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虹色騎士 クールナイツ ~cool knight~  作者: 彼方 菜綾
♮3 クールナイツの知られざる真実
118/208

#116 残る1匹のスピリット・アニマル

 護琉まもるはみつに抱きつかれたまま、望夢のぞむ星奈ほしな日向ひなた月美つきみに抱きつかれたままとよく分からない状況にはなっているが、ここで改めてこれまでの話をまとめておこう。


 かつてカラフルできれいだったレインボー・ミレニアムはハクとコクの手によりセピア・キングダムへと化した。

 7人のプリンセスであるスイ、トウ、シィ、リョク、セイ、オウ、セキを始め、レインボー・ミレニアムの住人や街はモノクロに染められてしまった。


 しかし、ハクとコクがレインボー・ミレニアムを襲うことを既に予期していたのか、7人のプリンセスはスピリット・アニマルを人間界へと向かわせた。

 目的はクールナイツを目覚めさせ、レインボー・ミレニアムを救うため――。

 そして、プリンセスの目的は果たされた。


 夢の騎士、クールスターとして夕星ゆうづつ夢斗ゆめと

 笑顔の騎士、クールサンとして陽神おがみ笑歌えみか

 愛の騎士、クールハートとして北陸むくろ愛人まなと

 癒しの騎士、クールクローバーとして東雲しののめみつ

 守護の騎士、クールスペードとして南風はえ護琉まもる

 希望の騎士、クールダイヤとして西表いりおもて望夢のぞむ

 そして、祈りの騎士、クールムーンとして月代さかやきいのり


 以上、7人のクールナイツが無事に目覚めた。

 彼らは時が経つとともに立派なクールナイツへと成長した。

 また、絆も深まっていった。


 しかし、そんな彼らに衝撃の事実が突きつけられる。

 祈の正体がセピア・キングダムの幹部の1人、ローザだったのだ。


 後にローザは失踪。

 その直後にメドゥーサのモノクロームが人間界へと解き放たれた。


 6人のクールナイツは必死に応戦するも惨敗。

 そして、セピア・キングダムに幽閉されることとなった――。


 しかし、そんなことで黙っている彼らではない。

 すぐにセピア・キングダムからの脱走を考えた。

 だが、不幸なことに夢斗、笑歌、愛人はセピア・キングダムに取り残され、みつ葉、護琉、望夢だけが助かってしまった――。


 それから1年が経ち、再びクールナイツが覚醒した。


 夢の騎士、クールスターとして夜半よわ星奈ほしな

 笑顔の騎士、クールサンとして朝臣あそみ日向ひなた

 祈りの騎士、クールムーンとして昼庭ひのにわ月美つきみ


 彼女たちも時が経つにつれて立派なクールナイツへと成長した。

 そして、いざこざがあった末に無事にみつ葉、護琉、望夢と出会い今に至る――。


 改めて振り返ってみて、実はクールナイツが数年も前から覚醒していたこと、星奈たちがすでに2代目クールナイツであることには正直、驚いた。

 しかし、改めて振り返ってみていくつか疑問に思うことも少しある。


 まず、1つ目――。


「ののくんたちはセピア・キングダムに幽閉されてたんだよね?そのとき、シシたちとは一緒じゃなかったの?」

「ヒナタはん、ええ質問や!ってことで、ここからはワイらがお話したるわ!」


 そう言って、シシは望夢の頭から勢いよく飛び降りた。

 シシ的にはかっこよく着地するつもりだったのだろう。

 だが、何がどうなったのか顔面を床に強打してしまった――。

 そして、そのまま動かなくなった。

 どうやら、気絶してしまったらしい。


 それを見かねたソソがわざとらしく咳払いをして、そのときのことを詳しく話してくれた。


「セッシャたちも、別の場所で閉じ込められていたでござる」


 まぁハクとコクの目的はスピリット・アニマルなので、どちらかというと彼らの方を見逃さないだろう。

 律儀に1匹1匹檻の中に入れられて身動きがとれない状態だったという。


 このままハクとコクの手によって消されてしまうのだろうか――。

 2度とパートナーに会うこともなく消えてしまうのだろうか――。


 そんな恐怖を抱いていた彼らに救いの手を差しのべてくれる者がいた。

 それが、あの狐のお面を被ったシスターだった。


「えっ?あのシスターがミミたちを助けてくれたの?!」


 星奈の問いにソソは静かに頷く。


 シスターは何も言うこともなく、そっと優しく檻からソソたちを出してあげた。

 そして、脱出の道までも教えてくれた。


「でも、セッシャたちがここにいるということはマモル殿たちもきっとここにいると分かっていたでござる。だから、セッシャはお願いしたでござる。マモル殿に会わせてほしいと――」


