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虹色騎士 クールナイツ ~cool knight~  作者: 彼方 菜綾
♮1 クールナイツの誕生
14/208

#12 家族団らんの一時

 世の中は大型連休真っ只中――。

 そんなある日のことであった。


「星にぃ、星ねぇ、早く早く!」


 星奈ほしなは嬉しそうに走っていた。

 しばらく走ると、目の前にとあるテーマパークが見えてきた。

 四季の国である。


 四季の国とは朱雀町すざくちょうの隣町、白虎台びゃっこだいにある大きなテーマパークである。

 入場者数は年間1000万人を超えるという大人気のテーマパークである。

 

 大型連休ということもあり、かなりの客がチケットを買うために並んでいた。

 それはそれはチケットを買うことで1日が終わるのではないかというほどに――。


 星奈はチケットをいち早く手に入れるために走っているのだろうか――。

 いや、どうやら違うようである。

 

 星奈は入り口付近で周りをキョロキョロと見回した。

 どうやら人が多い中、誰かを探しているようだった。


 だが、そんな星奈の背後から忍び寄りゆっくりと近づく者が――。

 そして、その者は星奈の目を覆い隠したのだった。


 もちろん、星奈の顔からは一瞬にして輝きが失われた。

 

「星奈見っけ!」


 しかし、この一声で星奈の顔が一気に輝きを取り戻す。


星夜せいやお兄ちゃん!」


 星奈は目元から手を引き離すと、くるりと身を回転させとある男性に抱きついた。


 そんな星奈の頭を優しく撫でるのは夜半よわ星夜せいや

 星奈の15歳上の兄である。

 普段は関西で働いているため、このような大型連休でしか顔を見せることはない。


 だからこそ、星奈は毎回大好きな兄に会えることを楽しみにしていた。


「相変わらず、おまえはかわいいなぁ。元気にしてたか?」

「うん!星夜お兄ちゃんは?お仕事いつまでお休みなの?」

「3日間だけ休みをもらったよ」

「えー何でもっとお休みもらってくれないの?星夜お兄ちゃんともっと一緒にいたいのに――」

「文句言わないの」


 少々息を切らせながら星奈の頭をこづくのが夜半よわ星音ほしね

 星奈の10歳上の姉である。


 その隣に、これまた息を切らせている男性が夜半よわ星野ほしの

 同じく星奈の10歳上の兄である。

 星音の双子の弟でもある。


「星音も星野も久しぶり。元気にしてたか?」

「俺も星音も元気だよ。星奈はこの通り、元気すぎて困るね」

「そうかそうか。父さんと母さんも元気か?」

「元気にしてるわよ。相変わらず仕事は忙しそうだけどね。でも、明日の夜なら時間作れるみたいだから皆でご飯食べましょうって」

「おっそれは嬉しいね。星奈も家族全員でのご飯は楽しみだな!」

「うん!」


 星奈は更にギュっと星夜に抱きついた。


「あんたね、中学1年生にもなってそんな子供みたいなことやめなさいよね」

「別にいいじゃん。星ねぇも星にぃも抱きついたらいいじゃん」

「――遠慮しとく」

「俺もいいかな――」


 2人の塩対応にプーッと頬を膨らます星奈――。


 そんな星奈の視界に入るようにチケットをひらひらとさせる星夜――。


「まずは何に乗りたい?」


 星奈は入場後すぐに星夜たちを連れてジェットコースターへと向かった。

 その後、コーヒーカップやお化け屋敷などたくさん回った。

 大好きな兄姉きょうだいといる星奈の顔はずっと輝いていた。


 さて、お昼を過ぎた頃――。

 中学生である星奈はまだまだ元気いっぱいであるが、社会人3人どうやらはお疲れのようである。

 椅子に座って息を整えていた。


「星夜お兄ちゃん、次は何に乗る?」

「すまん。ちょっと休憩」

「えー。星ねぇと星にぃは?」

