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虹色騎士 クールナイツ ~cool knight~  作者: 彼方 菜綾
♮1 クールナイツの誕生
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#8 新しいパートナー

 星奈ほしなは部屋の扉を開けた。


 部屋にはたくさんのぬいぐるみが並べられており、まさに女の子という感じの部屋であった。

 そして、机の上にはなぜかイヌのぬいぐるみと星のコンパクトが――。

 あれ、このイヌどこかで見たような――。


 ガチャっと扉が閉まるのを確認すると、イヌのぬいぐるみは勢いよくしっぽを振った。

 結論、ぬいぐるみではなかった――。


「もう少しぬいぐるみでいる練習しようか?」

「ホシナの前だったら自由にしてもいいと言ったでしゅ!」

「うん、言ったね――」


 星奈ははぁとため息をつくと、そのイヌを抱き上げた。

 すると、手のひらに温かさが伝わってきた。

 故に、このイヌがぬいぐるみではないということを改めて思い知らされた。


 そのイヌは更にしっぽを振った。

 星奈の手にしっぽがバシバシ当たっていることを知ってか知らずか――。


「えっと――」

「ミミでしゅ!」

「ねぇミミ。あなたはいったい何者でどこから来たの?さっきの怪物は何?何で、わたしは変身しちゃったの?」

「まぁまずは落ち着くでしゅ――」


 星奈はミミを机に降ろすと、自身も椅子に座った。


「まず、ボクの名前はミミでしゅ!スイ様に仕えるスピリットアニマルでしゅ!よろしくでしゅ、星奈!」

「うん、よろしく」


 星奈は人差し指をそっと差し出した。


 それをミミはギュっと握り、握手の完了である。


「ボクはレインボー・ミレニアムというところから来たでしゅ」

「スッゴいカラフルなイメージがある国だね?」

「はい。それはそれはとてもきれいな国だったでしゅ――」


 ミミ曰く、レインボー・ミレニアムには7人のプリンセス、名をそれぞれスイ、トウ、シィ、リョク、セイ、オウ、セキと2人のプリンス、名をそれぞれハクとコク、その他数多の住人がいるらしい。

 ミミはその中のスイのパートナーだという。


 楽しく日常を過ごしていたのだが、ある日異を唱えるものが出てきたという。

 それは、コクはレインボー・ミレニアムに不必要な存在であるというものであった。


「そのコクって人はどんな人なの?みんなから嫌われてるの?」

「コク様は黒いレオタードに身を包んだ、とても優しくて美しいお方だったでしゅ。それ故に国のみんなからはすごく慕われていたでしゅ」


 しかし、そんなコクに対して一部の住人はこのような考えを抱いていた。


『カラフルな色合いのこの国に黒を好むプリンスは必要ない――』

『黒は何でも上から塗り潰す恐ろしい色だ――』


 そういった意見がレインボー・ミレニアム全土に広がり、やがてコクは地下牢に幽閉ゆうへいされたという。


「それ、すごく理不尽な話じゃん!」

「スイ様や他のプリンセスも住人を説得しようと試みたでしゅ。しかし、スイ様たちの想いは伝わらず、コク様を救い出すことは出来なかったんでしゅ――」


 事態が変わることはなく、コクの一番の理解者であるハクは宮殿きゅうでんに引きこもりそのまま出てこなくなったのだという。

 そして、気がつけばハクとコクはレインボー・ミレニアムからきれいさっぱり姿を消したのだとか――。

 だが、邪魔なプリンスが消えたレインボー・ミレニアムは今までと変わりなく平穏な日常を送っていたらしい。


 そんなある日、突然異変は起こった――。

 それは、レインボー・ミレニアムがモノクロに染め上げられたということである。

 そう、星奈が恐い思いをしたあの日のように――。


「住人たちはまたたく間にモノクロに染められていったでしゅ――」

「――プリンセスたちは?」


 ミミは首を横に振った。


「ボクたちも必死に逃げたでしゅ。スイ様のもとへ一目散いちもくさんに駆けていったでしゅ。でも、その驚異から逃げることは出来なかったでしゅ――」


 気がつけば、ミミは今にも泣き出しそうな顔でうつむいていた。

 さっきまで嬉しそうに振っていたしっぽも今は力なく垂れてしまっている。


「最後に会うことは出来なかったでしゅが、声が聞こえてきた気がしたでしゅ。『新しいパートナーが見つかる』と――。それで、気がついたらこの世界にいたでしゅ――」


 ミミの目からはとうとう涙がこぼれ落ちた。

 まるでとどまることを知らないかのようにボロボロと流れ落ちてくる。


 そんなミミを星奈は優しく抱き抱え、頭を優しく撫でてあげるのだった。


「よしよし、怖かったんだね。わたしもあのときは怖かったよ。でも、ミミが来てくれたおかげでわたしたちは助かることが出来た。本当にありがとう!」

「ホシナ――」

「今日からわたしがミミの新しいパートナーだね!」

「はいでしゅ!」


 星奈はギューッとミミを抱き締める。


 ミミもよほど嬉しいのか、しっぽがちぎれるのではないかというほどに振っている。

 それが星奈の顔にバシバシ当たっているのを知ってか知らずか――。


 笑顔を輝かせる星奈であったが、ふと真顔に戻った。


「でも、コクって人はどうしてこの町を襲ってきたんだろう?」

「ホシナが戦ったあの人はコク様ではないでしゅよ?」

「えっ?!じゃあ、あの人はいったい――」

「話せば長くなるでしゅよ?」


 星奈とミミはその後も怪物やクールナイツについて話し込むのであった――。

ミミ

レインボー・ミレニアムのプリンセスの1人、スイに仕えるスピリット・アニマル

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