるなど誰も一言も言ってはいない。
『文句言ってないで早く運びなさいよ』
「そんなぁ――」
その後、日向はずりずりとケイローンを木像を引きずりながら元の位置へと戻してあげるのだった――。