 他のスピリット・アニマルも各々パートナーに会わせてほしいとシスターに願い出た。

 しかし、シスターが頷くことはなくただ一言――。


『ここで逃げるか、ここで朽ちるか――』


 スピリット・アニマルは考えた。

 ここで朽ちる危険を犯してまでもパートナーを迎えに行くか――。

 しかし、プリンセスとの大切な約束は未だ果たされてはいない。

 自身の願望よりも優先させることがあると考えたスピリット・アニマルはパートナーを見捨ててセピア・キングダムを脱出する道を選んだのであった――。


「でも、セッシャがマモル殿を迎えに行ったら皆、無事で助かっていたかもしれないでござる――。あのとき、一緒に逃げていれば――」

「もういい。君の行動は正しかったさ――」


 そう言って、泣きじゃくるソソの頭を優しく撫でてあげる護琉。


「でも、またこうして元気なミツバと会えるとは思っていなかったですの」

「あたしも――。またクールナイツやるなんて夢にも思わなかった」

「アンタたちは感動の出会いが出来てよかったわよね」


 レレはわざとらしく大きなため息をついた。


 ドドはみつ葉と、ソソは護琉と、シシは望夢と感動の再会を果たすことが出来た。

 しかし、ミミとレレは――。


「――あたしはレレと出会えたことを嬉しく思ってるよ」


 そう言って、日向はレレを抱きしめた。

 独りっ子である日向には両親以外に喋り相手がいない。

 なので、いつも部屋に引きこもっては本を読んでいた。

 しかし、レレが来てからは本を読むことはなくなり、ずっとお喋りをしているのであった。

 うるさすぎて日向の母親から心配されることもしばしばあるほどだ。


「わたしも、ミミが来てくれてから毎日が本当に楽しいよ!」


 そう言う星奈には兄妹きょうだいがいる。

 しかし、家族は仕事でほぼ家にはいない。

 ほぼ、独りぼっちで生活をしているようなものであった。

 しかし、ミミが現れてからは生活が180°変わった。

 家に家族がいないのでミミとはいつでも話せるし、ご飯を一緒に食べる相手も出来た。


「ボクもホシナと会えて嬉しいでしゅ」

「そりゃ、エミカとの生活は楽しかったけど、ヒナタとの生活も悪くはないわよ?」


 夢斗と笑歌とあのような形で再会を果たすことになってしまったことに対しては、正直ミミとレレのショックは大きいだろう。

 しかし、星奈と日向がいてくれたからミミとレレは大きく悲しみに浸ることがなかったのかもしれない。


「ねぇ。ララちゃんたちは7匹で頑張って逃げてきたんだよね?あとの1匹は今どこにいるの?」

「それはファファはんのことやな?」


 どうやら、先ほどまで気絶していたシシが目を覚ましたらしい。

 やっぱり居心地がいいのか、望夢の頭の上に乗っかっていた。

 シシの言うファファというのが、愛の騎士(クールハート)つまり愛人のパートナーだったスピリット・アニマルである。


「ワイらが人間界についたとき、すでにファファはんの姿はなかったわ」

「えっそれってファファちゃんだけが逃げ遅れたってこと?!」

「ツキミはんの言う通り逃げ遅れたんかもな――。でもな、ワイはあえてセピア・キングダムに残る道を選んだんちゃうかなと思っとる――」


 スピリット・アニマルがプリンセスたちから託されたのはレインボー・ミレニアムを取り戻すためにクールナイツを目覚めさせること。

 だから、シシたちは望夢を置いてセピア・キングダムからの脱出を図った。


 しかし、ファファはそれを理解した上で愛人と一緒にいるという道を選んだのかもしれない。

 たとえ、それがプリンセスたちへの裏切りになろうとしても――。


 さて、今もファファはセピア・キングダムに残り愛人の帰りを信じて待っているのだろうか――。

 それとも、諦めて人間界に帰ってきて新たなパートナーを探しているところだろうか――。

 それとも、もうすでに――。


 いずれにせよ、愛の騎士(クールハート)は未だ目覚めていないという事実だけは変わらないはずだ。


「ねぇファファってどんなスピリット・アニマルだったの?」

「いつも元気で跳び回っていたでしゅ」

「それとぉお喋りさん」

「つまり、静かにすることが出来ないですの」

「ドド殿、その言い方は語弊があるでござる。ファファ殿はただ単に落ち着きがないのでござる」


 ソソはフォローを入れたつもりだろうが、全然フォローになっていない。


 普段からパートナーとスピリット・アニマルはいつでもどこでも一緒である。

 しかし、いつどこで敵が狙っているか分からない――。

 そのため、スピリット・アニマルは鞄などにただ静かに身を潜めている。

 しかし、ファファだけは何が気に入らないのか勝手に鞄から顔を出してはよく愛人を困らせてたらしい。


「ファファはいたらうるさいけれど、いないと何か寂しいのよね――」


 なかなか事態が先へ進まず気分が落ち込むときもあった。

 しかし、そんなときでもファファは明るく、悪く言えばうるさかった。

 ただ空気が読めていなかっただけなのかもしれない。

 それでも、そのファファの明るさでどんな困難でもここまで乗り越えられてきた。


「やっぱり、こんだけ人数がおってもファファはんがおらんかったら静かなんやな――」


 しばらくの間、沈黙が彼らを襲った。


 そんな沈黙を破ったのが月美だった。

 月美はララを自身の顔の高さまで抱き上げてこう訪ねた。


「ねぇララちゃん、教えて。あなたがどうしてローザをパートナーとして選んだのかを――」

「――分かったよぉ。正直にぃすべてを話すよぉ」


 ララはローザとの出会いをゆっくりと話し始めた。

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