見果てぬ夢 5/5
沼田は一人、敵の様子っこば探るため農夫さ扮する。大光寺城の兵らは意気揚々で、為信が攻め来るんば今か今かと待ち受けてらんた。かつて堀越騒動ですたように……民らさも石ば投げさせ、枝葉ば道さ置かせるつもりだ。
……がばっと攻め滅ぼすのはできねびょん。さすがは滝本、味方だばたんげ頼もすいこと。
……大浦軍は、大光寺ば包囲すたまま夜ば迎えだ。松明ばたんげ焚かせ、大軍であることば敵さ見せる。ばって、大光寺勢は怖かねがんね。滝本は城兵ば鼓舞す、意気ば高めた。
さて、次の日さ移る。為信は第一陣と第二陣ば城さ近づけさせ、太鼓など音っこなる道具で挑発するべと仕掛す。滝本は動かね。彼もまんた ”だば、わだちも” と法螺などば吹いて城から出てくるのかと身構えさせたり、笛さ歌ばのせて諳んずたりすた。
二日目も、刃ば交えることねく終わる。
三日目さなり、空がわんつかまねくなり始めた。ここらが頃合いらんたと為信は思い、北の兵以外まるっと城への攻撃ば命ずた。
大浦軍がここさ動く。……勝負ばかけてきたんたと滝本は考えた。……んだ、城ば囮とすて、七百だけ分けて出陣する。林ば抜け、為信の本陣ば狙う……。
城内にいた沼田はこの動きば知らせるため、本陣さ戻るべとする。まんまと抜けることはできたばって……滝本の早え動きさついていけねく、すかも為信の本陣も|城さ向かって動いてらはんで、正確な位置が分かんね。
第一陣ど第二陣は何も知らねまま、大光寺城さ襲い掛かる。中の城兵はたんげ抵抗す、互いに無傷ではいられねかった。火縄でも狙ってくる。
乳井と小笠原は先頭に立ち、門ば壊すべとしてら。……わんつかすて門は破れたが、足の裏さ石や草の棘が刺さる。多くの兵が痛みば訴えだ。なんぼ草履ばはいてらとこで、激すく動くうちにやぶれてまる。こうすて勢いはねくなった。
暗くなってきたはんで、一旦引き上げるべと後ろさ下がるんたば……突然大声ば叫んで、農夫らが鎌ば携えて襲ってきた。慌てて逃げる兵らだばって、城から出た後も追ってくる。ずんぶ広がる田んぼさ足っこ取られ、殺される者もたんげ出でまる。