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3.瞳の色

さて。この世界に、この妖精ちゃんの体になって2年。


この世界も12ヶ月、365日で1年というのは変わらず、1日は24時間である。


つまりだ。

私はかれこれ、この世界で17520時間を過ごしているわけだ。


子供の成長は早いというが、妖精ちゃんの体も背が伸びた。だがまだまだ子供の顔つき、体つきだが・・・


(恐ろしく美しい子ね)


鏡の中の銀髪の少女を見て、私はその美しさに息を飲んだ。

前世は平々凡々の日本人であり、容姿はごくごくありふれた平均的な日本人であったため、この妖精ちゃんの体になってからは、鏡を見るたびに驚いていた。

最近はやっと慣れてきはしたが、それでもこうやって落ち着いて見ると、鏡の中の無表情な少女にゾッとする。


この2年。色々と調べては見たが、なんにしても手がかりがなさすぎる。

おそらくは、”私”は死んだのだろう。

そして、この妖精ちゃんに生まれ変わり、あの事故で自分の記憶を失い、前世の私の記憶と人格が前にでた。

そう考えるのが一番腑に落ちる。

では、今世の、この妖精ちゃんの本来の私はどこにいったのか。

つまりは記憶だ。


正確な年齢はわからないが、ロイに見つけられ保護された時の私は、6,7歳くらいだったのではないかと思う。

ロイ曰く、身なりからして貴族だという。

しかし、この2年。私を捜索に来る貴族の人たちはいなかった。


ということは、私はどこかから逃げてきたのか、それともこの国の人間ではないのかもしれない。

もしくは、私には家族というものがいないのかもしれない。

それならそれでいい。

幸いにして、魔法の才に恵まれており、大人になっても一人で食っていけるくらいのことはできるだろう。


ただ、何か嫌な予感がする。


この村は、首都からも離れ、人里離れた深緑の森の近くにある。

近くの街まで行くのに、馬車で3日はかかり、世の情勢については疎い村だ。

そのため情報があまりに入ってこない。

ただ、この村は独特な穏やかな時間が流れている。


「おや。シアちゃん。先生のお使いかい?」

「うん。バケット一つと、小麦粉ください」

「はいよ。小麦は一袋でいいかい?」

パン屋のおばさんの質問にコクリとうなづくと、おばさんはかわいいねーと頬を緩めた。


私が事故にあった原因はわからないが、気付いた時にあたりにあった残骸から見るに、誰かに何かに襲撃にあった思われる。

なのに、この村は、子供一人が買い物に出れるほどに穏やかで安全だ。


あれほどまでに近くで人が襲われたのに?

いや、本当に近くだったのか?


私は気がつけば、ロイに運ばれてロイの家で眠っていた。

あの場所にもう一度行こうとしても、ロイは決して教えてくれなかった。


そうなると、ここはあの事件現場から離れている?

ではなぜ、ロイはわざわざそんな遠いところから私をこの村に連れてきた?


だいたい、ロイは村人にしては知識も経験も技量も秀で過ぎているように感じる。

ロイは何者なのか?

それが全ての鍵を握るように思われる。


「・・・が、まぁいっか」


とりあえず私は今彼のおかげでそれなりに幸せで、それなりに生活もできている。

そしてそれなりに楽しい。


「シアー!」

聞き慣れた少年の声が私の名前を呼んだ。

店の入り口を振り返れば、光を背景に黒上短髪の少し日に焼けた少年がニカっと笑って立っていた。

「アベル?どうしたの?」

少年の名を呼んでとうと、彼はズカズカと店の中に入ってきた。

「ロイが、シアの手伝いに行けって。荷物これ?」

そう言って先ほどおばさんが用意してくれた小麦袋を小さな手で抱え上げた。

「あら。アベルちゃんじゃないか。偉いね。シアちゃんの騎士様だね。」

アベルはおばさんの言葉に照れ臭そうに笑った。

「ありがとう。アベル。」

「どういたしまして」

「おばさんもありがとうございます。また来ます」

「ああよ。気をつけて帰るんだよ」

おばさんの言葉に軽い会釈をして、店を出た。

店の前で、ちらりと隣に立つ少年を見ると、少年もこちらを見ており目があった。

目が合うとアベルは深い青色の瞳を細めた。

アベルの目は深い海のような色だ。

その目が私はずっとみていられるくらい好きだ。

優しくて綺麗な色だ。

「シアは僕の目が好きだね」

「うん。アベルの目を見てるととっても落ち着くの。ほら、私の目ってなんか不気味じゃない?羨ましいわ。私もアベルみたいな目が良かった」

私の瞳は紫暗の色をしている。

それは怪しく全てを 誘惑するような色。これがまた、銀の髪と相まって怪しさ倍増である。

「この髪の色も嫌い。アベルみたいに黒が良かった」

「僕はシアの目も髪も好きだよ。とっても綺麗だ」

そういって、小麦粉を抱えていない空いてる方の腕でアベルは私の髪を撫でた。

「それに、どんな髪の色でも瞳でも、シアはシアだよ。」

「ありがとう。アベル。」

アベルは撫でていた手をそっと下ろして、私の手を握る。

私の手にはバケット、彼の手には小麦粉袋。

そして互いの空いた手はそれぞれを握り歩く様は、周囲の大人の頬を緩ませた。




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