見果てぬ夢 3/5
小笠原は、その体勢からなんも動かね。万次はずんぶ目ば瞑ってらば……次第に心っこ揺れる。
いざ決心がつく。小笠原は刀ば振り上げた。
すると……突然。万次は布団ば両手でつかみ、小笠原の方さ投げた。刀は布団の綿ば顕わにさせた。
万次は叫ぶ。
「聖人君主みてぐ、だまって死ねるが。」
辺りの物ば、ずんぶ投げつけた。小笠原は甘んずてがばっと受けた。近くに物がねくなると、万次は体当たりばしてく。残ってら力ば振り絞り、小笠原さ向かう。
……一振りで斬り捨てられた。斜めさ刃は入って、万次の体は横さ倒れこむ。
命は、一瞬のうちにねくなった。
万次は口ばでっけく開け広げたまま。顔の皺ば際立たせ、この世の者でね形ばめせる。
小笠原は……涙っこ流す。万次が死んだのば確かめると……その場から立ち去った。振り向くことはすね。
万次は、かつて小笠原ば助けた。信州より逃げてきた時には食い物ばけて、大浦家への仕官も薦めてけた。大恩人ば斬る羽目さなる。
小笠原は……このまま何処かへと放浪するべかなとも思った。ただ……そいだば万次のすたことが無駄さなってまる。
万次も夢見たこと。
“津軽ば平る”
為信の元、果たそうでねが。
その後、小笠原は大浦家さ戻る。万次党は荒れたばって、ほどんと為信さ従った。わんつかは港町鯵ヶ沢ば燃やすべと企んだばって、鯵ヶ沢代官の秋元が未然に防ぐ。彼らは舟ばこぎ出す、さらに北へと逃げていったという。
万次党は、大浦家臣とすて浪岡攻略戦などたんげ活躍ば見せてく。
ただすその徒党は……平和な時代が訪れると、形ばねくし消滅すた。すなわち他の民衆らとまざったことば意味する。