見果てぬ夢 2/5
外より、落ち葉ば踏んつける音っこ近づく。一人、戸の前で止まった。……たて付けのいくね木戸は、強く押さねと開かね。
小笠原は、万次ば殺さんと現れた。
万次は床さ就いたまま顔っこば向け、笑みば浮かべて出迎えた。小笠原は近くさ寄り、布団の横で座す。
何もねえまま、時っこ過ぎる。
……ちっちぇえ窓からは、秋の寒い風っこが入る。万次のその弱った体さはきつい。なんぼ布団で覆っていでも、すみるのだ。
小笠原は一切表情ば変えず、座り続ける。
そった彼さ、万次はしゃべりかけた。
「殺すさ来だんだが。」
頷きもすね。
「やりへ。」
万次はそうしゃべると、布団ばわんつか足の方へずらすた。首元ば隠す物は、何もね。
小笠原は刀ば抜く。静かに、そすてゆっくりと、輝く部分ば首さ近づける。そすて刀と首は接す、動きば止める。
ひんやりとすた感触。氷の冷たさのようだ。わんつか皮膚と刃がこすれ、赤え血が隙間より漏れだす。
万次はなおさら笑顔ば作って、小笠原さしゃべった。
「だばって、死ぬのは痛えな。」
小笠原の、仏頂面は変わね。万次は……最後のしゃべりば始めた。
“私の周りさ集まっで下衆ども。やづらさ夢ば見させでけれたかな”
“安心しへ。仲間さもしゃべってらはんで。私が死んでも……為信さ従い続けれってな”
片方の手で、早く殺せと急かす。万次は目ば瞑り、今にも逝かんとする。




