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5.豊穣の巫女役

「っというわけで、今年の巫女役はシンシアに決定しましたー」


ある日の夕食時。


ロイはニコニコと笑いながら、ぱちぱちぱちと手を叩き、そういった。


アベルはというと、ロイの話をきいて、目を輝かせている。

かくいう私は、口角が引きつってるのを自分でもわかる。


豊穣の巫女。


それは、年に一度村がこの一年の恵みを女神と精霊に感謝し、祭りを開く。

そして、巫女は広場で舞うのだ。


そう。この天才的な運動音痴な妖精ちゃんの体で。


去年までは少し年上のアンという村の娘が巫女役をしていたが、彼女も結婚をして巫女をつとめられなくなった。

そして、次の年頃の娘、ということで、私の名前が出たのだという。


「ロイ!騎士役は?」

「ふっふっふっー。もちろん。アベルだよー。僕がシンシアの相手役をアベル以外に渡すわけないだろ〜」


よっしゃ!

アベルがガッツポーズをする。


巫女は森の杖を持ち、舞を舞い

騎士は空の剣を持ち、舞を舞う


初めて見たときはそれはそれは幻想的な美しい舞だった。

宗教的であり、芸術にも近いそれは、洗練された。


「ぐぅ。。。」


あんなヒラヒラの服着て、あんな複雑な舞が踊れるとは思えない。

頭を抱える私をロイは苦笑した。


「まだまだ時間あるから練習すれば大丈夫だよ。」

「…よく言うわよ。君には向いてないね、とかなんとかいって武術の授業匙投げたヤツが」

ははは。

乾いた笑みを浮かべるロイの皿から肉を奪った。

「ま、まぁ、騎士役はアベルだし、アベルがフォローするよ。ね?アベル」

「もちろん!シアの予想不可能という奇行にもとれるドジも僕なら完璧フォローするよ!」


ちょっと。。。アベル。。。

「うん。まぁ、村の人たちも、シアのフォローできるのはアベルしかいないってので、満場一致だったしね。」

「ちょっと!ひどくない!?いいよう!」

思わず抗議の声を上げると、2人はきょとんとした顔で口を開いた。


「平らなところで転ぶのは日常茶飯事」

「自分の足に躓くのも日常茶飯事」

「まっすぐ歩いてる筈なのに、木にぶつかり」

「飛び跳ねると高確率で足を捻り」

「走る速度と歩く速度がほとんど一緒」

「体力は赤子並み。体力がなくなれば所構わず寝てしまう」


「「こんな君をフォローできるの(アベル)(僕)以外にいると?」」


うぐーーーーーーーっ!!!


「そんなに不安なら、アリスでいいじゃない!?」

「アリスは去年から歌い手だから無理だよ」


うぐーーーーーーーーーーっっ!!!


「まぁいいじゃないか。君もこの村に来てかれこれ四年?正確な年はわからないけど、12歳。君もいつかはなるって覚悟はしてただろう?」


確かに、この村に子供は多い。

だが、私と同じ年代の子供はいつもの4人しかいない。


去年アリスが歌い手に抜擢されたのを見て、いつかは私もこんな日が来るとは思っていたが。。。


「アンさん。。。結婚するの早いよ。。。」


去年までの巫女役のアンは確か今年で18歳だ。

18歳で結婚ってどんだけ早いのよ。

前世の私30でも独身だったわよ!


「そう?少し早いかな?とは思うけど、適齢期だよ。」

「だとすると、この世界がおかしいのよ。」

「貴族なら、シアくらいの年には婚約者がいる筈だよ。下手したら生まれる前から決まってる」


マジでか。


「みんな生き急ぎすぎよ」


私の言葉に、ロイは苦笑した。


「前の戦の記憶がみんなをそうさせているのかもね」

「前の戦って、グランベルとの戦争?」

「そ。我が国ディザーディアと隣国グランベルとの戦争は100年戦争とも言われてね。10年前停戦してやっと子供が子供らしく生きられる世界になったんだ。」


100年戦争。

大人たちは、その話をすると皆一様に泣きそうな、苦しそうな顔をする。

10年経ってもいまだに忘れられない。

それほどまでに悲惨な世界だったようだ。


確か、停戦の証に両国の姫と王子をお互いの国にやったとかって話だ。


世界の平和のために犠牲になった2人の子供か。


「生き急ぐ世界、ね。なら私が人生楽しむ世界の第1号になろっかな。」

「人生楽しむ?」

アベルが私の言葉を復唱した。

「そ。世界が人を変えたのなら、人が世界を変えることだってできるわよ」

私の言葉にアベルとロイは鳩が豆鉄砲食らったかのようにきょとんとして、吹き出した。

「…なるほどね。いいんじゃないかな?シアらしい」

「それでいきおくれなければいいね。」


アベル。。。あんたいっつも一言多いのよ。


「ただ、巫女役は変えられないし、祭りまでの時間は決まってるからそこは急いでね」


おぅっふー。

せっかく忘れてたのにー。。。

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