「わたしもパス」

「俺もパス」


 またも塩対応をされてねる星奈――。

 普段、このように拗ねる星奈を見ることがないのでなんだか新鮮である。

 本当に兄姉きょうだいが大好きでたまらないのだろう。


「よしよし。拗ねるなって」


 星夜もそんな星奈がさぞかしかわいいのだろう。

 頭をわしゃわしゃと撫でた。


「そうだ、星奈。俺の分も含めて好きなドリンク買ってきてくれよ」

「分かった!何がほしい?」

「ウーロン茶でいいよ」

「わたしはメロンソーダ」

「俺はコーラ」

「えー星ねぇと星にぃは自分で買いに行きなよ」


 楽しく兄妹きょうだいで会話をしているときだった。

 

 星奈が肩からかけている鞄がもぞもぞっと動いたような気がした――。

 気のせいかと思ったが、星夜も星音も星野もその鞄に目線がいっている。


「と、とにかく、買いに行ってくるね!ちゃんとここで待ってないとダメなんだからね!」

「あんたじゃないからふらふらとどっかに行ったりしないわよ」


 星奈は足早に駆け出していった。

 しかし、数メートル先で足を止めて後ろを振り返る。

 そして、大きく手を振った。


 星夜と星野は優しく手を振り返したが、星音は無視であった。


 満足したのか、星奈はまた勢いよく駆け出していった。

 やがて、その姿は見えなくなっていった。


「星奈、元気そうだな――」

「そう?ここ最近はそうでもなかったわよ?」

「そうなのか?」

「中学校が日向ひなた月美つきみと別々になっちゃったんだって――。それで、ここ最近の星奈は部屋に引きこもってばっかりだったかな?」

「だからこそ、お兄ちゃんと会えることをずっと楽しみにしてたのよ。あんなにはしゃぐ星奈は久しぶりね」

「星音も星奈に負けず劣らず、兄貴と会うことを楽しみにしてたよね」

「星野!」


 双子の突然のケンカに星夜は笑いを堪えることが出来ずに吹き出してしまった。


「お兄ちゃん、そこは笑うんじゃなくてケンカを止めなさいよね」


 口を尖らせる星音の視界にとある人物がちらりと入ってきた。


「ねぇ、もしかしてあれってひまわりちゃんじゃない?」


 ひまわりとはこの四季の国のイメージキャラクターの1人である。

 ちなみに、他にはさくら、きく、うめがいる。

 そんな彼女たちはさまざまなグッズが売られるほど人気者だった。


「本当だ。でも、春のエリアにどうしてひまわりちゃんがいるんだろう?」


 ここ、四季の国は主に春夏秋冬4つのエリアに別れている。

 春のエリアにはさくら、夏のエリアにはひまわり、秋のエリアにはきく、冬のエリアにはうめがいる。

 星野が言っているのはなぜこの春のエリアにさくらではなくひまわりがいるのであろうということである。


「単にコスプレでしょ?」


 四季の国では人気の4人なのでコスプレをする人も少なくはない。


 しかし、このひまわりはなんとなくいつもと違う気がする。

 なんかいつもより表情が暗いような――。

 それに、背中にはウォーターガンを背負っている。

 確かに季節は初夏だけど、夏を先取りしすぎではないだろうか――。


「わたし、握手してもらおう!星野、写真撮ってよ!」

「はいはい」


 星音はスマホを星野に手渡すと、ひまわりに一直線に駆けていった。


 他の来園者も同じ考えなのだろう。

 数えきれないほどの人たちがひまわりを囲んでいた。


 そんな来園者たちにひまわりはただ静かにウォーターガンを向けるのであった――。

夜半よわ 星夜せいや

星奈の15歳上の兄。

現在は家を離れて関西で仕事をしている。


夜半よわ 星音ほしね

星奈の10歳上の姉。

星野の双子の姉。


夜半よわ 星野ほしの

星奈の10歳上の兄。

星音の双子の弟。

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