#112 パートナーは今どこに
さて、皆が落ち着いたところで改めて話を整理しておこう。
1年前のこと――。
あれはまだ桜が舞う季節であった。
突如、アルタイル、ベガ、デネブと名乗る者が人間界へと姿を現した。
そして、彼らはモノクロームという怪物を人間界へと放った。
モノクロームは人々や街を次々にモノクロへと染めていった。
もちろん、楽しい中学校生活を思い描いていた星奈、日向、月美にもモノクロームは襲いかかってきた。
しかし、そんな彼女たちに手を差しのべる者がいた。
それがスピリット・アニマルである。
星奈はミミ、日向はレレ、月美はララの手をとり、それぞれ夢の騎士、笑顔の騎士、祈りの騎士へと覚醒した。
その後、アルタイルたちの目的はスピリット・アニマルの回収であることが分かった。
星奈たちはミミたちを守るため、この人間界を守るため、セピア・キングダムからレインボー・ミレニアムを救うためクールナイツとして戦うことを決意した。
故に、正義の味方の爆誕である。
その後もフェリス、ケルベロス、アピス、アペスと何やらセピア・キングダムの幹部らしき者も現れたが、星奈たちはなんとかやってのけていった。
しかし、残念ながら正義の味方とはそんなに簡単なものではなかった――。
そんな敗北寸前の星奈たちを救ったのが癒しの騎士、守護の騎士、希望の騎士だった。
彼らの正体はそれぞれ、みつ葉、護琉、望夢。
みつ葉たちのおかげで助かった星奈たち――。
その後、なんやかんやあったが今に至る。
しかし、みつ葉たちは本当に強かった。
今年の春に目覚めたのに大したものだと星奈たちは思っていたのだが、実はみつ葉たちがクールナイツとして目覚めたのは数年も前の話だったのだ。
つまり、スピリット・アニマルたちは数年も前から人間界に送られており、またモノクロームも数年も前から人間界に放たれていたということになる。
「でもさぁ、どうして仲間がいるってすぐに教えてくれなかったの?」
「それは――」
星奈の質問にミミは言葉をつまらせた。
「それは、セピア・キングダムに囚われていたはずの僕たちが、まさか人間界に戻ってきているとは思わなかったんだろう?ましてや、クールナイツとして再び戦っているなんて思ってもいなかったはずだ。大方そんなところだろう?」
どうやら護琉の考えは当たりだったようで、ミミはしっぽと耳を力なく垂らした。
「まぁクールナイツが敗北したなんて聞かされたら、せっかくの正義の味方気取りのやる気もなくなっちゃうかもしれないもんね」
「みつ葉――」
護琉ににらみつけられ、みつ葉は頬を膨らませながらそっぽを向いた。
「あぁ!もしかして、だからララちゃんは初めてお兄ちゃんを見たときに泣いちゃったの?!」
ララはコクンと頷いた。
「もう2度と会えないと思ってたからぁ、ノゾムくんの元気な姿を見れてぇ嬉しかったんだぁ」
あのときはてっきり、望夢に見つかりそうになって泣いてしまったのかと思っていた。
望夢がやけにララをじろじろと見ていたわけが、これで分かった。
「ということは、みんな無事に人間界に帰ってきたってことだよね?じゃあ、夢斗さんと笑歌さんと愛人さんだっけ?その3人は今どこにいるのかな?」
「ヒナタ。あんたはエミカと会ったことがあるわよ――。エミカだけじゃないわよ。ユメトもマナトにも会ったことがあるわよ」
「あれっそうなの?」
笑歌たちと出会いそうな場所と言えば、やっぱりショッピングモールとかだろうか――。
いや、もしかして四季の国とか――。
それか、戦いの最中に知らない間に出会ってたとかだろうか――。
「アンタが初めて笑顔の騎士となったとき、目の前にいたのは誰だったか覚えてるわよね?」
日向は思考を巡らせた。
確か、あの日は真実と悠佳とショッピングモールの屋上で乙女怪盗団のショーを見る予定だった。
しかし、日向は大遅刻。
急いで屋上に向かえばモノクロームのせいで1面白の世界。
そして、そのとき目の前にいたのが――。
「小さな女の子だった!!」
「――質問を変えるわよ。モノクロームは人々を無作為に白く染めていったのは覚えてるわよね?」
そういえば、ゲリラ将軍に植えつけられたモノクロームが大暴れした結果、人々は白く染められてしまった。
たぶん、あのゲリラ将軍はショーで使われるはずだったのだろう。
ゲリラ将軍の着ぐるみはボロボロになってしまったので、その後のショーは残念ながら中止となってしまったのは忘れもしない――。
すべてはゲリラ将軍にモノクロームを植えつけたと思われるベガのせいである。
ベガが現れなければ笑顔の騎士に覚醒することもなかっただろうし、ショーだって楽しく見れたかもしれない。
日向の目の前にベガさえ現れなければ、今頃は日向も普通の生活を送れたかもしれないであろうに――。
「あたしの目の前で小さな女の子が白く染められた――。でも、変身したあとにずっと目の前にいたのはモノクロームとベガだった――。まさか――」
「そのまさかよ」
――!!
日向の心臓が跳ね上がると同時に星奈、月美の心臓も大きく跳ね上がった。
「じゃあ、アルタイルとデネブは――」
「アルタイルがボクのパートナーだったユメトでしゅ――」
星奈の胸を力強く踏みつけてきたあの男性が、初代夢の騎士である夢斗だというのだろうか――。
嘘だと信じたい――。
だって、クールナイツだった人が悪へと寝返るなど考えたくない。
「どうしてでしゅか――。どうして、ユメトはボクのことも忘れて敵に味方してるでしゅか――。どうして、ユメトが――」
ミミは泣くのを必死に堪えた。
しかし、まぶたに収まりきらなくなった涙は次々にあふれでてくる。
そんなミミの頭を星奈は優しく撫でてあげた。
「それはね、僕が夢斗さんを見捨てたからだよ――」
ミミの問いかけに答えるように1人の少年が口を開いたのだった――。
ララって望夢を見て泣いたことあったっけ?と思った方は「#10 クールナイツに選ばれた理由」をご確認ください。




